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「捺希君。今日は時間がないから、カットだけ頼むよ」
「はい畏まりました。今日はどちらへ?」
「今日は九州へ出張でね。新しく福岡に出店することになったんだ」
「相変わらずお忙しいですね」
諸星はすでにハサミを手にし、男性の髪をカットしている。
アップルティー?
あの人が?
中年のおじさんだよ。
しかもちょっと厳つい。
だけど諸星を見る目は、なんか変。
「類、北麹様にゴルフ雑誌を持ってきて」
「はい」
ゴルフ雑誌、ゴルフ雑誌……。
私は本棚に並ぶ雑誌から、ゴルフ雑誌を数冊手に取る。店内の本棚は多種多様だ。まるで本屋みたいだな。
「お待たせしました」
雑誌を両手で差し出す。
次の瞬間、北麹にお尻を触られ、私は手にしていた雑誌を床に落とした。
「きゃあ」
「類、何してるの。北麹様失礼致しました。すぐに違う雑誌をお持ちします」
諸星はカットしていた手を止め、本棚から違う雑誌を手にし、北麹に差し出した。
私は床に落ちた雑誌を拾う。
「申し訳ありませんでした」
「まるで私が何かしたみたいだな。しかも女みたいに悲鳴まであげて。気にくわない」
お尻を触ったじゃない。
セクハラだよ、セクハラ。
「形のいいヒップをしているから、職業柄どこの商品の下着か確かめただけだ。勘違いしないで欲しいな。失敬な」
被害者は私なのに、まるでこっちが悪いみたいだよ。
大体、触っただけで下着のメーカーがわかるはずがない。
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