30

「ただいま。わっ、いい匂い」


 諸星がコンビニの袋を片手に帰宅した。三上、香坂も同じようにコンビニの袋持参だ。


 しまった。


 誰にも言ってないから、みんなお弁当を買っている。


 テーブルの上の大皿には大量のスペアリブとギョーザだ。


「お前、見掛けによらず大食いなんだな」


 香坂が嫌みを言いながら、コンビニの袋をテーブルに置いた。香坂の中身はカップ麺だ。洋服は高級なのに、食事はカップ麺ばかり、給料を全部洋服に注ぎ込んでるのかな。


「ただいま、類。料理出来るんだな」


 鳴海店長まで、呆れたような眼差しで私を見ている。鳴海店長の手には何もない。


 鳴海店長は冷蔵庫からビールを取り出した。


 ビールにはもちろん、マジックで鳴海と記入してある。


「あ……の、鳴海店長。実は昨日のお詫びを兼ねて、食事を作りました。良かったらどうぞ」


「類、食費は会社から出ないよ」


「わかってます。これは私から皆さんへ、これからお世話になるご挨拶変わりです」


「わっ、僕達も食べていいの? 嬉しいな」


 諸星は手を洗うと、素手でスペアリブを掴みパクッと口に入れた。


 一瞬眉をピクリとさせ、私を見つめた。


「どうかな?」


「美味しいー! 類、料理上手だね。流石女の子」


「波瑠さんもどうぞ」


 みんなに小皿を配り箸を渡した。


「ありがとう。俺ギョーザ大好物。ビールに合うよね」


 三上は冷蔵庫からビールを取り出し、私に差し出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る