129
◇
「俺達の圧勝だな。そろそろ決めないか?」
「ですよね。高級クラブにします? それとも……」
「ビアガーデンにする?」
七月初旬、仕事を終えシェアハウスにて、香坂と諸星、鳴海店長が何やら盛り上がっている。
「何の話ですか?」
「賭けだよ。俺達の勝ちだな」
賭け!?
まだ、覚えてるの?
確かに未だに店内でお客様に、女性扱いされたことはない。
「夏のボーナスが入ったら、奢ればいいんでしょ」
「類、その前に俺に借金返せよ」
「……っ」
忘れてた。
香坂に十五万弁償し、みんなに奢ると夏のボーナス飛んじゃうよ。
「鳴海店長、このまま補充ないのかな。正直、もうギブアップ寸前だよ」
「そうだな。人事部に交渉してはいるんだが。みんなで乗り切るしかないな」
「厳しいなぁ……。そうだ、波瑠さんが一時帰国してるって噂、知ってます?」
「波瑠さんが帰国してるんですか!?」
「類、あからさまに嬉しい顔しないの」
「捺希さん、私は別に。鳴海店長。波瑠さんbeautiful magicに戻ってくれないかな」
「それは無理だろ。RUSHIANAニューヨーク店店長として、雑誌に大きく掲載されていたからな。店も大盛況らしい」
「流石、波瑠さんですね」
やっぱり……
戻るなんて無理だよね。
「類、メイクの勉強しないか?」
「鳴海店長?」
「本気でヘアメイクアーティストを目指さないか? まずは本格的にメイクの勉強をし、それから美容師の資格を取る」
「私がヘアメイクアーティスト? 無理です。やっとシャンプーが出来るようになったばかりですから」
「お前は女だ。エステティシャンの実績もある。女性の気持ちは、俺達よりも理解出来るはず」
それが出来なかったから、私はエステティシャンをクビになり、商品部に異動になったんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます