私生児

@chayoi

第1話 玉ねぎ畑

どこまでも続く玉ねぎ畑だった。玉ねぎ畑と言っても、広い畑の中に飛び跳びに小屋があって、その小屋に収穫した乾いた玉ねぎの束が束にして吊るされている。それで幼心に玉ねぎ畑と映った。

それが、初めての汽車の旅の思い出だった。

それ以外、何も覚えていない。

一緒にいたのが誰だったのか。

祖母だったのか、母はどうしたのか。父は?

一切の記憶がないままに、汽車は煙を吐いて、ひた走りに走った。

乗物の記憶は、今いた場所、そこが世界の全てだった場所から、移動する。別世界の存在を教えてくれる強烈な印象を与える。だから、その眼に焼き付いて離れないのだろう。多分それは、私が父の下を離れて祖母の住む家に引き取られる時の記憶なのだおもう。

3歳児。それ以前のことは全く記憶にない。

父の記憶も全くない。

玉ねぎ畑の方が、私の心に深く焼き付いたのだった。

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