【16】美男は傍にいて楽しむもの
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「恭介……。ここはシェアハウス。あなたと私は同じ職場で働く仲間。こんなことは……もうしないで」
「類、もう俺を愛していないのか?」
「私達はもう終わったのよ。時計の針を過去に戻すことは出来ない」
「……戻すことが出来ないなら、今からまた始めればいい」
「もう……無理だよ。私、仕事に戻ります。恭介の制服はベッドの上に置いてあります。みんなの前では、敬称をつけて呼ばせてもらいます。出勤は明日からでいいそうです。宜しくお願いします」
「類……」
「今夜シェアハウスで簡単な歓迎会をします。私が料理を準備することになってるから」
「そうか。久しぶりに類の餃子とスペアリブが食べたいな」
「わかりました。用意します」
私は恭介をシェアハウスに残し、店に戻った。
◇
「ただいま戻りました」
「類、松田様のシャンプー宜しく」
「はい」
シャンプー台を用意していると、諸星が私に近付き耳元で囁いた。
「新しいスタッフ、二十三歳だって。美容師の資格があるとはいえ、営業マンだったなんてあまり期待出来ないね」
「捺希さん、そんなことないよ。彼は努力家だし、即戦力にならなくても、きっと皆さんの力にはなれる」
「努力家? 類、彼を知ってるの?」
「えっと、同じ広島出身だし私の勤務していたエステサロンにも商品の受注に見えてたことがあるから」
「そうなんだ。顔見知りだったんだね。あまり美男とは言えないけど、愛嬌のあるタイプだよね。彼みたいなタイプは、今までこの店にはいなかったな」
諸星は可愛い顔をして、言うことはキツいな。確かに恭介は美男ではないし、みんなが美しい白鳥なら、恭介はガチョウだ。
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