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「波瑠さんが行かないなら……。抱いてもいいよ」
「類……」
再び三上の唇が近付く。
唇が触れる寸前、三上から顔を逸らした。
三上の腕から逃れ、花瓶に水を入れ薔薇の花を活けた。
「類……」
「ウソですよ。波瑠さんは私を抱いても、ニューヨークに行くでしょう。だって酔うと忘れちゃうんだから。ニューヨークへ行かないで欲しいと、みんなはきっとそう思ってる。みんなが冷たく突き放したのは、波瑠さんのことを思っているから。波瑠さんだってわかってるはず。……イタイ」
薔薇の棘が人さし指に刺さり、血が滲んだ。
「類、大丈夫か?」
三上が血の滲む指先を、口にくわえた。
「は、波瑠さん……!!」
「ドラキュラになった気分だな」
クスリと笑うと三上は私にキスをした。
紅い薔薇の花がキッチンの床に落ちる……。
赤い花びらが……床に舞った。
三上は私を抱き上げ、キッチンの上に座らせた。そして何度も……何度も……私に唇を重ねた。
「……は……るさん。……っ」
待って……と言いたいのに……。
その言葉を、三上は唇で塞いだ。
情熱的なキス、熱い舌が私の口内を弄ぶ。
甘い水音が鼓膜を刺激し、体が火照り崩れ落ちるように三上に抱き着き、私はそのキスを受け入れた。
もしここが……
シェアハウスでなければ、私の理性なんてとっくに崩壊していただろう。
キッチンの先には……
香坂の部屋のドアがある。
いつドアが開き……
香坂が出てくるか、わからない。
徐々に理性を取り戻した私は、三上の唇を遠ざける。
「類、俺の部屋に来る? それとも……二人でここを抜け出そうか」
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