照れ隠しによって引き起こされる僕の悪口がなぜか女の子達の好意を爆上げさせてメロメロにしてしまうって話した?
梅本ポッター
第1話 その男、悪口なら天下一品
照れ隠しっていうものがある。
それは異性に話しかけられたり、好きな人に優しく接してもらったりした時、気恥ずかし思いを隠すためにするしぐさのことである。
例えば、異性から目を逸らしたり、敢えて冷たくしてみたり、意地悪をしたりすることがあるだろう。
そんな僕、高校一年生の西野大地にしのだいちも残念ながら照れ隠ししてしまうことがある。
ただ、それは他の照れ隠しよりもタチが悪くて……
ドンっと肩がぶつかり僕が持っていたスマホが落ちてしまった。
「あっ! ごめんなさい! ぶつかってしまって!」
僕が学校へ向かう途中、いつもの通学路をスマホを見ながら歩いていたらスーツの女性とぶつかってしまった。
女性はすぐに謝ると僕のスマホを拾って、両手でちゃんと渡してくれた。
その女性はスーツを着て、髪がショートカット、渡す際に見せたクシャッとした笑い方がなんとも可愛い女性だった。
OLさんだろうか?
「あっ……ありがとうございます!」
緊張して上手く喋れない。
「いえ、私が悪かったんですから」
「いやでも……僕が歩きスマホしてたのも悪かったしーー」
女性は僕の顔に近づいて、目を見て笑い、手をパンッと叩いた。
「じゃあ……お互い様ということで!」
(あ、可愛い!)
今の笑い方はやばかった。
顔赤くなってないかな……。恥ずかしい……。
僕は手で顔を隠した。
「ん?どうしたんですか?」
「いえ……いつになったらこの薄ら笑いが鬱陶しい女が離れてくれるかなぁと思ってまして」
「え?」
女性は口を開けたまま立ちっぱなしだ。
「さっきからその見せてる薄ら笑い、見てるこっちの気分をさっきから害してるんですよ、気づかないんですか? 見たところOLさんですよね、会社で営業スマイルの練習でもされてるんですか? だったらそれやめたほうがいいですよ、会社のおっさん上司はそれで良いとかほざいてるかもしれませんが普通にそれウザいです、その笑顔見せてる時、その人の顔見てます? 余程のバカじゃない限りアンタと同じ愛想笑いしてますよ?」
僕が全部言い終わった時、女性はプルプルと震えながら今にも泣きそうな顔して、
「アンタ最低!」
と言って思いっきり僕の右頬をビンタした。
女性はその場から逃げるように去っていった。
周りの人も僕の大声で喋っていた言葉を聞いてドン引いている。
「はぁ〜 またやってしまった」
僕は頭を抱え込む。
これが僕の照れ隠し……可愛い人とか綺麗な人に優しくされたり、仲良くされたりすると、恥ずかしくなってそれを隠すために女性に罵詈雑言を吐いてしまうのだ。
この悪口も昔からずっとやってきたせいで途中で止める事も出来ず残念ながら全部言ってしまう。
そのせいでこれまで生きてきて、彼女がいない歴=年齢、という状態なのだ。
「学校行くか……」
トボトボと僕は学校へと歩いていった。
○
学校、屋上……
「……ってことが今日あってさ……」
「またかよ、お前の悪口、絶賛稼働中だな!」
「そろそろ休暇をあげても良いと思うんだけどね〜」
僕と一緒に普段は使っちゃいけない屋上でご飯を食ってるのは入学式で知り合った友達の青野あおの透とおる、スカした奴で僕とは正反対の、
「ん? お、昨日会った子からメール来てる! えーと? 今日空いてますかだってよ、大地、俺デートしてくるわ」
割とモテるやつだった。
「お前は良いよなぁ照れることしなさそうだし」
「女の子に照れるってなんだよ、いつもそんなことして疲れないの?」
コイツぶっ飛ばしてやろうか、全世界の男子がこれ聞いたらコイツ殺されるんだろうなぁ……。
すると突然、屋上の扉が開いた。
「あ! こんなとこにいた! 大地!」
扉からは少し茶髪のショートカットでまぁまぁな大きさの乳を持っている女子生徒が現れた。
僕を見つけて指を指している。
「お! 加恋ちゃん! よっ!」
「透君もいたんだ! よっ!」
加恋は屋上に来るや否やすぐに僕たちのところに近づいてきた。
「アンタ2組の子、泣かしただろ! さぁ謝りに行くよ!」
加恋は僕の腕を掴んだ。
「何、お前今日はもう一人悪口言ってきたの?」
実は今日学校に来る際、同じ様に2組の子に照れ隠しで悪口を言って泣かせてしまっていたのだ。
「ほぅら! 行くよ!」
加恋は僕を立たせようとしてくる。
密着しすぎて胸がやたら腕に当たる。
「ちょっと待てって! 自分で立つから……あと胸当たってるしーー」
「はいはいそうやって逃げるんでしょ、分かってるって」
加恋はさらに密着して立たせようとしてくる。
……僕は恥ずかしくなってきた。
「おっ顔が赤くなった。 そろそろかな〜」
徹がニヤニヤしながらこちらを見ている。
「だからやめろって! さっきからお前の無駄にデカイ乳が当たって鬱陶しいんだよ! あとお前の制服もう少し大きいのに変えろよ、乳小さく見せようと敢えて、ちょっとサイズが小さいのしてるかもしれないけどそれ無駄だから、逆に悪化してるから!」
「はいはい、褒めてくれてありがとうございます」
加恋は僕の悪口をスルーした。
「ハァ……ハァ……」
僕は加恋の拘束を抜け出し、まともに立った。
「じゃあ謝りに行くよ!」
「……分かったよ」
「さすが幼馴染、悪口はもう既に慣れた感じかな〜」
僕と加恋は家も近いという事もあり、家族ぐるみで仲が良かった。
小さい時から一緒に過ごしているため僕のこの照れ隠しによる悪口には慣れていた。
実際、兄弟みたいな感じでつるんでいたため、こういった悪口が原因で起きてしまった事に謝りに行くとかをサポートしてくれたりするのだ。
「ちゃんと謝るのよ?」
「分かってるよ、加恋は僕の親かよ」
僕はそれから蔑んだ目で見ている2組の子に加恋と共に謝罪をした。
ーーともかく! 僕はこの照れ隠しのせいでまともなラブコメディを歩んではいないのだ!
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