第二十五話 ゴブリン 魔族緊急会議

勇者達が、エミラダの管理地へと侵攻して来た頃。

エミラダの城、ネイヘル城の女王の間に魔王直属の部下マウイヤが訪れ、魔王様からの伝言を伝えていた。

「エミラダ様、私は魔王様直属の部下でマウイヤと申します。

只今こちらに、ネフィラス神聖国軍と勇者が進軍中でございます。

魔王様は、エミラダ様の許可が頂ければ、こちらに援軍をお出しするとの事です。」

「うふふふ、そんな事は私も知っているわよ~。

セレネリウスちゃんを呼び寄せたから必要無いと、魔王に伝えてくれるかしら~」

「ドラゴンゾンビのセレネリウス様ですね、ですが、軍勢は一万以上おります。

流石にセレネリウス様だけでは、厳しいのでは無いかと・・・」

「大丈夫よ~、それに、もし城に入って来られても、四天王が守っていますからね~」

「「「「はっ、我等がエミラダ様をお守りしている限り、勇者などに手出しはさせません!」」」」

「と言う事なのよ~」

「分かりました、エミラダ様、私は連絡役として、ここに留まる事をお許しください」

「構わないわよ~、勇者がやられる所を、魔王にちゃんと報告してね~」

「はっ」

それから、ネフィラス神聖国軍は順調に進軍を続け、ついにセレネリウスと対決し、勇者によって倒されてしまった。

「セレネリウスちゃんが、倒されてしまったわ~、うわぁぁぁぁぁん」

「エミラダ様、悲しまないで下さい、今ガイストがセレネリウスの敵討ちに向かっております。

今しばらくの、辛抱です」

「ぐすっ、そ、そう?でも、ガイストちゃんは、人を殺さない契約よ~、仇を討ってくれないじゃない、うわぁぁぁぁん」

「やはり、あたいが行って、勇者を倒してくる!」

「ルリリ待て!ガイストは戦いを邪魔されるのを嫌う!

それに、セレネリウスの魔力が抑えられたのを見ただろう?

レイスのお前では、魔力を抑えられては何も出来ないぞ!」

「うっ、そ、そうだけど、じゃぁ、ランスが行って倒して来てよ!」

「俺が行っても同じ事だろう、取り合えず、ガイストの戦いを見てから判断しよう!」

「意気地なし!エミラダ様が泣いているんだよ!どうにかして!」

「どうにかしたいのは俺も同じ気持ちだ、だから、ガイストに任せている、あいつなら、魔力を抑えられたくらいでは、負ける事は無い!」

「分かってるけど、ガイストまで倒されちゃったら、エミラダ様が更に悲しむよ!」

「それも分かっている、俺とジャスティンで危なくなったら助けに入るつもりだ!」

「じゃぁ、ランスとジャスティンに任せたからね!

あたいは、エミラダ様を慰めておくからね!」

「頼んだ!」

元々騎士だったガイストは、無事勇者達を退けたが、最後の一人に苦戦していた。

魔力を抑えられた状態では、動けば動くほど魔力が消費され、スケルトンナイトの体の維持が出来なくなる寸前となっていた。

『ガイストちゃん、戦いを止めて下がって頂戴、貴方まで失いたくないのよ~』

『主様、承知しました、これより引き上げます』

『待っているわよ~』

ガイストがエミラダの所に戻って来た事で、マウイヤの転移魔法によって魔王城へと辿り着いた。

エミラダ一行は、城を捨てて逃げる事となったのだ。

そして、魔王と面会したエミラダは、魔王に詰め寄り、仲間を倒された怒りをぶつけていた。

「ちょっと!あの魔力を抑える魔導具は何なの?

