■■■小学校・3年■組・学級担任、聴取記録

 みよしさん、ああ、交通事故に遭った子です。麻野みよしさん。クラスの子たちからは、みっちゃんと呼ばれていました。あ、いえ、呼ばれていました、なんて言ったら不謹慎ですね。麻野みよしさんは今も入院中です。ええ、意識も戻らないそうで…ご自宅でみよしカフェという小さな喫茶店をやっていました。ご両親ともにお忙しい方でしたが、お店の名前にお子さんの名前を付けるくらいですもの、本当に、可哀相に。みよしさんの回復をお祈りしています。





 板垣さん、板垣友恵ともえさん。板垣さんは少し変わった家庭の子、と言ったら立場的にいけないことかもしれませんね、ですが親御さんがなんというかいわゆるクレーマー?とまでは言わないんですけど、少なくとも穏やかではなく、私も前の担任だった先生もかなりきつい言葉を投げかけられましたね。お亡くなりになった方を悪く言うつもりはありませんが、過保護が過ぎるところがありまして、体育は危ないからと見学で運動会はもちろん遠足も禁止だなんて、ともえさんが可哀相な印象がありました。だからともえさんは、その……いえ、少しクラスに馴染めない様子でした。





 北原くん、北原工業のお子さんで、名前は慶太けいたくんです。北原くんはやんちゃなところがありましたが、勉強も良く出来ましたね。こう言ってはなんですが、ご両親はあまり教育に熱心でない様子がありましたが、北原くんは本が好きで、特に図鑑や辞書でしたが、学校の図書室の本はみんな読んでしまったから図書館に行くこともあるんだと言っていました。得意な科目は理科です。生物の仕組みが知りたいからもっと詳しく載っている本が必要なんだと、でも北原くんのおうちでは買ってもらえないから、と。麻野さんや板垣さん、それに梶原さんともよく遊んでいましたね。男の子達とも仲が悪いわけではなかったと思いますが、どうしても親御さん同士で仲の良いグループというものがありますから、同じように共働きの親御さんの生徒たちと遊ぶことが多かったようです。どうして、あんなひどいことになってしまったんでしょう。北原くんはいい子だったんです。やんちゃでしたけど、とってもいい子だったんです。あんなひどいこと、いったい誰がやるって言うんです?子供を、ひどい、なんてひどい…、一刻も早く犯人が捕まる様に祈っています、じゃなきゃ安心して眠れないです、私も親御さんたちも、





 思えば、梶原さんは不思議な女の子でした。


 親御さんが共働きでよくあるといえばよくある家庭のお子さんだとは思うんですが、いつも見えない誰か、ええとイマジナリーフレンドっていうんですかね、そう、その誰かに話しかけるような仕草をしていて、名前ですか?変なことをお聞きになりますね?

 ええと、モーくん?と話しかけているのを聞いたような、いえ、あの子が話しかけるのはいつも周りに誰もいない時でしたので、私も離れた距離で誰かに話しかけているのを見たんですね。その時にそんな名前を口にしていたような…

 まあ10歳の子ですから、どこから聞きつけたのかわからない噂に翻弄されるのもわかります。だけど、あの子はなんていったらいいか、私たちでも知らないことを知っているような素振りがありました。敏いところがあるとは言っても、子供ですからね、それによく一緒に遊んでいた北原くんに比べたら、子供らしいところのあるわかりやすい子でしたよ。

 

 でもまさかあの子が火事に遭うなんて。一人で留守番している時の事故だそうで、火遊びでもしていたんでしょうか。何があったんでしょう、わかりません。だってあの子、家庭科の調理実習の時だって火を怖がっていたんですよ。自分から火遊びなんて…信じられません…



 うちの学校の生徒やその親御さんによくないことが続く原因ですか?わかりませんよ!私だって知りたいです!まさかうちの学校の誰かが疑われているんですか、まさか私が…?はあ、手順通りのいつもの手続きの一環ですか…はい。私が知っているのは子供たちの噂話くらいです。なんでこんなことになってしまったのか、噂話ですか?そんなこと聞いてどうなさるんです?どんな些細なことでもヒントになるかもしれない?はあ、わかりました。そうは言っても子供たちの噂話ですから、作り話から発生したかもしれませんし、責任は取れませんからね、私から聞いたって他の先生方には内緒にしてくださいね、こんなこと真面目に考えてると思われたら気まずいですし、




───さんさろのカーブミラーには悪魔が住んでいて、おまじないをすると呪いになって返ってくるんだとか



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る