第12話 乗り切れ 期末テスト 〜その2〜



来週に期末テストがせまる学校。

校舎中に生徒たちの焦りの悲鳴が響いていた。


他人事ではない。

ぼくも苦手科目は まったく自信がなかった。


昨日は姉帯さん、新妻さんと三人でファミレスに行き勉強したのだが…。


頭に残っているのは、肘にあたる姉帯さんの横乳の感触と、間近で見た新妻さんの真っ赤な顔、もとい吸い込まれそうな唇だけだった。



ダメだぁ。

何にも勉強できてないよぼく…。

スタイルのいいギャルに挟まれての勉強なんて、ぼくには刺激が強すぎたようだ。


今日こそは!しっかりと勉強しないと本当にテストがヤバい…。


頭を抱えるぼく。

心配してくれたようで隣の席の姉帯さんが頭をナデナデしてくれた。


うぅ優し。


帰りの準備をした新妻さんがカバンを持ってやってきた。

今日も三人で勉強会をする気満々のご様子。


「弟月くん 今日はどこで勉強しようか?また昨日のファミレスに行く?」

「ファミレスもよかったけど、お姉さん、他のお客さんもいるからイマイチ集中できなかったなぁ。」

「確かにね、どこかいいところあるかな…。」


う〜ん、と唸りを上げる三人。


しばらくすると 「あ!」と声を出したのは姉帯さん。

どこかいい場所を閃いたようだ。



「はいはい!お姉さん、弟月くんの家に行ってみたいな!」



「…へ?」

「えっと、ほら!誰かの部屋なら他に人もいないし、集中出来そうじゃない?私も結も部屋汚いからさ、弟月くんの家はどう?」

「私の部屋は汚くない!」




ぼくの部屋に 女の子がくる、の?


生まれてこの方、自分の部屋に女の子なんて来たことのないぼくは、少し放心状態になる。

だって大丈夫?

姉帯さんと新妻さんがぼくの部屋に来てくれるの?

あまりの嬉しさで、ぼく死なないかな?


「だ、ダメかな?」


固まったぼくを上目遣いで見上げてくる姉帯さん。


そんな目で見られたら…。


「もちろん!大丈夫!」

すぐさまオッケーを出すぼくだった。


「やったー!ちょっと待っててね、お姉さん、化粧直してくるから。」と言って席を立つ姉帯さん。


「お父様かお母様はいらっしゃるの?」

「え、うん、いらっしゃると思うよ。」

「わ、私もお化粧直してくる!ごめんね、弟月くん。すぐ戻ってくるから!」



なぜにぼくの家に行くのにお化粧を直すのか…。


考えても分からなかったが、バッチリメイクをキメたふたりを連れて家に帰るのだった。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



ぼくの自宅は学校から割と近い場所にある。

いつも徒歩で登下校できるので楽だった。


しかも、今日気がついたけどお友達を連れて来やすい!


今日初めてお友達が来てくれたから、今日気付きました!



三階建ての普通のマンション。

ここで、ぼくはお父さん、お母さんとの三人暮らしをしている。


「ここだよ。うちは3階なんだ。」

「おぉ〜 弟月くんの家ってこんなに近かったんだね。お姉さん道はバッチリ覚えました!」

「ちょっと明日香、私変じゃないよね?メイクきまってる?」

「イケてる。結、私は?」

「マジイケてる。」


エントランスの鏡で入念な身だしなみチェックをするふたりを待ち家に向かう。

今日はもうお父さんもお母さんも帰ってきてるはずだ。

ぼくが友達を連れてきたら喜んでくれるかな?


