何が起こっているんだ。
「母さん、蛍光灯ってどうやって換えるの?」
この日、おおよそ時代にそぐわない僕の質問に対して、現代から見て数百年前の人間であろう彼女は知るはずの無いことを丁寧に教えてくれた。
そんな中、父さんは部屋の隅の方で熱心に剣を研いでいた。
どうやら近く戦争があるらしい。
通りの方からそのような話が聞こえてきた。
しかし戦争よりも目先の蛍光灯だ。
幼児である自分は戦争にはいけない。
母にはまず、使える蛍光灯を捜さなきゃいけないこと。
さらに入れ換えるには少しばかりコツが必要なことを教わった。
とりあえずそこら中に転がっている埃かぶった蛍光灯の中から、まだ使えるであろう物を捜し出す事にした。
現世の記憶のお陰か、見つけ出すのにそう時間はかからなかった。
ただ、一つ問題が発生した。
現代っ子である僕は転生してもハウスダストに弱いらしかった。
少しの埃でも鼻先が痒くなってしまう残念な鼻の持ち主だった。
無性に痒くて鼻を擦る手を止められない。
そんな僕を見かねて母が何やらゴソゴソやりだした。
「手じゃなくてこれで鼻を擦りなさい」
そう言って母は僕にガーリックチップを手渡してきた。
…ん?
違和感しかない光景だが素直に受け取り、指示通りにする事にした。
すると不思議なことに鼻先から痒みが消えてゆく。
ガーリックチップの思わぬ効能に感動している僕に次の問題が発生した。
今度は数匹ばかりのコバエだ。
現代っ子である僕は何よりも虫が大の苦手である。
年端もいかない子供に戻ってもそれは変わりなかった。
慌てふためく僕に義母は腕を伸ばしてきた。
でもそれは僕に向けて、ではなく何か他のものを気にかけている様子だった。
そんな刹那、コバエは普通のハエに成長した。
夢の中凄まじい。成長速度がえげつない。
しかも心なしか数を増やしている気さえする。
驚いて尻餅をついた僕に、義母は驚愕の一言を投げかけた。
「誰だいあんた、息子の上からどいておくれ」
どうやら尻餅をついた先は貰われた老夫婦の本当の息子の上だったらしい。
感触らしい感触がなかったのは既に死んで白骨化しており、火葬された骨のように脆くなっていた為だった。
そんな白い粉になっている骨と、血相を変え僕を凝視する義母を何度か交互に見ている内に更なる違和感に気付いた。
さっきまで聞こえていた、義父の研磨の音や通りの喧騒がなくなっていた。
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