会わせ屋さん

@t710

第1話

人間はどうして動物と話せないんだろう


それはきっと人間が耐えられないんだ


動物の寿命は人間に比べて短い

話が出来て君たちのことをもっともっと知れば知るほど


居なくなってしまったとき

それを受け止めることが難しいのだろう


人は他の生き物よりも弱いのだから…




って僕は何を考えているのだろうか


「はぁー、これだから時間に余裕のあるフリーターは変なこと考えてしまうんだよなぁ」


自虐ネタを呟きながらいつもの帰りの道を歩く

特にやりたいこともないし目標もない

高校を卒業して親の仕送りで生活しバイトを点々としている


「あっ新しい動画アップされてるな、帰ったら見よっと」


とは言えネガティブではなく

いかなる時もスマホを手放さない現代っ子なのだ


いつもの帰り道

景色はいたって普通なのだが

1つ違ってることが僕の目線の先に入って来ている


「なんであんな歩道に小学生が一人うつ向いて座ってるんだ」


歩道と草との間のちょっと座れるコンクリート部分をなんと呼ぶかは知らないが

そこに小学生が座っていた


このご時世

世間から何を言われるかわからんからな

このロリコンやら誘拐犯やら

だからと言って誰も声をかけないとは

さすが都会の皆さんは防御策が備わってらっしゃる


とは言え田舎から来た自分ではあるが

自分からは話しけたりはしないのだ


「世知辛いな。」


その子を横目に歩く


「あれ。」


違和感を感じる

その子は靴を履いていなかったのだ


いじめか家出かな

誰か他に声をかけるだろうと思い見て見ぬ振りをする


がフリーターではあるものの

僕も一応は社会人の大人なのだから

善意を出してみる


「ねぇ君、何してるんだい?」


返事はなく聞こえてないようだ

軽く肩を叩いてみた


「靴どうしたよ?」


その子は振り向きこちらを見る

子供ってこんなに澄んだ目をしてたんだなぁと

不意に思ってしまった


「私?」


その女の子は言った


「靴も履かないで何してるの?野良犬にでも持ってかれたか?」


元気付けたいってのとは違うかも知れないが

なんだか暗い雰囲気は嫌なので

冗談混じりに話す


「違うよ。靴って履いたことないし、野良犬は怖い子が多いから近づかないもん」


そうか今時の子は

なんかのテレビにでも影響されてこういうキャラになったりするものなのだろうか


「そっかー噛まれたりしたら痛いからな。」


「うん。」


「靴なくたって小石避けたりして歩けば痛くないしな。」


「うん。」


明るく元気って訳でないが返事はしてくれる


「所で君のお家はどこだい?迷子なら警察まで送るよ。」



「探してる所があるんだ。」



と女の子は呟いた


「迷子ね。付いて来て。」


僕はその子を近くの警察署まで連れていくことにした

別に忙しい訳でもないし

そのまま見て見ぬ振りするよりはずっといいよな


その道中女の子が話しかけてきた


「ありがとうお兄さん。」


「いいんだよ。」


礼儀正しい子だなと思いながら返事をする


「私の話し誰も聞いてくれなくて。」


「そっかー、都会だからな。」


反射的に出た返事だったにしても

子供に対して言うことではなかったかなと思ってしまう


「足痛くないか?」


「大丈夫。」


「靴履いてないって幽霊みたいだな。」


自分が子供だった頃のイメージが出てしまう


「うん。」


「そっか。」


さては幽霊のテレビアニメにでも影響されたのかなと思いながらちょっと微笑んでしまった


その時向かいから自転車がやってきた


「危ないぞ。」


「大丈夫だよ。もう痛いとかってないんだもん。」


と女の子は言うと自転車を気にせずそのまま歩く


意味も分からずにいるともう自転車が彼女の目の前まで来ていた


「危ない!!」


女の子の手を取りこちらに引くが

間に合わず


足が自転車にぶつかってしまった


はずだったが

自転車はそのまま走り


女の子も何なんともない


自分の目を疑ってしまうが通り抜けたように見えた


「どういうことだ。」


声がこぼれるように出てしまう


「わたし先月事故にあったの。それで飼い主さんがきっと自分のせいだって思ってるの。だから大丈夫だよって言いに行きたいの。」


と女の子は突然すごいことを言い出した

僕は理解できず返事をする


「へぇー。」


なんだろうねこれは夢なのかな

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