魔王の理論

カネサダ

序章 虐殺前夜

 人生にはいくつもの決断がある。

 今日の朝食はパンとコーヒーにするのか、それともご飯とみそ汁にするのかといった些細なものから、これらからの人生を変えてしまうようなものまで。

 今、自分に求められている決断は間違いなく後者のものだ。


「ご命令を――」


 そう問われる。

 大勢の人々が、自分の決断を待っているのだ。


 目の前には、自分の命令を待っている人々とは別に、数百人の哀れな人々が居る。ある意味は、哀れな彼らも自分の命令を待っている。

 

 哀れな彼らは、口々に自分に呪いの言葉を投げかけて来ている。

 そんな彼らに、自分がやるべき事は分かっている。

 

 それは、哀れな彼らを全員殺さねばならないという事だ。


 哀れな彼らは既に全員囚われ、逃げ出せない状況だ。だから、命令の実行は簡単なものだろう。


 自分がそう思っているだけなのかもしれないが、心は実に落ち着いていた。元の世界に居た時を含めても、人生で一番、穏やかな時である気もした。

 

 初めから、迷いはなかった。

 例えこれから行われる事が虐殺であったとしても。


 今の自分は次の魔王を目指す身だ。

 やるべき事を、やるのだ。

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