Sequence of my life

 話してごらん 話せないから

 今日何かする?しない?しないなら終わり 次のシークエンス

 今日は話せる?話せない?

 ちょっと話せる?よかった 偉いね 話してごらん?忘れちゃった?仕方ないね でんぐり返しでばいばいばい

 靴ひも結べた? 少し長く結んだ時はアンラッキー 公衆便所に触れると腹立つよね わかるわかる 話せる?話せないなら仕方ない。

 今日はどう?えっ ハッピーバースデーなの?おめでとう 嬉しいよ 普遍的だね ケーキを切り分けようか 切り分けらない?仕方ない 君がとっておいてよ。

 君の人生は普遍的か?そんなことない?仕方ないね 大体そんなもの 切り分けられないストロベリーケーキみたいに

 刹那的に生きることしかできないよね

 ピリオドピリオド&スペースでしか 呼吸ができないんだよ 句読点はどこ?ないの?押し入れに置いてきた?仕方ないね

 仕事はどう?うまくいかない?仕方ないね 刹那的な人間だからね シークエンスシークエンス。 どこから読んでも同じ我が人生

 君の人生ってどこ?どこにある?いつなったら自分を許せる?許せない?仕方ないね そういうのって大切なもの無くさなきゃ分からないんだけど でも大切なものは全部シークエンスの中


 今日はどう?仕事うまくいった?うまくいかない?仕方ないね なんでもできることがあるわけじゃないからね 君のそばでは何が今鳴っていますか 何もなっていませんか 目覚ましが鳴っていますかいませんか 仕方ないねそれは Sequence Of My Life


 昨日は飲み会だったから今日は遅くまで寝ていた それで九時ぐらいに目が覚めて そのまま朝ごはんのヨーグルトを食べた ヨーグルトはレモンの蜂蜜入りで少しふんわりしていた パンも少し食べた 今日はお昼にラーメンを食べる予定だったからそれぐらいにしておいたんだ十二時ぐらいにラーメンを食べに近くの駅まで行ってそれでラーメンを食べたんだ 好きなのは煮干しのラーメンで 灰色のセメントみたいなやつだ 食べたあと帰り道ではすごいお祭りみたいに賑やかで 何かをやっていて 僕はそれに紛れ込みたかったんだけどそれでも幸せだったんだ 幸せの在り方についてどうこう言えることじゃないんだけど でも一人でそういう群衆に紛れ込むことによって僕は自分の立ち位置がわかる そういう刹那的な生き方しかできないんだ Sequence Of My Life


 外の世界に出るたんびに僕は空を見上げるんだけどその度に自分のことについて考える なんかため息がすごく出てしまうんだけど それでいいのかなって思ってしまう そのまま歩いていると 沢山人がいて ビールとか焼き鳥が売ってた 僕はあんまり普段はビールは飲まないんだけど今日はいい気分だったからそれを買うことにした ビールは透き通っていて 天気は曇り空だったんだけど 美しく見えた 何もかも透き通っていて そういう純粋さが 手のひら越しに透き通って見えた 焼き鳥と ビールを飲みながら 歩いて 帰ったよ 沢山人がいて 人は皆人々で 個人的なのは僕だけで それだけでもうあなた達に勝てることは何一つない それでも歩くしかないからビールと焼き鳥を持って歩いた

 今僕たちの前に黒いカラスが横切った 僕の前とも言えるし僕たちの前とも言えるでもとにかく僕たちの前を黒いカラスが横切った 僕はビールを持っていて 人々はそれ以外のものを持ってきた でもみんながその黒いカラスを見た そうしたらもう僕たちはその黒いカラスのことしか考えられない それしかを考えることができない それがシークエンス


 今日は長めのシークエンス いつもは刹那的だけど 今日は意識が長く続いた たくさん考えることがあったから いつもより たくさんの 思考を得ることができた


 本屋に行った 本屋に寄った 本屋には本がたくさんあるけど それ以外は何もない それ以外を求めて 本屋に寄るんだけど それ以外がある本屋はどこにもない 悲しい 仕方ないね 難しいけど うまくいかないけど でも本屋がそれしかないからしょうがない 本屋の背表紙をいつも見ていると悲しい気持ちになる 何が悲しいのかはうまく言えないんだけど そのうちのひとつお手にとって 一文目を見るんだけど いいことはひとつも書いてない 僕を わくわくさせるものは何もない それが本屋なのかな 難しいわからないことだらけだ Sequence Of My Life