私の可愛いセレネリウスちゃんが、倒されちゃったじゃないのよ~!」

「例の魔道具は、クリスが手に入れて今解析中だ、もうしばらくすれば判明するだろう・・・。

しかし、援軍を送ると言ったのに、断ったのはエミラダじゃないか、その事で文句を言われる筋合いは無いと思うのだが?」

「うっ、そ、その時は、あのような魔導具があるとは知らなかったのよ~」

「こちらにも情報は入って来ていなかった、ただし、エルフとドワーフと勇者が、同時に三か所に攻め込んだから、何かあるとは思っていたのだが・・・」

「えっ、他にも攻め込まれていたの~?」

「そうだ、エルフもドワーフも一度は無事退けたが、また襲ってくる可能性もある」

「負けたのわ、私だけなのね~、うわぁぁぁぁん」

「ここで泣くな・・・、今緊急招集を掛けたから、もうすぐ皆来る、それまでには泣き止んでいてくれ・・・」

「くすん、分かったわよ・・・」

「マウイア、エミラダを会議室まで案内してくれ!」

「エミラダ様、ご案内いたします」

「くすん、お願いね~」

魔王は、エミラダが退出した所で、大きなため息をついた。

「はぁ~、何で俺が魔王の時に、こんな面倒な事になるんだよ・・・」

そこに、魔王の部下が部屋に入って来た。

「魔王様、魔道具の解析が終了しました!」

「そうか、それは会議の時に皆に知らせる事にしよう」

「はっ!魔王様に報告はよろしいので?」

「どうせ、変装の魔道具を使われたんだろ?」

「さすがは魔王様、その通りでございます!」

「あの魔道具は厳重に数が管理されている、しかし、いつかはこうなる事も分かっていた、勿論対応策はあるのだろ?」

「いえ、それがありません・・・」

「無いだと?」

「あるにはあるのですが、抑えられた魔力を戻すためには、使われている魔道具を破壊する以外、現状在りません。

しかし、二重掛けは出来ませんので、最初から変装の魔道具を使っていれば、掛けられても問題はありません・・・」

「そんなの意味が無いだろ!今まで何をやってたのだ、うちの魔道具開発部は・・・」

「最近は、魔道具のデザインにこだわっておりまして、管理者達にも好評です!」

「もういい・・・それより、敵が持っていたのと、同じ物は作れるのだろ?」

「はい、それは簡単に出来ます!」

「すぐにダークエルフとメデューサに渡す分を、大量に作らせろ!」

「はっ、承知しました!」

部下は足早に、退出して行った。

魔力を抑えられた状態で戦えるのは、メデューサ、鬼人族、龍族、吸血鬼だけだな。

悪魔族も、龍族の所で鍛える必要があるな・・・。

だがそれは、今回の戦いを無事終えてからだ。

魔王の俺は、奪われた管理地を取り戻し、人々に魔族に手を出すと危険だと知らしめなければならない!

俺は席を立ち、会議室へと向かって行った。


エルフの侵攻を退け、ダークエルフの城にて一日ゆっくりと過ごした翌朝。

ソフィーラムからクリスティアーネに、魔王城での緊急会議の知らせが届いた。

「クリス様、魔王様より緊急会議の呼びかけがあり、至急魔王城へお越しくださいとの事です!」

「ふむ、ここの守りは構わぬのかの?」

「はい、もしエルフが攻めて来るようでしたら、私が転移魔法でお送りいたします」

「それもそうだの、となると全員で向かった方が良さそうだの」

「はい、お願い致します」

どうやら俺達全員、魔王城に行く事になった様だ。

だが、セレスティーヌを魔王城に連れて行っても大丈夫だろうか?

あれから努力して、人よりかは魔力が増えている様だが、耐えきれるか心配だ。

でも、そのセレスティーヌは、初めて魔王城に行けるという事で、嬉しそうにしている。

一人だけ置いて行くのも可哀想だから、俺が横にいてやれば何とかなるだろう。

それから準備をして、ソフィーラムの転移魔法で、魔王城前へとやって来た。

「これが魔王城ですか・・・凄く美しくて幻想的ですね!」

「そうであろう、そうであろう」

セレスティーヌが魔王城を見た感想を言うと、クリスティアーネが自慢げに頷いていた。

以前この城は、吸血鬼族によって建てられたと教えられたから、クリスティアーネも同族として誇らしいのだろう。

しかし、今だにクリスティアーネ以外の吸血鬼を見た事が無いんだよな。

クリスティアーネに尋ねた事があったが、この城より更に北の極寒の地に住んでいると教えられた。

その時は、そのうち連れて行ってやると言われたが、今だに連れて行って貰えてはいない。

気長に待っていれば、いつかは連れて行ってくれるのだろう・・・。

「綺麗ですね・・・」

城に入る際に砕ける氷がキラキラと舞う姿は、何度見ても美しいと思える。

ここまではセレスティーヌも上機嫌だったのだが、城の中に入り、濃密な魔力を感じ始めてからは、ガタガタと震えていた。

俺はセレスティーヌが安心できるように、手を繋いでやった。

それで多少はましにはなったのだが、怯えるなと言うのが無理な話だな。

「ベル様、私も手を繋いでいいですか?」

「構わない」

「ベル様、ありがとうございます」

マリーロップは怯えている訳では無いが、俺とセレスティーヌが手を繋いでいるのが羨ましかったのだろう、反対の手をぎゅっと握って来た。

エルバは堂々と俺達の横を歩いている。

エリミナはクリスティアーネの隣で、会議の後に出る食事が何だろうかと、二人で楽しく話しているな。

そして、いつもの円卓の会議場へと入ると、エミラダが駆け寄って来て、クリスティアーネに抱き付いた。

「クリス~、セレネリウスちゃんを倒されて、管理地を奪われちゃったのよ~、うわぁぁぁぁん」

クリスティアーネは管理地を奪われたと聞いて、とても驚いていた。

と言うか、俺も驚いた。

目の前にいるエミラダは、クリスティアーネより魔力量は多いと思われる。

しかし、魔力を抑える魔道具を使用されては、強い魔力を持っていたとしても意味が無いか。

今回三カ所同時に攻め込んでいたため、恐らくその魔道具も共有されているのは間違いないだろう。

「そうか・・・それは大変だったの・・・」

「くすん、そうなのよ~、私の可愛いセレネリウスちゃんを倒した奴らは絶対許さない!

クリス~、管理地を取り返すのを手伝ってよ~」

「うむ、それは必ず取り返さなければならぬの!

