【14】美男は恋して楽しむもの
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「類、俺のことは心配しなくてもいいよ。beautiful magicを解雇されたとしても、俺は後悔しない。類に自分の気持ちを伝えることが出来たから」
「波瑠さん……」
「類が無事で良かった。類に何かあったなら、俺は……北麹を許さなかっただろう」
あの三上が……
私を抱き締め声を震わせている。
「ごめんなさい。私がいけないの。私が……優柔不断な態度で接したから」
「あとは本部の判断に任せるよ。類、被害届を提出することで、俺とのことが公になっても俺は構わない。北麹の卑劣な行為は法に裁いてもらった方がいい」
三上はそう言うと、私の背中に回した手をほどき立ち上がる。
その背中を見つめ……
追い掛けてはいけないと、自分に言い聞かせた。
北麹のしたことは許せない。
だけど警察に被害届を出し、これ以上私と三上の傷口を広げたくない。
でも……。
一人の女性として、泣き寝入りすることが正義だとは思えなかった。
◇
眠れなくて深夜部屋を出た。リビングに人影を感じ、近付くと香坂だった。
「蓮さん……」
「類か、どうした。眠れないのか」
「はい。蓮さんは……?」
「俺も眠れなくてな」
香坂の目の前にはワイングラス。
「波瑠の言ったことが気になって。俺らしくないな」
三上の言ったこと……?
「類、お前、波瑠の事が好きなのか?」
「……私は」
「答えなくていい。俺には関係のないことだ」
香坂は立ち上がり私に背を向ける。私の心が大きく揺れた。
――俺には関係のないこと。
香坂に拒絶された気がして、心に冷たい風が吹く。
三上も香坂も……
鳴海店長も諸星も……。
キラキラと輝いていたbeautiful magicから、美しい光を奪ったのは……私なんだね。
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