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「松田様、お待たせしました。どうぞこちらへ」
私は動揺を隠すために、笑顔を作る。
よりによって元カレと同じ職場で、同じシェアハウスだなんて、これからどう接すればいいのかわからない。
◇
最後のお客様をお見送りし、時刻は午後八時半。恭介の歓迎会の準備をするため、私はみんなより一足先にお店を出る。
近くのスーパーに飛び込み、餃子と豚スペアリブ中華辛味焼きの材料を購入し、シェアハウスに帰宅する。
シェアハウスの住人には不人気だったから、今日の餃子はニンニク抜きにしよう。
シェアハウスに戻ると恭介はリビングでテレビを見ていた。
「ただいま」
「お帰り」
昔、恭介のアパートに通っていた頃を思い出す。一人暮らしだった恭介。エステサロンの仕事を終えた私は、時々アパートに行き夕食を作った。
「類だけ帰宅したのか?」
「うん。歓迎会の幹事だから。ていうか、料理作るだけだけど。すぐに支度するね」
私はキッチンに立ち、スーパーの袋から食材を取り出す。
「冷蔵庫に食材いれる時は、マジックで名前書いてね」
「うん、わかった」
「洗濯も個室の掃除も、各自ですること。今は共有スペースの掃除は私が担当しているから」
「類が? 一人でやらされてるのか?」
「初めはそうだったけど、今は自主的にしてる。みんな仕事忙しいし、私はまだアシスタントだからこれくらいしないとね」
「そうか。類も大変だな。料理も担当してるの?」
「毎日はしてないよ。食事も各自で済ませるルールになってるから。みんなお酒好きだから、恭介もすぐに馴染めると思う」
恭介は立ち上がり、私に近付いた。
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