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 諸星はエプロンをつけキッチンに並んでいる私と恭介をまじまじと見つめた。


「まるで新婚家庭にお邪魔しているみたいな気分」


「やだ、捺希さん変なこと言わないで下さい。朝日川さんとは面識があるから……」


「出身地が同じなんだよね。朝日川さんbeautiful magicでは鳴海店長以外、みんな名前で呼びあうんだ。僕は諸星捺希。彼は香坂蓮さん。宜しくお願いします」


「捺希さん、蓮さん、こちらこそ宜しくお願いします。美容師の経験は浅いですが、誠心誠意勤めさせていただきます」


「今夜は堅苦しいことは抜きだ。恭介はビールでいいのか?」


「鳴海店長。類は弱いけど俺は何でもイケます」


 恭介の言葉に、三人の視線が同時に向く。


「……あっ、広島支店ではエステサロンやヘアサロンのスタッフを招いて、毎年クリスマス会を開催していて。そこで……なっ」


「はい、そこで一度お酒を勧められ、『飲めません』とお断りしたんです」


「へぇ、飲ませてお持ち帰りしたんじゃないの?」


「してませんよ。俺はそんな卑怯な真似はしません」


「ふーん。恭介さんは真面目なんだね。蓮さんならお持ち帰りするのにね」


「捺希、俺にも選ぶ権利がある。だれがこんな貧乳」


「貧乳?」


 私の身体的特徴を指摘されたのに、何故か恭介がムッとしている。


 みんながその様子に気付かないように、私は慌てて料理を運ぶ。


「皆さん、お待たせしました。ニンニク抜きの餃子と、豚スペアリブ辛味焼き」


「お前コレしか作れないのか?」


 香坂の言葉に、恭介が口を挟んだ。


「類の餃子は旨いですよ。本当はニンニクが入ってた方が、最高なんだけど」


 三人の視線が再び私達に向けられた。


「ご、誤解しないで下さい。クリスマスパーティーで、この二品を差し入れしたんです」


「クリスマスパーティーにニンニクたっぷりの餃子を持って行ったのか?」


「はい!」


 かなり……苦しい言い訳。


 クリスマスパーティーに、ニンニク入りの餃子はナイよね。

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