第42話 風の道

「川の流れに乗って進めば外に出られるかも知れないな」

「どこへたどり着くか分からないんですよ。危険過ぎます」

 四つの道がある部屋まで戻り、食事をとりながら、小春と晶紀はどうやって脱出するか話し合っていた。

「でも、残る一つは崖の上なんだろ? 下りるのは不可能だって言ってたじゃないか」

「もしかしたら、他に道があるかも知れません。もう一度、調べてみましょう」

「川の方にだって、他に道があるかも知れないよ」

 小春が自分の主張を曲げないのを見て、晶紀はうつむいてしまった。

「晶紀さん、もしかして水に入るのが嫌なの?」

 小春が尋ねる。

「だって、私、泳げないんです」

 うつむいたまま、晶紀は正直に告白した。

「そういうことか・・・」

 小春は、ため息をついて立ち上がり

「じゃあ、崖の方を一度見てみよう」

 と言った。

「あの・・・」

 小さな声で呼びかけられ、小春が晶紀の方へ振り向くと、晶紀は上目遣いで小春の方を見ている。

「どうした?」

「その・・・途中で鬼が三体いるのを思い出しました」

 小春はまた、ため息をつく。これで今日は何度目だろうか。

「あっちの道にもいたよ。眠っているだろうから、静かに通れば闘わずに済むかも知れない」

「分かりました。絶対に音は立てないようにします」

 晶紀はそう宣言し、胸元で両手の拳を握ってみせた。


 小春と晶紀は『風』の道にあった鉄の扉の前までやって来た。

「この先に鬼がいます」

 晶紀が小声で小春に伝える。小春は大きくうなずいて、扉をそっと引いてみた。

 中には三体の赤鬼があぐらをかいて座っている。小春の予想通り、全て目を閉じて眠っていた。

 二人は壁沿いにゆっくりと進んだ。晶紀はとにかく音を立てないことに神経を集中し、一歩ずつ慎重に歩いていった。

 そのせいで、だんだんと小春から離れてしまった。小春が出口までたどり着いた時、晶紀はまだ半分くらいしか進んでいなかった。

 小春は、晶紀の様子を心配そうに見守っていた。しかし、晶紀は小春が自分を待っているのに気づいていない。それどころか、自分の近くで鬼が眠っているということにも気が付いていなかった。

 ふと立ち止まり、深呼吸をした晶紀が前方を向いた。小春がすでに出口付近にいることに初めて気づき、口に手を当てる。

 気持ちが焦ってしまったのだろうか。晶紀は、足がもつれて転びそうになった。今度は小春が口に手を当てる。

 晶紀はなんとか体勢を立て直したが、砂利を踏んでしまい大きな音を立てた。その音に鬼が反応した。

 鬼が立ち上がり、足を踏み鳴らす音を聞いて初めて、晶紀は自分が鬼の近くにいたことを悟った。

 岩壁に背を付け、立ち尽くす晶紀の顔は恐怖で目が大きく見開かれている。その顔を鬼はじっと見つめているが、なぜか攻撃しようとしない。

 赤鬼は混乱していたのだ。前にここを訪れたときの晶紀には炎獄童子が乗り移っていた。しかし、今の晶紀は違う。同じ姿なのに鬼と認識できなくなり、攻撃するべきかどうか迷っていた。

「晶紀さん、走れ!」

 小春の叫び声を聞いて、晶紀と赤鬼の両方が即座に反応した。晶紀は小春に向かって走り出し、鬼は棍棒を振り上げた。

 鬼が棍棒を叩きつけた場所にはすでに晶紀はいなかった。鐘のなるような低い音が鳴り響き、同時に衝撃波が晶紀を襲う。

 晶紀は、ちょうど小春のいる方向へ吹き飛ばされた。自分に向かってくる晶紀の体を小春が受け止めたが、そのまま後ろ向きに倒れてしまった。

 他の二体の鬼も動き出し、三体の鬼達が小春と晶紀のいる場所へと近づいてきた。

「逃げるぞ、早く!」

 小春はすぐに起き上がり、晶紀の手をとって走り出そうとした。晶紀も必死の形相で立ち上がり、半ば引っ張られる形で小春に付いていく。

 洞穴は鬼が通れるくらいの広さがあった。鬼達は一列になって二人の後を追う。

「この先、だんだんと道が狭くなります。いずれ鬼達は通れなくなりますわ」

「しかし、このままじゃ追いつかれるぞ」

 小春の言う通り、鬼の走る速度の方が小春たちよりも速い。すぐにも追いつかれそうな勢いだ。

 先頭の赤鬼が棍棒を振り上げた。しかし、天井に十分な高さがなく頭上高く持ち上げることはできなかった。

 それでも鬼は棍棒を地面に叩きつける。轟音とともに、その衝撃が地面を走り、小春たちを襲った。

 小春も晶紀も、衝撃波をまともに喰らって吹き飛ばされた。幸い、最大の力で放った一撃ではなかったが、それでも二人は地面を転げ回り、立ち上がるまでに時間が掛かってしまった。

 目の前に迫る鬼を前に、小春は持っていた荷物を下ろし、大刀を構える。

「晶紀さん、先に逃げるんだ」

 鬼に目を向けながら、小春は叫んだ。

「そんなこと、できません」

「晶紀さんを守りながら闘うことはできない。頼むから逃げてくれ」

 つまりは足手まといということだと気づいた晶紀は、小春の荷物を抱えて走り出した。

 後ろには残り二体の鬼がいるが、通路が狭すぎて前に出ることはできない。つまり、一体ずつ相手にできるということだ。小春は、それを見越してこの場で鬼を仕留めることにした。

 しかし、そうは甘くなかった。鬼達は前進を止めないのだ。いつもなら立ち止まり、棍棒で叩き潰そうとするのだが、今回はそんな気配がない。

「踏み潰す気か?」

 鬼の右足が小春の頭上に持ち上がる。小春は慌てて横に避け、ちょうど鬼の股の下に入る形となった。

 地面を踏みつけた鬼の右足を、小春は素早く大刀で斬り裂いた。鬼がよろめいて尻もちをつく。小春はその巨体に押し潰されそうになったが、間一髪で前方に飛び出した。

 ところが、助かったと思う間もなく次の鬼が棍棒を振り上げていた。小春は走るのを止めず、そのまま鬼の股下へと移動する。なんと、小春は後ろに控えていた二体の鬼の片足も次々と斬ってしまった。

 三体の鬼が、片足を失い地面に座り込んでいる。しかし、その状態でもなお、鬼達は小春の姿を探していた。背を向けている最後尾の鬼に飛びかかり、小春は大刀で鬼の首を斬り落とした。そのまま首を失った鬼の肩に乗り、今度はそこから飛び上がって二体目の鬼の脳天めがけて大刀を振り下ろす。

 その間に、残る一体の鬼は、座ったままの状態で小春の方へくるりと体を回転させていた。その鬼が棍棒を振り上げる姿が、斬り裂いた鬼の体の間から見える。鬼達の死体がじゃまで、小春は前進も後退もできなかった。

「しまった!」

 鬼が棍棒を振り下ろした瞬間、小春は無意識のうちに大刀を両手で持って、棍棒を切り上げていた。しかし、どう考えても鬼の力に小春が敵うはずがない。小春は、棍棒で叩き潰される自分の姿を思い浮かべた。

 ところが、思いがけないことが起こった。大刀は地面に対して水平の状態で棍棒にぶつかった。その瞬間、金属同士が衝突した時のような甲高い音が鳴り響く。そして、力負けしたのは鬼が振るった棍棒の方だったのである。

 小春の大刀に弾かれて、鬼の腕は真上に伸び上がった。棍棒は先端から半分ほどまでが粉々に砕かれ、周囲に破片が飛び散る。

 驚いたのは小春の方だ。今まで、自分の刀がこれほどの力を秘めているとは思っていなかった。しばらくの間、小春は手に持った大刀をじっと見つめていた。

 鬼の方は完全に戦意を喪失したようだ。小春から逃げようと両手でもがいていた。二つの死体は黒い煙と化して消え去り、小春はその場から動くことができるようになった。

 小春は我に返り、鬼にとどめを刺すべく飛び上がって相手の首を刎ねた。鬼は伏して動かなくなり、やがて黒い煙となって消え去った。

 小春が少し進んだ先に晶紀が荷物を抱えて待っていた。

「小春様、ご無事だったんですね」

 晶紀はそう言って、安堵のため息をついた。

「この刀に助けられたよ」

 小春が手に持った大刀を掲げるのを見て

「刀にですか?」

 と晶紀は尋ねる。

「私が思っている以上にこの刀は強い。まだまだ、使いこなせていないことがよく分かったよ」

 小春は刀を背中に戻し、不思議そうな顔をする晶紀に笑顔を見せた。


 紫音の進言により、桜雪、正宗、紫音の三人は八角村まで赴き、大府が儀式を取り止めたことを伝え、札を運ぶ時の護衛につくことになった。

 その旅のために、桜雪が家の中で準備をしていたときである。外から正宗の声が聞こえてきた。

「・・・ここでお待ちになって下さい。部屋が散らかっていては桜雪さんも恥ずかしいでしょうから」

 突然、戸が開き、正宗が中に入ってきた。さっと戸を閉めるなり

「桜雪さん、ごめんなさい」

 と頭を下げる正宗を見て、桜雪は嫌な予感がした。

「まさか・・・」

「謹慎が解けたんだからって、強く迫られまして、断りきれませんでした」

 桜雪は、額に手を当ててうつむいてしまった。

「外でお待ちなのか?」

「はい」

「待たせておくのも悪いな。とにかく、中へ入ってもらおう」

 慌てて外へ出た後、再び入ってきた正宗の後ろには、冬音が目を輝かせて立っていた。背中にかごを背負っているようである。

「桜雪様、今日はこの冬音が腕によりをかけて美味しい料理を御馳走いたしますわ」

 満面の笑顔で口を開いた冬音に対し、桜雪は合わせて笑うしかなかった。


 台所に立って、手際よく調理をする冬音を見ながら、正宗が小声で桜雪に話しかけた。

「こうやって見ていると、冬音さんはすでに桜雪さんのお嫁さんみたいですね」

「ばか、変なことを言わないでくれ」

 桜雪が慌てて否定する。その様子に正宗は

「どうしてですか? あんなに器量よしで、家事もお上手そうだし、桜雪さんのことを慕ってくれるし、言うことなしじゃないですか」

 と不思議がるが、桜雪はそれに答えようとしない。

「そろそろ、桜雪さんも身を固める時が来たんじゃないですか」

 なおも食い下がる正宗に対し、桜雪は頭を掻きながら

「俺にはもったいないよ。とてもつり合っているとは思えない」

 と答えた。

「私はそうは思いませんけどね。それに、相手がいいと言うのだから、気にすることもないでしょう?」

 正宗は笑顔で話を続ける。それにうんざりしたのか、桜雪は正直に吐露する気になった。

「本当のことを言うよ。彼女が近づく度に、俺は自分を抑えることで精一杯だった」

「それって、桜雪さんも冬音さんのことを好いているってことじゃあ・・・」

「いや、そういう感情じゃないんだ。欲情をそそられると言ったほうが正しいな」

「でも、それも恋愛感情の一つでしょ?」

「惚れた女を抱きたくなるのは当然だろうな。だが、俺達には理性があるから、すぐに行動に移すことはしないだろ。彼女を見ているとな、その理性が吹き飛ばされそうになるんだ」

「それが、苦手としている理由ですか」

「ああ、彼女といると、本能が危険だと言っている気がしてな。だから、できるだけ離れていたいんだ」

「不思議ですね。冬音さんの、桜雪さんを慕う気持ちが影響しているんですかね」

「お前は平気なのか?」

「私は、桜雪さんみたいに間近で見る機会はないですから」

「そうか・・・」

 桜雪はため息をついた。

 二人の会話が途切れてから間もなく、冬音が膳を運んできた。

「さあ、できましたわ。お口に合うか分かりませんが、どうぞお召し上がり下さいな」

 全ての料理を運び終えると、冬音は当然のように桜雪の横に座った。

「私までご相伴にあずかり、ありがとうございます」

 正宗が恐縮して冬音に一礼した。

「あら、そんな、お気になさらず。正宗様にはここまでご案内いただいたのですから、そのお礼ですわ」

 冬音は、正宗にそう言って笑みを送った。

 桜雪が、料理を一口食べてみる。

「これは美味い。冬音殿は料理上手ですな」

「まあ、桜雪様にそうおっしゃって下さると、お料理を作った甲斐があるというものですわ」

 冬音は身をくねらせて喜んだ。その姿態は実に艶かしく、正宗は、桜雪が言っていた意味が分かる気がした。

「お酒もお燗しましたのよ。さあ、一杯どうぞ」

 そう桜雪に話し掛け、冬音は徳利を手に流し目を送る。桜雪の、おちょこを持つ手が少し震えた。それを見る冬音の顔には、怪しげで魅惑的な微笑みが浮かんでいた。


 小春と晶紀は、高台にたどり着いた。夕日が廃墟を蜜柑色に染め、崖の影になった暗い場所では青白い炎が点々と輝いている。二人はしばらくの間、その光景を眺めていた。

 やがて、小春は周囲を探索し始めた。崖は下りるための足掛かりなど全くなく、他に道もない。完全な行き止まりであった。

 下からは強烈な風が噴き上げてくる。その風を顔に浴びながら、小春は下方を眺めている。

「もしかしたら、下りられるかも知れないな」

 後ろで様子を見ていた晶紀に、小春が話し掛けた。

「本当ですか?」

「試してみよう」

 そう言うや否や、小春は崖から飛び降りた。

「小春様!」

 晶紀は慌てて崖を見下ろした。しかし、小春の姿はどこにもない。

 その時、小春の声が聞こえた。

「晶紀さん、どこを見てるんだい? 私はここだよ」

 晶紀が声のした真正面を見ると、小春が宙に浮いているのが見えた。手を横に伸ばし、まるで鳥のごとく空を飛んでいるようだ。

「下からの風が強いから、こうやって飛ぶことができるんだ」

 小春から説明を受けても、晶紀の耳に届いたかどうか分からない。晶紀はただ、口に手を当てて驚きの顔で小春を見ているだけだ。

 小春が体を傾け、晶紀のいる方へ近づく。そのまま器用に高台に飛び降りた。

「体を水平にして手を広げれば上昇することができる。普通に飛び降りてもゆっくり下降するから、安全に下りることができるよ」

「そんな、もし落ちてしまったら、どうするおつもりだったのですか!?」

 晶紀は、少し腹を立てているようだ。小春の無茶な行動によほど驚いたのだろう。

「ごめん、ごめん。でも、実際に飛び降りてみないと分からないだろ?」

「何か手頃な物でも落としてみてから試せばよかったんです」

「まあ、何も問題はなかったんだから、いいじゃないか」

「よくありません。小春様は無茶なことをなさり過ぎます」

 晶紀は涙目になって訴える。小春も反省したのか

「分かったよ、これからは気を付けるよ」

 と苦笑いでうなずいた。

「さて、じゃあ今度は一緒に飛んでみようか」

「えっ?」

 不意を突かれた晶紀の手を小春が握る。

「元の場所に戻るには、この道しかないみたいだ。晶紀さんも飛び降りなきゃ、帰ることはできないよ」

