花火へドーン

またたび

花火へドーン

「花火は異世界なんだ」


 意味が分からないことを言う友達。


「——人生をやり直す魔法でもかけてもらうか?」

「違うんだ聞いてくれ」


 さらに威風堂々と喋る友達。


「花火は空に咲く花だ。でも、真ん中の方は空いてるだろ? なぜか」


 それはパッと開くのが真ん中からだからだろう、などと野暮なことを言えばすぐに怒りそうだからやめておく。


「それは異世界への入り口なんだ」


 はーい、やばいやつ。


「そしてその真ん中に飛び込めば、俺は異世界へ行けるんだ違いない」

「違いしかないよ。ありえないだろ」

「ふふ、これだから夢のないやつは」

「夢云々の話じゃなくない? これ?」

「明日花火大会が街であるだろう? そのときに計画を実行する。砲台を用意してな……」

「話聞いてた?」

「花火へドーン、だ!」

「その前に死ぬのでは?」

「大丈夫、魔法でどうにかする」

「だからね? そういう問題じゃなくてね?」

「禁止魔法! 『次喋ったらグーで殴るからな?』を発動! これでお前は魔法が解けるまで喋れなくなる!」

「……」

「ふふふ。じゃあな」

「(あほくさ……)」


 翌日。

 花火大会の日である。


「ヒュー……ドッカーーン!!」

「テンション高いな」

「そりゃあな。夢に見てた異世界へ行けるんだから」

「まだそんなこと信じてるの、ありえないだろ。花火が異世界への入り口なんて」

「俺は昔から書物を読んで憧れてたんだ、科学が発展し街がネオンで照らされてる理想郷を……! 花火が異世界への入り口であることも研究の末に発見したこと、嘘ではない」

「ふーん」

「信じてないな?」

「ああ、その通り。異世界にそんな簡単に行けたら苦労しないさ」


 その時、先ほど彼が叫んでいた「ヒュー……ドッカーーン!!」という音が鳴り響いた。

 ついに始まったのだ、花火大会が。


「行くぜー異世界!」


 彼は用意した砲台の中に入る。

 あっ、これガチのやつだ。


「——死んでも知らないからな?」

「その時はお前が俺を生き返らせてくれ」

「魔力の無駄遣い」


 二発目の花火。

 砲台から飛び出た友達。

 穴へと向かって行く。


「ほんと……行動力だけはあるなーあいつ」


 そしてすっぽりと、友達は消えた。


「——はっ?」



 § § §



「ここは?」


 ネオンで照らされて、ビル?がたくさんある。スクランブル交差点と呼ばれるそこで人が大量に歩く。みんなスーツ?を着ている。


「ほんとに書物通りだ……やっぱりあったんだ……異世界は!」


 彼は喜んだ。

 そこは『現代社会』という異世界。

 科学が中世以降発展せず、魔法で溢れ、花火も魔法、移動も魔法、あらゆる魔法で廻っている彼の世界とは全く違う


「やっほぉぉ! 夢にまで見た異世界へやって来れたぞ! 親友よ、俺は来てやったぞ、来てやったぞ!!」

「あのぉ……」

「ん? なんだお主は? ってこれ初異世界人とのやりとりじゃね? おお、緊張する」

「少し事情を聞いてもよろしいでしょうか」


 あっ、これ書物で見たことある。

 職務質問?ってやつだ。


「——俺は怪しくないですよ? ただの異世界人です」

「まあ良いから、良いから。とりあえず交番まで一緒に行こうか?」


 親友よ。

 早速ピンチだ。


 終わり〜続かない〜

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花火へドーン またたび @Ryuto52

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