「ただいま〜。」


いつものように玄関を開けて帰宅。

声を聞いたお母さんが玄関まで来てくれる。


「おかえりなさ〜い、よしな……。」


玄関まで来てくれたお母さんは、ぼくたちを見ると何故かフリーズ。器用に片足を上げたままだ。


「あ、あれ?お母さん?」

「ん、おい、どうした母さん?佳奈が帰って来たのか……。」


後から様子を見にきたお父さんもフリーズしてしまった。


「あ、あれ?お父さん?お母さん?」

「…後ろのおふたりは、お友達 なのかしら?」


「初めましてお父様、お母様。弟月くんのクラスメイトの新妻結と申します。弟月くんには普段からお世話になっております。」

「私もクラスメイトの姉帯明日香です。今日はいきなり押しかけてしまい、すみません。弟月くんに勉強を教えてもらいに来ました。」


そう言って深々とお辞儀をするふたり。


なんかいつもと違う気がするけど空気を読み黙るぼく。


ふたりの挨拶を聞いてヒソヒソと話し始める両親。


なんだこの状況。


少しすると、話は終わったのかお父さんとお母さんがこちらを向く。

そのままふたりの前に正座!からの、

「末永く息子をよろしくお願い致します。」×2


「いやいや!何言ってるの恥ずかしい!ふたりは勉強しに来ただけで…。」


「こちらこそ末長くよろしくお願い致します。」×2

「ええぇ⁈ふたりも何言ってるの⁈」


お父さんとお母さんは友達を連れて行くと喜ぶどころか、テンパってしまった。






テンパって話にならない両親を置いてふたりを部屋に連れていく。

「やったね、結!末長くよろしくって!」

「親公認、これは強い。」

「あの、あんまり気にしないでね。ここがぼくの部屋だよ。」


良く言えば片付いている。悪く言えば殺風景な部屋。

あんまり物がないから、今日いきなりふたりが来ることになっても慌てなくてすんだのはよかったかな。

何もないぶん三人くらいなら余裕で入れるしね。


「こ、ここが弟月くんの部屋なんだね。」

「うん、何もないんだけど、ごめんね。」

「そんなことないよ、きれいにしてるんだね。それより結!」

「わかってる。」


そう言ってふたりはそれぞれ部屋の中を見て回る。

特に何かを漁るわけでもなく、探偵のようにじっくりと見ているようだ。

見られて恥ずかしいものはないけど、あ、ちょっと、匂いを嗅がないで、クンクンしないで!


「あの、臭かった?」

「あ、いやいや、そんなことないよ! 明日香、こっちは大丈夫。」

「こっちもオッケー!他のおん…。きれいなお部屋だね。」

「…?」


なんだかわからないが、ふたりのチェックは済んだらしい。

ふたりの判定は大丈夫みたい。よかった。



「じゃあ勉強、始めよっか。」

「おー!」×2






それぞれが集中して勉強を進める。

わからないところは得意な人に聞き苦手科目を勉強する理想的な形がとれていた。

しっかり集中できたおかげで、気がつくとかなり時間が経っていた。


「ちょっと休憩しようか?そろそろ疲れたんじゃない?」

「ん、もうこんなに時間たってたんだ。確かにちょっと疲れたかな。」

「休憩いいわね、お姉さんも肩凝っちゃった。」


ん〜 と腕を上げて伸ばす姉帯さん。

そうすると大きなお胸が突き出され、ワイシャツのボタンを弾き飛ばしそうになっていた。


「弟月くん、ちょっとベッド借りていい?」

そう言って姉帯さんが、ぼくのベッドに寝転がる。


「明日香、あんた少しは遠慮したら?」


別にいいよ と言いつもりで姉帯さんの方を向いたが、一瞬で視線を外す。


だってベッドに寝転がってる姉帯さんは、



ぱ、パンツが見えちゃっていた。


白!



「ぼ、ぼく何か飲み物持ってくるよ!」


パンツを、見ちゃった罪悪感からその場を離れようと立ち上がるぼく。この場にいたら視線がかってに姉帯さんに向かっていってしまう。


「悪いからいいよ、それより弟月くんもお姉さんと一緒に横になろ、ね。」


そう言ってぼくの腕を引っ張る姉帯さんとバランスを崩すぼく。


「あ、危な!」バランスを崩したぼくを支えようとする新妻さん。


だけど、もう遅かった。


「うわあああ⁉︎」


三人でベッドに倒れこむ。





「痛た、大丈夫?弟月くん?」

新妻さんの声が聞こえる。答えようとするが、顔の上に柔らかな何かが乗っていて声が出なかった。

息ができない。

目を開ける見えたのは パンツだった。


黒!


姉帯さんはさっき白だったからこれは新妻さんかな。

僕の顔の上に新妻さんのお尻があった。


……って、何を冷静になってるんだぼくは⁉︎


慌てて動こうとするが、それがよくなかった。

手を下につくと、ふにっと柔らかい感触。


あれ、ベッドじゃない?

手に力を込めてみると…。


「ん、あん…。」


ぼくの下から姉帯さんの色っぽい声がしてくる。


……これ⁉︎姉帯さんの胸では⁉︎も、揉んでしまった⁉︎


さらなるパニックに陥るぼく、さらに追い討ち!



「飲み物持ってきたわよ〜。そろそろ休憩でも…。」


「……。」 固まる母

「……。」 顔の上に新妻さん、下の姉帯さんの胸に手を置いているぼく




「…若い者でしっかりね。」そう言って部屋を出て行くお母さん。



ま、待って、ご、誤解だー‼︎




両親への誤解を解くのに勉強より時間を使うことになるのだった。

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