可愛い幼馴染は”可愛い”俺と百合がしたいらしい
葵蕉
第1話 幼馴染は俺を見定める
「ねぇ、
「いや知らねぇよ。でも最近じゃ海外だとそういうのも認められてきてるんじゃないか?」
「海外は、でしょ?ここは日本だよ?まだ同性同士で結婚できない遅れた国なんだよ~!」
「遅れてるのかどうかは知らないが、まぁ……普通は異性同士で結婚するのが普通ではあるよな」
「それは私の普通じゃないんだって」
昼過ぎのクーラーが良く効いた俺の部屋で、俺は幼馴染である
今日が土曜日で、学校は休み。こんな暑い中外に出たくもないので部屋にいる。
俺らはお互いの両親が仲が良かったこともあって保育園に通っていた頃からの仲だ。同じ小学校、同じ中学校、そして現在通っている高校まで同じ。
良い年頃の男女が部屋に二人きり……となると間違いでも起きそうなものだが、俺らは別に付き合ってるわけでも無ければ、互いを恋愛対象として見たことも……俺はともかく、由希は一度も無いと思う。
それは幼馴染だからというわけでは無い。原因は由希の恋愛対象に”男”が含まれていないからだ。
そう、由希は男に一切興味が無く、好きなのは女性。
それを知ったのは小学生の時に俺が同級生に急かされてノリで由希に告白をしたときに発覚した。
まさか俺も「私、女の子が好きだから無理だよ?」なんて断られて方をされるとは思ってもみなかったが、そのおかげで俺もこいつに少しは抱いていた恋心というものが無くなったし、互いに恋愛対象になりえないという事がわかったおかげもあってか、高校生になった今でも仲が良い親友としてやっていけている。
「そもそも相手がいないんだよなぁ~。この間もさ、仲が良いと思ってた後輩ちゃんに、もしよかったら私と付き合わない?という事をやんわりと匂わせてみたんだけどさ、何故か距離をおかれてしまった……」
「それはお前ががっつき過ぎるのが悪いんじゃないのか?」
「がっついてないよ~。少しキスを迫ったぐらいで――」
「それをがっついてると言わずして何というんだ」
「愛情表現?」
「あのなぁ……」
由希はこんな感じではあるが見た目的には、そんなに悪くない。
美少女……というほどかどうかは少しわかりかねるが、女子の割には男性のようなきりっとした目と、形の綺麗な鼻、そして淡い桃色の唇と、わりと整った顔をしているとは思う。
そこに綺麗な黒髪を学校ではポニーテールにして。俺と部屋と駄弁っている時とかは割と降ろしているけど。
俺が評価するのもちょっと可笑しいが、わりと男子受けも女子受けもしそうな顔立ちをしている。
もう少し性格もイケメンだったらとは思うが……。
「なんならもう少し髪形とか喋り方を男に寄せてみたらいいんじゃないか?まだ男として見られるかも――」
「違うの!」
由希はきっぱりと俺の言葉を制する。
「私は自分が男の子として女の子と恋愛したいわけじゃないの!私の事を女の子だとわかったうえで相手も女の子がいいの!おわかり?」
「いや、そのこだわりは一切わからん……」
とまあよくわからないが、由希もこんなんだから相手が見つからないだけで、わりとそれっぽく演じていれば彼女の一人や二人できるとは思ってはいるんだが。
「けど、付き合った事あるんだろ?女の子と」
そういえば、前に少しだけ女の子と付き合った話を聞いた気がするが、どんなだったか曖昧になっていたので聞いてみる。
「あるよ……、1回だけ、中学の時に……」
「どうだったんだよ?付き合ってみて」
「うーん、なんていうか……」
「なんていうか?」
「悪くは無かったんだけどねぇ……」
「けど、1か月もしないうちに別れたんだろ?確か」
「いやぁ……それも色々ありまして……」
「そういえば当時は別れた理由について特に聞かなかったな……。どうして別れたんだ?」
割と気になったので真相を聞いてみたかったのだが、由希は少し顔を赤くして言い渋っている様子だ。
「なぁ、もう中学の時の話なんだし、そろそろ話しても問題ないだろ。そんなに意味深な反応されると逆に気になるぞ」
「いやぁ……だってさぁ……」
「じゃあ言ってくれたらアイス奢ってやるよ」
「本当!?……っていやいや、それぐらいじゃ話せないよ……」
ふむ、もう一押しと見た。
「じゃあアイスと、お前がこの間食べたいって言ってた駅前の喫茶店のパフェもつけよう」
「え!本当!?じゃあ教えちゃおっかなぁ」
「ふ、ちょろい……」
「え、何か今ちょろいって――」
「なんも言ってない、ほら!早く教えてくれ」
思わず口から本音が出てしまった。危ない危ない。
まあ、少し痛い出費ではあるが、探求心には抗えないのだ。仕方がない。
「えっと、言っても笑わないでね?」
「笑わな――、いや物によっては笑ってしまうかもしれないが、できるだけ耐えるよ」
「ちょっと!既に笑う気満々じゃん!」
「うそうそ!笑わない!笑わないから!」
キっとこちらを軽く睨んだものの、観念した様子で由希はゆっくりと口を開いて、
「あのね、……その、……よくな……っ……の」
