73

 ドスンと大きな音がし、私は三上の上に倒れる。三上は床に仰向けに倒れ、頭を擦りながらケラケラ笑っている。


 どうやら三上は、笑い上戸のようだ。


「ごめんなさい、波瑠さん大丈夫ですか?」


「あはは、大丈夫、大丈夫。類こそ大丈夫?」


「私は……大丈夫です」


 三上の手が私の背中に回っているため、私は起き上がることが出来ない。


 目と目が合って……

 会話が途切れる。


 三上の顔から笑顔が消えた。


「類、キスでも酔うか試してみる?」


「……ぇっ?」


「アルコールに弱い類。俺のキスでも酔うのかな」


 冗談だよ……ね?


 三上は次の瞬間、私の唇を奪った。


 ほんのり……

 ビールの味がした。


 苦いはずのビールが……

 なぜか甘く感じる。


 目がトロンとしてきた。


 ヤバい……私……酔ってる。


 三上のキスで……

 心も体も酔ってる。


 三上は私に何度もキスを繰り返した。


「ふぇっ……波瑠さん……。どうして私にキスするん?」


「あはは、類、方言が出てるよ。キスでも酔うんだね」


 三上はクスクスと楽しそうに笑ってる。笑い上戸の三上と、泣き上戸の私。


 泣きながら私は、三上の胸の上にバタンと倒れた。


 ◇


「類、いつまで寝てるの。早く起きなよ。襲うよ」


 え、え、襲う!?

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