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「類に拒否権はないけどな。店長命令だし」


 香坂が意地悪な笑みを浮かべた。


 殆どメイクなんてしない私。エステティシャンとして働いている店で、メイクの勉強も一通り学んだし、お客様にメイクをして差し上げたこともある。


 でも不評だった。


 お客様をそれなりにメイク出来ても、三人みたいに美しさを引き出すことは出来ない。


 女なのに、男よりも劣る。


 でも、以前の私とは……

 何かがちょっと違う。


 絶対に無理だと思っているのに、もう一度勉強し直してみようかなと、思える。


「僕が教えてあげるよ」


「いや、蓮や捺希は連日残業させているからな。メイクは俺が教える」


 うわ、まさかの鳴海店長!?


 一番……緊張するかも。


 諸星は友達みたいな感じで接することができ、香坂は意地悪な俺様だけど、心の中にあったかいものが見え隠れしている。


 鳴海店長は冷たいイメージで、いまだに近寄りがたい。


「鳴海店長、宜しくお願いします」


 同じ職場で働くからには、素直に教わることも大切なこと。


 知識と技術を吸収するには、甘い環境よりも厳しい環境の方が身につく気がする。


 失敗を恐れては何も出来ない。人は失敗して学ぶんだ。私は今まで失敗するたびに逃げていた。


 後ろ向きの生き方しか出来なかった。


 私が変われたのは……

 鳴海店長や香坂、諸星のお陰……。


 そして……


 三上……。


 三上が帰国した。


 三上が日本にいる。


 逢いたい……。


 純粋に……彼に逢いたいと思うことは……ダメですか?

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