しかし、その為の会議であろうからな、今約束する事は出来ぬ、すまんの」

「ううん、クリスありがとう~」

クリスティアーネがエミラダをなだめた所に、フワフワと飛んでアマーリアが近づいて来た。

「人に負けるなんて、なっさけ無いわね!私が行ってぶっ飛ばしてあげよっか!」

「アマーリア、私が戦わずして逃げて来たのよ~、貴方なら簡単にひねりつぶされちゃうわね」

「えっ!?そんなに強かったの?」

エミラダが説明すると、アマーリアは驚きの表情を見せていた。

「やはり、例の魔道具を使われたのかの?」

「そうなのよ~、そうじゃないとセレネリウスちゃんが負ける訳無いじゃない~、しくしく」

「何例の魔道具って?私何も聞いて無いわよ!」

「うむ、まぁその辺りは魔王から詳しく説明があるだろうからの、それまで待っておれ」

「クリスのケチ!」

アマーリアは少し怒った感じで、フワフワと別の人の所へと言ってしまった。

「エミラダ、もうすぐ全員揃いそうだからの、われらも席に着くとしよう」

「くすん、分かったわ~」

クリスティアーネはエミラダを連れて、いつもの席へと座った。

もうすでに殆どの管理者達がそろっており、後は魔王を残すのみ。

俺はクリスティアーネの背後に立ち、周囲の様子を窺っていると、ラモンと目が合い、こちらを見てニヤリとしていた。

正確には娘のエルバを見ていたのだろうが、一応軽く頭を下げて置いた。

会議が終わった後に時間があれば、エルバと共に挨拶に行く事にしよう。

それからすぐに、魔王とブレイヴァンがやって来て、会議が始まる事となった。

「これより緊急会議を始めます。

この度皆様にお集まりいただいたのは、エミラダ様の管理地がネフィラス神聖国により奪われたため、その対応策を皆様に検討していただく為です」

ブレイヴァンがそこまで発言すると、周囲からざわめきが起こった。

誰も管理地を奪われるとは、思ってもみなかったことだろうからな。

「お静かにお願いします。

それと、スティーラス様の管理地にはエルフが、ヴァーリア様の管理地にはラクシュム王国が攻め込みましたが、両方とも今の所は侵攻を止める事に成功しております。

ですが、被害が大きかったのも事実です。

普段であれば、全ての管理地において無傷で追い返せいたものですが、今回に限り事情が異なっております。

それは、今回の戦いにおいて我が悪魔族が制作し、管理者の皆様へお渡ししている変装の魔道具が悪用されました。

戦いにおいて、皆様の魔力が抑えられたことで被害が拡大し、管理地を奪われることとなってしまいました。

変装の魔道具に関しては、管理を厳しくしておりましたが、このような結果となってしまった事に関して謝罪いたします」

ブレイヴァンは頭を大きく下げていた。

「ブレイヴァン、今は謝罪より今後の対策を話し合うのが先だ!」

ヴァルギールが大声で注意した事で、ブレイヴァンは頭を上げた。

「・・・そうですね、では、敵が使用した魔導具に関してご説明します。

我々が作っていた変装の魔道具を改良し、遠距離より、一つの対象のみ効果が発動する様になっております。

そして、この魔導具の有効範囲は二百メートルほどとなり、それより離れると効果が無くなります。

つまり、この魔導具を使用されても、二百メートル離れれば元の魔力に戻ります。

今現在、この魔導具に対して取れる策はは二つ。

二百メートル以上離れた場所から魔法で攻撃するか、今これと同じ物を急いで作られているので、相手の魔力も押さえ込む。

ただし、後者に関しては、人やドワーフと言った、元々魔力の少ない者に対しては効果がありません」

「つまり、遠距離から攻撃か、魔力を抑えられた状態でも戦える者しか、今後の戦いに出る事は出来ないと言う訳だな?」

「その通りです、ヴァルギール様」

「それじゃぁ、私がでかい魔法を敵にぶっ放してやるよ!」

アマーリアがフワフワと浮かび上がり、自信満々の表情で胸を張っていた。

「あらあら、アマーリアの魔法では無関係の所も吹き飛ばしてしまうでしょう?」

「そうだの、アマーリエに出られては要らぬ被害が増えるの」

ヴァーリアとクリスティアーネが、アマーリアの意見に反対していた。

「ぶぅ~、今回向こうから攻撃して来たから、街の一つや二つ壊さないと、他の魔族にも被害が及ぶでしょ!」

「うむ、アマーリアの意見は尤もだな!今回攻め込んで来た三か国には、それなりの報いを受けて貰わねばならん!

だがそれでも、無関係の者を巻き込んでいい訳では無い、街を壊す事には賛成しかねる!」

ヴァルギールが、アマーリアを諭すように言い聞かせていた。

「じゃぁどうすんのよ!」

「そうだな、ブレイヴァン、周辺国の動向はどの様になっている?」

「はい、現在ネフィラス神聖国軍は、エミラダ様の管理地に留まっております。

しかし、勇者は聖都に戻った様です。

ラクシュム王国軍は、ヴァーリア様の管理地との境に駐留しており、またいつ侵攻して来るかは不明です。

エルフは、スティーラス様の管理地のベスフェウス砦を占拠しており、こちらもまたいつ侵攻して来てもおかしくない状況です。

その他の国の状況ですが、ローカプス王国が軍を集結中です。

近い内に、オルトバル様の管理地に侵攻する可能性が高いと思われます。

ケルメース王国とヴァルハート王国は、依然としてにらみ合いを続けている状態で、アマーリア様の管理地やラモン様の管理地に侵攻する素振りはありません。

ネイナハル王国は、先の二国の戦争に巻き込まれない様に国境に軍を展開中で、クリスティアーネ様の管理地に侵攻する気配はありません」

「つまり、ヴァーリア、スティーラス、オルトバルの所を守らねばならぬという事だな!」

「その通りです」

ブレイヴァンが説明を終えた所で、エミラダが立ち上がって叫んだ。

「ちょっと、私の管理地を取り戻してはくれないの!」

「勿論取り返します!ですが、それは他の管理地への脅威がなくなった後となります、ご理解お願いします」

「そんなぁ~、私の地が浄化されてしまうわ、うわぁぁぁぁん」

「エミラダ様、少し我慢すれば取り戻して貰えますから、泣かないで下さい・・・」

エミラダは席に座って、円卓に伏せて泣き出してしまった。

それを、エミラダの背後にいたレイスが、必死になだめていた。

「まずはこれ以上の被害を出さないことが先決です!

