【3】美男は妄想して楽しむもの
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みんなで珈琲を飲んでいると、バンッと大きな音がした。
ドスンドスンと音がし、香坂が室内から出て来た。今にも火を吹きそうな怪獣の登場だ。
私は香坂に、あと十五万弁償しなければいけない。
「今すぐコンビニのATMに行って来ます」
椅子から立ち上がると、三上が私の肩に触れた。
「類、珈琲飲んでから行けば? はいグレープフルーツ、半分あげるよ。ビタミンを取らないと、お肌が荒れるからね」
「波瑠さん……」
「蓮さん、類も反省しているから、弁償は分割にしてあげて」
「分割?」
「そうだよ。類は東京に来たばかり。お金ないよね?」
波瑠さんの優しい言葉に、思わずウルッとする。人の弱味につけ込み、『洋服を脱げ』と言ったケダモノとは大違いだ。
「わかった、分割にすればいいんだろ。これは貸しだ。お前は俺に十五万の借金があるのと同じことだからな」
借金だなんて……。
そんなぁ……。
「お前さ、今まで洗濯したことねぇの?」
「実家だったので、家事は母が全部してくれてたから」
「道理で何でもかんでも洗濯機に突っ込むはずだ。女なんかやめちまえ」
「蓮そのくらいでもういいだろう。今日人事部から連絡がなければ、こちらから問い合わせる。それによって類をどうするか決めるから」
鳴海店長の言葉に、広島に送り返されてしまうと、自分で覚悟する。
朝食は各自が冷蔵庫から食材を取り出し勝手に食べている。三上はフルーツ、諸星は自分でスクランブルエッグを作り、鳴海店長は珈琲だけ。
香坂は朝からお湯を沸かし、カップ麺の蓋を開けお湯を注いだ。
ゴミ屋敷の犯人は香坂だ。
大体、共有スペースに洋服を脱ぎ散らかすからいけないんだよ。
なにも出来ないのは、私だけじゃない。香坂も同じだ。
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