あまりに小声過ぎて、この近距離でも聞こえなかった。
「いや声、ちいさ!流石に聞こえないわ」
「し、仕方ないでしょ!?ただでさえ言いにくい事なんだから!」
「それじゃあアイスとパフェは無しだな」
「うぅ……わ、わかったよぅ」
彼女は、一度大きく息を吐くと、覚悟をした様子で再び口を開いて、
「だから、あの……ね?気持ちよくなかったの……」
一瞬何の話か分からずに、俺の頭の中にクエスチョンマークが浮かぶ。
「気持ちよくなかったって……、え、何のお話です?」
「だから、うーんと……、その、性的な意味で……」
「ばっ……!?お前まさか、付き合って1か月も経ってないのにそういう行為に及んだのか!?しかも女相手に!?」
「そ……そうだよ。悪い?人が愛情を確かめ合うのには普通の行為でしょ?」
「いや、そうかもはしれないけど、それまだ中学生の時の話だよな?」
「そ、そうだよ!そっちがどうかは知らないけど、こっちは小学生の時からもう色々知ってました!」
まさかあんな短期間でそこまで発展してるとは思わなかった。
小学生って早すぎ……るってわけでも無いか。一応俺もその時には色々覚えたし……。
ん、まてよ、ってことはまさか――
「由希、お前ってまさか……言っちゃあれだが、もう処女じゃ……」
「んなっ!?しょ……処女だよ、まだ!未遂だもん!ってなんて事言わせるの!デリカシー無さすぎ!」
「いやだってさっき気持ちよくなかったって……」
「だから、未遂なの!えっと、じゃあその時の事を説明するから聞いて!」
「お……おう……」
他の人の……しかも幼馴染のそういう行為を直接聞くとかどんな状況だよこれ。とは思いはしたが、とりあえず聞くことにする。
「その……ね?その子とは実は自分から告白したんじゃなくて、相手から告白してきて付き合ったの」
「え、マジで?」
「うん、マジ。私も告白された時はさすがに驚いたし、何回か話した事がある程度の子だったからまだ好きとかじゃ全然なくて少し悩んだんだけど、この機会を逃したくないって思ってOKしたの」
当時はこいつが迫って偶然成功したものだとばっかり思っていたが、まさか相手からだったとは……。
「でね、何日か放課後一緒に帰ったりしてたんだけど、2週間ぐらいたった時にその子の方から、”今日、両親帰ってくるの遅いから部屋に来ませんか?”って言われて」
「それ完璧そういう事をする前提のお誘いじゃん……」
「うん、私もそうだと思って、覚悟を決めて彼女についていったの」
「そ、それで?」
「それで……ね、その子の部屋に入って最初、しばらく何もせずにお互いにベットに座ったままでいたんだけど、相手の方から私の太ももに触れてきて”先輩と、気持ちよくなりたいです”って耳元で囁かれて」
「お……おう」
他人の行為の話を聞いたところで普段は何とも思わないが、それを実際に俺が小さい頃から知っている由希の実体験だとわかって聞くと、なんというか……。
「その、お互いに……ね?手でし合ったの」
「手……で?」
「えっとつまり――」
「いや、待て!言わなくていい、分かった!分かったから!」
思わず聞いてるこっちが恥ずかしくなって由希の言葉を遮る。
「何となくどういう事をしたのかは想像がついたから……」
「そ、そう……?そ、それでね。行為の最中、相手の子はすっごい気持ちよさそうだったんだけど……、私……何故かわからないけど全然、気持ち………よく……なくて」
「え?えっと、それはどういう――」
「だ、だからっ!全然感じなかったの!触られてるなぁぐらいの感覚しか浮かんでこなくて……」
「は……はぁ」
いくら俺が幼馴染の親友とはいえなかなかぶっちゃけた話をするなと思いながら。
「相手が下手だった……とかではなく?」
「とかでは……ないとは、思う。私もなんで全然何も感じないんだろうってずっと疑問で。で、ずっと続けてたらそのうちその子だけ先に気持ちよくなっちゃったみたいで」
「そ、それで?」
「私も気持ちよくなりたいとかそういうのじゃなくて真っ先に相手の子が一生懸命してくれてるのに私は………って罪悪感でいっぱいになっちゃって、で……飛び出してきちゃった」
「飛び出したって――」
「家に帰ってきちゃったの!それがあったせいで次の日から凄い気まずくなっちゃって……、そのまま自然解消、みたいな」
「で、……その後、何で気持ちよくなかったのか、わかったのか?」
「……わかんない。けど、たぶん、私がその子の事、あんまり好きじゃなかったんじゃないかなって……思うようにしてる。一応」
「な、なるほどな」
女性同士の恋愛とか、女子同士のそういう行為に対してあんまり知識が無い為、何となくわかったようなふりをするしかなかった。
そのあとは、互いに暫く無言になり、暫く時間がたって、
「って!なんでこんなに重い空気になるの!?」
「そっちが変な話しだすからだろ!?」
「聞きたいって言ったのはそっちじゃん!もう……今日は家帰る!」
「そ、そうか!ま、また明日!」