 そう言って、小春は崖のふちまで晶紀を連れて行った。

「どうやって飛べば・・・」

 晶紀が下を覗き込みながら小春に尋ねる。

「どうって、普通に飛び降りればいいんだよ」

「でも、小春様はさっき、鳥みたいに手を広げて飛んでいました」

「自然にできるようになるよ。じゃあ、準備はいいかい?」

「ちょっと待って下さい。まだ心の準備が・・・」

「絶対に手は離さないから、大丈夫」

 小春は晶紀に笑顔を見せた。晶紀には、小春が無理に笑っているように感じた。鉄斎が小春に告げた真実は、計り知れない衝撃を小春に与えたに違いない。そのことを考えた時、晶紀には小春がいじらしく思えた。

「どうした、晶紀さん?」

 自分の顔をじっと見つめる晶紀に、小春は尋ねる。

「いえ、何でもありません。さあ、参りましょう」

 晶紀は飛ぶ決心がついたようだ。

「よし、じゃあ三つ数えたら飛ぶぞ。一、二の三!」

 二人は同時に崖から飛び降りる。風圧のために最初はゆっくりと落ちていったが、徐々に落下速度が上がっていく。

「晶紀さん、体を水平にするんだ」

 小春が実際にやってみせるが、晶紀はうまく体を水平にすることができない。

 小春は晶紀のもう一方の手も掴んだ。

「晶紀さん、足を伸ばすんだ」

 そう言われて足を伸ばすと、晶紀も体を水平にすることができた。

「ほら、今は空を飛んでいるみたいだろ」

 小春と晶紀は、互いの手を握り、顔を見合わせた状態で空を浮遊していた。少し上昇しているので、崖が下に落ちているような錯覚を晶紀に与えた。

「なんだか不思議です」

 余裕が出てきたのか、晶紀は笑みを浮かべて周囲を見回した。見下ろせば、地面がだんだんと遠ざかっていくのが分かる。

「こうやって、空を飛ぶことが子供の頃からの夢だったんだ。願いが叶ってうれしいよ」

 そう語りかける小春の顔には、まるで子供のような笑みがこぼれていた。その顔を見ていた晶紀は思わず

「小春様・・・私はいつまでも小春様のおそばにいます」

 と口にした。いつの日か、小春がどこか遠くへ飛んでいってしまうような、そんな不安な気持ちになったのだ。

「どうしたんだい、晶紀さん?」

 目を見開いて尋ねる小春に、晶紀はただ笑みを送ることしかできなかった。

 夕日が沈み、あたりは暗くなってゆく。まばゆいばかりの黄金色に染まっていた景色が、一転して深い群青色に変化する。青白い炎が際立って見えるようになり、不気味な雰囲気さえ漂わせていた。

「そろそろ、下りないといけないな。晶紀さん、体を少し丸めて」

 小春の言うとおりに膝を抱えるように丸くなると、だんだんと落下し始めた。小春も同じ姿勢を保っている。そのままゆっくりと地面にたどり着くことができた。小春は器用に地面に下り立ったが、晶紀は寝転がるように着地した。

 晶紀を立ち上がらせてから、小春は目の前に広がる光景をつぶさに観察した。石畳の道が真っすぐ伸びているが、その先はどうなっているのか、暗くてよく分からない。他には何もなく、殺風景な景色であった。ただ、青白い炎が道をあることを示すかのように燐光を発していた。

「さて、これからどうしようか・・・」

 晶紀に目を向けて小春が尋ねても、晶紀にはどうしたらよいか答えようがなかった。

「もう間もなく暗くなる。ここで一夜を明かすか」

 小春が晶紀にもう一度問いかける。

「でも、なんとなく気味が悪くありませんか、ここ」

 晶紀の言うことは小春にも理解できた。開けた場所なのにも関わらず、周囲には重苦しい空気が漂っているように感じる。

「確かに長居はしたくないな・・・もう少し先に進もうか」

 二人は、石畳の道沿いに歩き始めた。

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