スカーレット
HaやCa
第1話
朝焼けが落ちる街並みに、僕は必要以上のことを思い出した。
家族と訪れた海辺、妹は波打ち際ではしゃいでたっけ。
霞む記憶の断片を寄せ集め、おおきな一体感と成す。
ふいに僕のほうからなにもかも失いたくなって、忘れてしまう。
あのころの思い出はまるで日の出のようで、ときを疎かにした。
無作為に選ばれたこじつけの理由を、だれもかも人のせいにするんだ。
「ねえ、きみが好きないろはなに?」
「青。スカイブルーだよ」
彼女がほほえむ。
「とってもいい答えだね。わたしの好きないろは、スカーレットかな。朱く清らかな色」
蒼空に流れたぼくたちの恋を、だれも気付きやしない。
終わりゆく運命の行く末に、なにを描けばいいのだろう。
そっと、彼女が教えてくれる。
「そんなことは、考えたってわかりやしないよ。だから、気ままに生きていよう」
破顔するふたりの声に、ゆっくりと緩慢なスピードで黄昏れていく。
スカーレット HaやCa @aiueoaiueo0098
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