髪様

なも

髪様との出会い

私の名前は神崎光乃かんざきみつの。高校2年生。

勉強もスポーツも普通だし、先輩彼氏以外にかわいいって言われたことがないから顔も普通だと思う。

しいて特徴をあげるとすれば、太ももぐらいまである長い髪かな?

小学生の時に見ていたアニメのヒロインに憧れて以来ずっと伸ばし続けてる大切な髪。

どこまで伸びたら切るというのは特に考えていない。伸ばせるだけ伸ばすつもりだ。

これだけ長いと結構日常生活で邪魔になる。髪がドアに挟まったりトイレの便器に入りそうだったり……

私は長い髪が好きだからここまで伸ばしてるけど、ここまで伸ばしてる人は他に見たことないなぁ……みんなもっと伸ばせばいいのにって思う。


「それにしてもほんと光乃って髪長いよねー」

昼食の時間、食堂で友達と日課になっている雑談をする。

「そういえばさ、髪の悪魔の話知ってる?最近ネットで話題になってるんだけどさ」

「髪の悪魔って?」

「髪の悪魔は髪の長い人に取り憑くんだけど、取り憑かれると幻覚や幻聴みたいな症状が出るんだって」

「じゃあ私まずいじゃん……まあでも取り憑かれたら髪切ればいいのかな。切りたくないけど」

「それが恐ろしいことに髪の悪魔は髪を切ってからが恐ろしさの本番なんだよ!髪の悪魔の呪いで宿主は狂気に染まるんだよ!」

「切っても切らなくっても嫌な目に合うなんてやな悪魔だなぁ……」

「光乃はこんなのに取り憑かれる前に早めに髪切っときなって。光乃だったら短いのも似合うと思うよ?」

「ショートって一度もしたことないから怖くて……」

「大丈夫大丈夫!一度ショートにしたら嘘のようにスッキリするから!」

「うーん……でも私はロングが好きだし……」

そんな事を話していると、私たちの会話に新たなメンバーが加わった。

「でも光乃ちゃんはやっぱり髪長くないと光乃ちゃんって感じしないよぉ」

彼女は練馬ゆら。学年で私の次に髪が長い女の子だ。

おへそほどまである天然パーマだが、ストレートにすると一体どれぐらいの長さなのだろう。

「私は好きだよぉ光乃ちゃんの長〜い髪。私も光乃ちゃんぐらい伸ばしたいわぁ〜」

「ありがとう!やっぱ私の美的感覚を理解してくれるのはゆらだけだよ〜!」


放課後、私は1人で学校からの帰り道を歩く。

家から近い高校にして失敗だった。みんな電車通学なのに私だけ徒歩通学。しかも私の家は駅とは逆方向。だから桐生きりゅう先輩以外と一緒に帰ることはなかった。

「桐生先輩、大会の練習で忙しいからしょうがないよね」

私と桐生先輩とは1年前に付き合い始めた、私にとって初めての彼氏。

最近は大会に向けての練習が忙しいらしくて全然会ってないけど、大会が終わったらまた沢山デートしたいな。


そんなことを考えていると、突然背後から話しかけられた。

「お主、綺麗な髪じゃのぉ……」

振り返ってみると、そこにいたのは見知らぬおじいさんだった。

「わしは髪に宿る神。髪様じゃ」

「髪様……?」

「そうじゃ。お主の髪は綺麗で気に入ったわい

これからずっとお主を見守ることにするぞ〜」

髪の神様か……このお方についてもらえれば髪の悪魔に取り憑かれることもなさそう!

「あっありがとうございます!これからよろしくお願いします!」

「これからもずっと伸ばすんじゃぞ〜」

友達に言われてショートにすることも考えたけど、髪様がきちゃったらもうずっとロングのままでいるしかないね!


これが、私と髪様の出会いだった。

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