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「類、本部に異動しても、同じ都内なんだから。また一緒に食事したり飲みにいこうね」


「捺希さん、私、飲めないから」


「類を飲ませて、僕がいただく」


「わ、捺希さん。類をそんな目で見てたんですか? 俺はですね、類にプロポーズするつもりで東京に来たんですよ」


「プロポーズ!? 恭介さん、やっぱり元カレだったんだね! そんな下心持って上京したの? あり得ないよ。だから、類が異動になったんだよ。恭介さんのせいだからね。年上でも僕より後輩。バンバンこき使うから! ほら、恭介さんも開店準備行くよ。明日から類はいない。塁さんは即戦力だから、シェアハウスの掃除も恭介さんだからね」


「えっ、俺ですか!? そんなぁ……」


 諸星と恭介はもうすっかり意気投合している。


 香坂と鳴海店長は騒々しい中で、静かに珈琲を口に運んでいる。いつもの朝だ。


 ◇


 beautiful magicで最後の勤務。何度かお叱りを受けた小池のシャンプー。


 私の最後のお客様。


「上手になったわね。とても気持ち良かった。商品部に異動なんですってね。ちょっと勿体ないわね」


「小池様にそう言っていただけるなんて、とても光栄です。短い期間でしたが、ありがとうございました」


「彼が新しいスタッフ? 同じ名前だなんて奇遇ね。とびきりの美男だこと、波瑠さんと雰囲気が似てるわ。先週配属された朝日川さんとはタイプは違うわね」


 恭介と錦折では容姿も技術も比較にはならないけど、でも僅か一週間でブティックの商品や価格を全て脳内にインプットし、話術で常連客のハートをガッチリ掴んだ恭介には、別の意味で脱帽だ。


 半日で来店客を虜にしてしまう錦折も、美男の鏡というべき逸材。


 数ヶ月もの間、商品部に眠らせていたことを申し訳なく思う。

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