 コカインを飲もうか 大麻を吸おうか そんなことを考える 人ってどれくらいいるのだろう せいぜいタバコかビールか そんなものだと思う 仕事はどう? うまくいってる? いっていない? 仕方ないね 君は刹那的だからね 意識が断裂しているから ジグザグで 誰にも認められなくて 思考の流れもなくて ぶつ切りだから 仕方ないね それを繋ぎ止めたくて 何かするんだけど 何もできない うまくいかなくて 辛いんだけど でもなんか笑えてしまう それが幸せなのかは 分からない 不幸せだと 認める気持ちもない


 僕は今どこかに向かっているわけではない でもただ人の流れに沿って歩いている それだけは確かだ だって そう見えるし 僕の意識は 人の流れに沿って歩いているし 今ペットショップの前を通って そこに入ると猫がいて そうするとこの前死んだペットの犬のこと思い出して 悲しい気持ちになる 犬は すごく懐いていたと思う 分からない 懐いていなかったかもしれない 犬の気持ちはわからない でもそうであってほしい だって犬がいなくなった時 僕はとても悲しかった もういなくなってほしくないと思ったけど もうすでにいない そういうことをペットショップの前で思い出す ペットショップにはそんなことを知っている人も知らない人もいるのだろう そういう人が集まるのだろう 薬をくれ


 なんか気持ち悪くなって引き戻して 喫煙所でタバコを吸う


 タバコは前アメリカンスピリット吸っていた その前はラッキーストライク


 今はウィンストン ウィンストンは結構いい感じ 軽いから アメリカンスピリットは重かった 喫煙所にも人がたくさんいる みんなタバコを吸っている 僕の副流煙が彼らにかかり 彼らの副流煙を僕は避ける 頭が酩酊して クラクラして またペットショップに行こうと思った それで横断歩道を渡るんだけど 渡る前にまたタバコを吸おうと思って 引き返した また喫煙所でタバコを吸って 一本なんだけど 取り出す手が震えて タバコが落ちる 落ちたタバコを見て 汚いと思ったんだけど それしかないから吸った


 しばらく喫煙所と横断歩道をうろうろした オロオロした 打ち寄せて 引き返して いつもそんなんばっか 何がしたいんだろう 世界がどうなっていようと 明日がどうなっていようと いつまでもオロオロ うろうろ どうしたいんですか どうもしたくないんですか でも渡れた 横断歩道渡れたよ まずはそこから 何かを渡るところから 途切れた記憶 その他の思い出 いろんなものを 渡るところから


 中古のゲームショップで ゲームを買おうと思って入った 昨日の飲み会で年下の成功しているやつに ゲームなんて無駄ですよって言われた 同じく同僚にも ゲームなんて意味ないよって言われた 僕もそう思う みんなそう思う そんなことはわかってる でも買いたいんだ 買ってプレイしたいんだ みんないつも土曜日なんて来ないと思っているから だから家に帰ってゲームをする そうやって虚ろにさまよって 自分の立ち位置を見つける 日が暮れて ゲームをして きっともう土日は来ないなって思う でも来る それでまた土日が来た時に 同じことを思う また一瞬だったな 一瞬で僕の意識は 過ぎ去ったな そういうシークエンスと中で その中でしか 自分を意識できない そういう存在 僕はシークエンスの獣 あなたもそう みんなそう みんな歩いているけど そう思ってる 自分が シークエンスだって 無意識のうちに さっき黒いカラスが横切って みんなそれのことしか考えられなくなったけど 同じこと みんな自分が黒いカラスだって 比喩してしまっている それが シークエンス それが刹那的 そういうあり方でしか自分を表現できない


 何か言いたいことある? 君はうまく暮らせてる? 暮らせてない? 不安なのか? 君の心は 生活できていないのか? 君の心は 一人暮らしか? 計画を立てられているか? 僕は立てられていない いつも不安だ よるべなく 何も気にならない でも気にしてる 誰かが僕のことを気にしないかと 気にしてる いつからこんな世界になっちまったのか でも果たして 世界は何も変わっていない 僕も何も変わっていない あなたも何も変わっていない 変わったのは人の流れ それに準じた思考の流れ それくらい 後は大切なものの有無 目覚ましは鳴っている 鳴っていない それが分かるか分からないか 後はそれぐらいの違い