そこで、ヴァーリア様の管理地には、ラモン様、応援に向かって頂けませんでしょうか?」

「おう、任せて置け!」

「あらあら、ラモンが来てくれるなら安心ですね」

ドワーフがどれほどの強さを持っているのかは分からないが、ラモンが行けば、たとえ魔力を抑え込まれたとしても大丈夫だろう。

「次に、スティーラス様の管理地には、ヴァルギール様、砦の奪還をお願いできますでしょうか?」

「うむ、エルフ相手に後れを取るような者はおらん、任せておくがいい!」

俺達がまた、ダークエルフの所に行くと思っていたのだが、違ったようだ。

確かに、魔力を抑えられた状態で砦を取り戻すことは困難だろう。

前回は防衛だったから上手くいったに過ぎない。

攻め込むとなれば、相当の戦力が必要となる。

龍族に任せておけば、間違いなはいな。

「最後に、オルトバル様の管理地には、クリスティアーネ様、お願いできますでしょうか?」

「うむ、任せておくがよい!」

クリスティアーネは胸を張って答えた。

俺達は獣人族の所の防御に回されたわけか。

と言う事は相手は人だ、魔力を抑えられても十分戦えるな。

俺が安堵していると、アマーリアがフワフワと浮かび上がって、ブレイヴァンに問い詰めていた。

「ねぇ、私は?私の出番は無いわけ!?」

「えーっと・・・」

ブレイヴァンは返答に困っていたが、魔王が珍しく発言をした。

「アマーリア、君は僕たちの切り札なんだよ、何か不測の事態が起きた時には君を頼りにさせてもらう。

だから、何時でも出られるようにしていてくれないかな?」

「そ、そういう事なら仕方が無いわね!でも、何時でも頼って貰って構わないからね!」

「えぇ、いざと言う時は、頼りにさせてもらいますよ」

アマーリアは魔王に説得されて、大人しく席に着いた。

俺が思うに、いざと言う時は来ないのだろうな・・・。

それはここにいる全ての者達が、そう思っている事だろう。

ブレイヴァンも胸をなでおろしている様子だ。

「次に勇者に関してですが、実際に戦ったエミラダ様、ご説明をお願いできませんか?」

「セレネリウスちゃんを倒したにっくき奴らの事ね!実際に戦ったガイストちゃんに説明させまるわね」

エミラダの後ろに控えていた、スケルトンナイトのガイストが一歩前に出て説明を始めた。

「皆様、私が戦った勇者達についてご説明します。

構成は剣士二人、弓使いが一人、魔法剣士が一人、治癒師が一人の五名構成となっておりました。

剣士二人のどちらかが勇者だと思われます。

この剣士二人に関しては、人の中では強い方に分類されますが、我々の脅威かと言われれば否と答えます。

問題は魔法剣士、お互いに本気で戦った訳ではありませんが、剣術は私と同格かそれ以上だと申し上げます。

私が魔力を抑えられていない状態でも、勝てるかどうか分かりません。

残りの二人に関しては戦っておりませんが、恐らく全く脅威では無いでしょう。

以上となります」

ガイストは、スケルトンとは思えないほど流暢に説明してくれた。

「ふむ、その魔法剣士は、恐らくわれが監視していた疾風と炎滅の子供の事であろうな」

ガイストの説明に、クリスティアーネが付け加えた。

「その通りです、今後勇者はどこかの戦場に現れるでしょう、その際には細心の注意をして戦いますようお願いします」

ブレイヴァンが注意を促していたが、管理者達はあまり気に留めた様子は見受けられなかった。

それも仕方無い事だな、エミラダの部下ガイストと戦って勝てるかどうかのレベルでは、管理者達の敵ではない。

しかし、俺にとっては脅威となるのだろう、気を引き締めて当たる必要がありそうだ。

「では、今回の緊急会議はこれにて終了とさせていただきます、魔王様、最後に一言お願いします」

いつもの様に、魔王がひとこと言って終わるのかと思ったら、魔王が立ち上がり、全員を見渡してからゆっくりと話し始めた。

「今回、このような事態になった事、大変申し訳なく思う。

そして、これ以上の犠牲を出さないよう、最善を尽くすことを約束する。

そして、我らに手を出すとどうなるかを示さねばならん!

皆で協力し合い、敵を退け、我らの管理地を取り戻そうぞ!」

魔王の言葉が終わると、管理者達は黙って頷いていた。

「それでは皆様、悪魔族がそれぞれの持ち場にお送りいたします」

会議は終了し、皆席を立って移動する準備を始めている。

クリスティアーネは席を立ち、オルトバルの所に向かって行った。

「今日はご馳走が無いニャン・・・」

ご馳走が無いと分かって、エリミナが落ち込んでいた。

「エリー、この戦いが終わったら、クリス様がいっぱい食べさせてくれるだろう、だから行くぞ」

「分かったニャン・・・」

俺達もクリスティアーネの後を追って、オルトバルの所へと向かって行った。

「オルトバル、われらはどこに向かえばいいのかの?」

「そうだな、敵の出方を見極めない事には何とも言えんな、悪魔族を通じて連絡を入れるから、家で待機していてくれ!」

「ふむ、では連絡が来るまでゆっくりしておくことにするかの」

「そうしてくれ」

オルトバルとの簡単な打ち合わせも終わり、俺達は帰る事となった。

帰りもソフィーラムの転移魔法で、一瞬のうちにたどり着いた。

「クリス様、またしばらく厄介になります」

「うむ、勝手は分かっておるだろうからの、戦いまでゆっくり過ごすとよいぞ。

ベル、ソフィーのこと、頼んむからの」

「はい、お任せください」

俺はソフィーラムを部屋へと案内し、食事の準備をする事にした。

次の戦いがどのような物になるかは分からないが、前回のようなミスは許されない。

気を引き締めて行かなければならないな・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る