明日は日曜日、だが俺ら二人はお互い用事が無ければ、日曜だろうとほぼ関係なくほぼ毎週のように何をするわけでも無いのに集まっているので、多分明日も会うことになる。
「そうだ!明日はパフェとアイスね!忘れないでね!」
「おう、そうだった……って一日でどっちも食べる気かよ!?」
「あたりまえでしょ!それじゃ、あ、何冊か漫画借りてくよ?」
「当たり前なのかよ……。ああ、好きに持っててくれ」
「ありがと、それじゃあまた明日!」
そう言って由希はとくにどれを借りようか珍味するわけでも無く、多分適当に漫画を持って部屋から出て行った。
俺は話を聞いただけなのに、なんか色々と疲れた気がしてそのままベットに横になると、夕飯の時間に母親に部屋に侵入されて無理やり起こされるまで寝てしまった。
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次の日、俺らは適当に昼過ぎ位に駅前に集合すると、そのまま目的の喫茶店に向かった。
「わぁ!このキャラメルタピオカパフェ!やっぱ美味しいよ!悠佳も食べたほうがいいって!」
「いや、おれは……遠慮しとくわ」
「えぇ……美味しいのに」
くっ……痛い出費だった。
まさかパフェ一つでこんな値段がするとは。
俺は一番安いであろう水をちびちびと飲みながら由希が食べるのを眺めていた。
こいつ、俺が奢るのをいいことにパフェだけなくてカフェラテも頼みやがったからな……。
その出費の元凶の主は、白いシャツとブラウンのジャンパースカート(と言うらしい、由希が言っていた)を着て、ちゃんとメイクをして、下ろした髪に少しカールをかけているみたいだ。ボーイッシュでも何でもなく普通に可愛い恰好だ。もう少しボーイッシュな格好をした方が女受けはいいと個人的には思ってたりするのだが。
「あ、そういえば昨日借りた漫画返すよ」
「今かよ。まあ良いけど」
由希は右手でパフェを食べながら、左手でメッセンジャーバックから袋に入った借りた漫画をに入れて渡してくる。
「食べるか渡すかどっちかにしろ」
「だって、美味しいから手が止まんないんだもん」
「それはそれは奢った甲斐がありますわ。そういえばどの漫画借りたんだ?」
渡された袋の中をみながらそう質問する。
そう聞くと、あれほど美味しいから手が止まらないと言っていたのにいったん食べる手を止めて、
「えーっとね、いや、私も悪いんだよ。あの時急いでたからろくにタイトルも見ずに何冊か借りてきちゃったから」
「え、何の話?って……あ”っ」
俺は袋に入っている漫画を見て思わず表現できないような鈍い声を漏らした。
「いやぁ、まさか普通の見えるところにある本棚に、そのえっちな漫画あるとは思わなかったからさ……」
「いや……、これは何かの間違い……」
「まあ、普通のえっちな本とか漫画を隠してる場所は知ってるけど」
「は……?」
「今時ベットの下に隠すなんて古典的な方法使うかな普通?」
「ちゃんと中学校の時とかの教科書でカモフラ―ジュしてあるはず……」
「そんなのちょっと漁ればすぐにバレますー」
「お前っ……人の部屋を勝手に……」
「そりゃあんなに何回も行ってればバレるって……、まさか隠し通せてると思ってたの?」
「……思ってました」
「oh……」
由希はあからさまな反応をしながら可哀そうな目でこちらを見つめる。
「ちなみに」
「ちなみに?」
「悠佳のお母さんにもバレてるよ……?」
「……くっ……」
由希にバレてる時点である程度は察していたが、こうも現実を突きつけられると後悔しか湧いてこない。
もっとわかりにくい所に隠しておくべきだったっ……。
「って本題はそうじゃなくて、……まさか悠佳がそういう事に興味があるとは思ってなかったから少し驚いて」
「そういう事って……?」
「いや、自分でもその漫画の見たことあるなら内容分かる……でしょ?」
「内容って……あ”っ~!?」
俺は本日二度目の鈍い声を漏らした。
由希に貸したこのエロ漫画、その内容はとある事情で女装した主人公がそのことがバレないように女の子とイチャイチャする話だった。まあ結局、最後あたりで男だってバレるんだけど。
「まてまてまて、確かに興味本位でこの漫画買ったけど――」
「嘘っ。本当は興味あるんでしょ?女装に」
「いや、ないから!逆に嫌だろ!幼馴染である俺に女装の趣味が合ったら!?」
「別に……良いと思うけど?」
「いいのかよ……」
「レディースの服とか持ってるの?」
「いや持ってないわ!そもそも興味ないって――」
「はいはい。恥ずかしいのはわかったわかった」
「いや別に恥ずかしがって――」
「じゃあ、今日この後、買いに行こう?」
「買いに行くって……何を?」
「女の子の服!」
「はぁ~~~~!?」
この時は俺は考えもしなかった。
由希が何を考えて俺に女装をさせようとしているのか、そして、
俺がこの後も何度も女装する羽目になろうとは――。
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