 曇り空だから うまく歩けない 足がふらふらで どこに向かっているかわからない とりあえずバスに乗らなきゃ バスに乗らないと 帰れない そうやって歩いてると 女の子が歌っていた 女の子達が歌っていた もうクリスマスだからか 賛美歌を歌っていた それが美しかった 空間が光っていた 曇り空で 寒空で 冷たい空気が僕の肌を突き刺すけど 歌は柔らかかった 人々はそれを見て 見ないふりをしていた 見ないふりをして 幸せを感じていた 歌は 透き通っていて リズムと ライムが 空気を震わせていて スクランブル交差点の自動車が それに負けていた 僕はもうふらふらで しこたまやられていて 階段を上がることすらできなかったけど 幸せを感じた 嫌になっちゃうね女の子はみんな笑顔で それを無表情で隠していて そんなのすぐにわかっちゃうんだけど 僕はとにかく打ちのめされていた 幸せなんだけど そこから足早に立ち去りたくて 逃げ出すように立ち去った


 長年付き合っていた彼女と別れた 別れ際に 君は死んだ方がいいと言われた 本当はそんなこと言われてないけど そういう風に言われたのと同じ ただそれはもう別にどうでもよくて 今僕はどこに向かえばいいのかがわからない 風が吹いているんだけど それを歌にすることができなくて 小説にもすることができなくて 昔はそれができたんだけど 今はできない Sequence Of My Life


 昔から考えるのが苦手だった 今も考えるのが苦手だ 相手が何言ってるのかわからない 何が文に書いてあるのかわからない 相手の意図が読め取れない 空気に浮かんでいる意図がわからない そういう中で生きてきた 仕方ないしょうがないね 歩くしかない


 どうせうまくいっていないんだろう 楽しく生きていないんだろう わかるよ 刹那的だからな 一貫して 刹那的だから 持続しない そういう風に生きてきた 仕方ないね しょうがない


 僕は讃美歌に追い立てられながら 一日の中で一番うまくいっている時について考える それはきっと電車の中にいる時 電車の中に入れとき皆平等で 皆平等にイライラしている 皆平等に周りの人にどうあたろうかと考えている どうやって当たり散らそうかと 道渡ろうかと 考えている 僕はその空間が嫌いだ その空間にいたくない でも一番思考ができる 一番意識がはかどる 電車に座っている俺の前にいる人にいつもフェイントかける 降りないと見せかけて降りる疲れた人の ちょっとびっくりした顔が見たいのだ あと僕が意地悪な善行を積んでいるという 反抗的な従順さを示したいのだ


 撃たれた死体みたいに ガサガサ歩きながら バス停に向かう バス停の待ち時間はあと十五分 僕はあと十五分間に来なければいけない 曇り空の中 それの一体どんなに難しいことか 一体どれだけ激しいことか 僕は足を引きずって コンビニに避難する コンビニの中で 雑誌を読むけど 全部閉じられている ない 何もかもない 全部ない ないないない 僕は焦る 十五分間生きなければいけない その何たる難しいことか 僕は外を見る 曇り空だ 黒いカラスが飛んでいる みんなそれを見ている みんな意識の裏に 黒いカラスを抱えている 僕はそうはいかない 逃げなければ カラスから 避難しなければ


 十五分後やっとバスが来て 僕は飛び込む そして一番右奥の ふたりがけの椅子の 窓際に 体を埋める 息が上がっている 何も考えられない バスが発車する 僕は景色を刹那的に見る 前から後ろに流れ 後ろの景色はもう二度と見えない 薬をくれ


 やっと終点だ 景色が僕を叩く 深層の意識が 盛り上がってきて 引き出そうとしている それを押さえ込みながら 朽ちた自転車に乗る それは僕の自転車 ずっと使っている 僕が 刹那的な意識を 持つ前から使っている それをこぐ こいで家に帰る 家に帰って玄関を開ける 昔は犬がいたけど 今はいない 死んでしまった 悲しいけど 仕方ないね 家に帰って ベッドに横になる やっと一息ついて 天井を見上げる僕はつぶやく Sequence Of My Life

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