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「餃子と豚のスペアリブ。本当に作ってくれるんだ」


「うん、恭介の大好物だよね」


「俺も手伝うよ」


「恭介の歓迎会だからいいよ」


「俺の方が類より餃子の皮包むのうまいんじゃけぇ。遠慮せんでいい。俺がやっちゃる」


「あっ、広島弁」


「懐かしいじゃろ?」


「うん。懐かしい……」


 久しぶりに聞く広島の方言。昔二人でよく餃子を作った。餃子の皮を包むのは、恭介の方が早くて丁寧。


 指先が不器用な私。味に自信はあったけど、包むのは下手だったな。


 二人でキッチンに並ぶと、過去にタイムスリップしたみたいに、不思議な感覚に包まれる。


「東京に来る前、広島のbeautiful loungeに仕事で立ち寄った。三上波瑠に逢ってみたかったから」


「波瑠さんに……? 波瑠さん元気だった?」


「気になるのか? いかにもニューヨークから帰国したイケメンって感じで、キラキラしてたな。オーラがハンパない。戦隊ヒーローのビームみたいだった」


「ビームって、それ凄いね。波瑠さん、慣れない街で頑張ってるんだね」


 三上の笑顔を思い出し、思わず頬が緩む。


「なに嬉しそうな顔をしてんだよ」


「だって嬉しいよ。波瑠さんにはいっぱい迷惑掛けたから。広島で頑張って欲しい」


「なんか妬けるな。広島にいた方が、類に心配してもらえたのかな」


 恭介は餃子を器用に包みながら、寂しそうに呟いた。


「私……ここに来て少し変われたんだ。何をしても自信なくて後ろ向きだった自分が、やっと前を向いて歩けるようになった。だからもう後ろは振り返りたくない」


「敗者復活戦はなしか?」


「……恭介とはいい仲間でありたい」


「そっか」


 調理を始めて一時間、餃子とスペアリブの香ばしい匂いが、室内を包み込む。


 腹ペコのお腹が、仲良く『ぐぅっ』と音を鳴らした。


 ガチャンと玄関のドアが開き、ドカドカと足音がした。


「ただいま、いい匂い。お腹空いたぁ」


「捺希さん、お帰りなさい」

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