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「わかった。そうさせてもらう」


 悪びれもせず、シラッとラーメンを啜る香坂に苛立ちすら感じた。


「類」


「あっ、はい」


「珈琲くれる? 類の珈琲美味しいから。お店でね、お客様には珈琲や紅茶をお出しするんだ。鳴海店長、類に任せてもいいよね?」


 三上の言葉に鳴海店長は珈琲を飲みながら、私をチラッと見た。


 意地悪な目付きだな。

 まだ昨日のこと根に持ってるのかな。


 鳴海店長に嫌われてしまった私は、もう何も任せてもらえないかも。


「わかった。ドリンクのサービスは類に任せる」


 意外な答えに、私は拍子抜けする。


「類、頑張って」


 諸星はトーストをかじりながら、可愛い笑顔を私に向けた。


 ◇


 午前八時前、シェアハウスを出た私と諸星は、徒歩でbeautiful magicに向かった。掃除と開店準備だ。


「類、二人きりだね」


 うわ、わ、わ。


 嫌な予感しかしない。


「そーですね。色々教えて下さい」


「色々教えちゃって、いいのかな」


 諸星は大きな瞳をクリクリさせて、私を見ている。


「し、仕事の手順です」


「なんだ仕事の手順? 他の手順も教えあげてもいいけど?」


 諸星はクスクス笑いながら、「冗談だよ」と私の額を小突く。


 beautiful magicの従業員専用入り口の鍵を開けると、室内は花の香りがした。アロマ? 芳香剤?


 美容室には沢山の花が飾られている。生花の香り……。見事だな。


「お花はね、女性の心を最高に癒すんだよ。だから枯らしてはダメ。水やりには注意してね。水を与えすぎても、水を与えなくても、お花は枯れちゃうから。植物は人間と、お、な、じ。愛情で美しい花を咲かせるんだよ」

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