179
「餃子と豚のスペアリブ。本当に作ってくれるんだ」
「うん、恭介の大好物だよね」
「俺も手伝うよ」
「恭介の歓迎会だからいいよ」
「俺の方が類より餃子の皮包むのうまいんじゃけぇ。遠慮せんでいい。俺がやっちゃる」
「あっ、広島弁」
「懐かしいじゃろ?」
「うん。懐かしい……」
久しぶりに聞く広島の方言。昔二人でよく餃子を作った。餃子の皮を包むのは、恭介の方が早くて丁寧。
指先が不器用な私。味に自信はあったけど、包むのは下手だったな。
二人でキッチンに並ぶと、過去にタイムスリップしたみたいに、不思議な感覚に包まれる。
「東京に来る前、広島のbeautiful loungeに仕事で立ち寄った。三上波瑠に逢ってみたかったから」
「波瑠さんに……? 波瑠さん元気だった?」
「気になるのか? いかにもニューヨークから帰国したイケメンって感じで、キラキラしてたな。オーラがハンパない。戦隊ヒーローのビームみたいだった」
「ビームって、それ凄いね。波瑠さん、慣れない街で頑張ってるんだね」
三上の笑顔を思い出し、思わず頬が緩む。
「なに嬉しそうな顔をしてんだよ」
「だって嬉しいよ。波瑠さんにはいっぱい迷惑掛けたから。広島で頑張って欲しい」
「なんか妬けるな。広島にいた方が、類に心配してもらえたのかな」
恭介は餃子を器用に包みながら、寂しそうに呟いた。
「私……ここに来て少し変われたんだ。何をしても自信なくて後ろ向きだった自分が、やっと前を向いて歩けるようになった。だからもう後ろは振り返りたくない」
「敗者復活戦はなしか?」
「……恭介とはいい仲間でありたい」
「そっか」
調理を始めて一時間、餃子とスペアリブの香ばしい匂いが、室内を包み込む。
腹ペコのお腹が、仲良く『ぐぅっ』と音を鳴らした。
ガチャンと玄関のドアが開き、ドカドカと足音がした。
「ただいま、いい匂い。お腹空いたぁ」
「捺希さん、お帰りなさい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます