石橋をたたいて渡らない
Ley
第1話
石橋を叩いて渡る
――用心を重ねて慎重に物事を行うことのたとえ。
こわれるはずのない堅固な石の橋を、叩いて安全を確かめた上で渡る意から。
あまりにも臆病な人や、慎重すぎて決断の遅い人に対する皮肉としても用いられる。
(新明解 故事ことわざ辞典)
彼女の部屋に差し込む光は淡くなり、影は部屋の中に長く長く伸びていた。
外を見ると、茜色の夕焼けはかすかに青灰や群青を加えたと空へ変化している。
あれが何色と呼ぶのかはわからない。
絵の具を混ぜたときに一瞬見られる色のようで。
あっけないほどあっという間に消え去り違う色へと変化する。
そんなような色だった。
蛍光灯で光を得ていた彼女は、部屋が暗くなったことに気づいていなかった。
流石に電気をつけようと立ち上がると、ずっと座っていたせいもあり足元がふらつく。
勢いのままにベッドにダイヴする。
クーラーを直に浴び、冷気を吸収したマットレスは無駄に冷たかった。
その冷たさが火照った躰を落ち着ける。その心地よさに身を任せ彼女は眠りについた。
外のグラデーションは紺の占める割合が増え、また違った、作り物のような空だった。
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