【3】美男は妄想して楽しむもの

23

 みんなで珈琲を飲んでいると、バンッと大きな音がした。


 ドスンドスンと音がし、香坂が室内から出て来た。今にも火を吹きそうな怪獣の登場だ。


 私は香坂に、あと十五万弁償しなければいけない。


「今すぐコンビニのATMに行って来ます」


 椅子から立ち上がると、三上が私の肩に触れた。


「類、珈琲飲んでから行けば? はいグレープフルーツ、半分あげるよ。ビタミンを取らないと、お肌が荒れるからね」


「波瑠さん……」


「蓮さん、類も反省しているから、弁償は分割にしてあげて」


「分割?」


「そうだよ。類は東京に来たばかり。お金ないよね?」


 波瑠さんの優しい言葉に、思わずウルッとする。人の弱味につけ込み、『洋服を脱げ』と言ったケダモノとは大違いだ。


「わかった、分割にすればいいんだろ。これは貸しだ。お前は俺に十五万の借金があるのと同じことだからな」


 借金だなんて……。

 そんなぁ……。


「お前さ、今まで洗濯したことねぇの?」


「実家だったので、家事は母が全部してくれてたから」


「道理で何でもかんでも洗濯機に突っ込むはずだ。女なんかやめちまえ」


「蓮そのくらいでもういいだろう。今日人事部から連絡がなければ、こちらから問い合わせる。それによって類をどうするか決めるから」


 鳴海店長の言葉に、広島に送り返されてしまうと、自分で覚悟する。


 朝食は各自が冷蔵庫から食材を取り出し勝手に食べている。三上はフルーツ、諸星は自分でスクランブルエッグを作り、鳴海店長は珈琲だけ。


 香坂は朝からお湯を沸かし、カップ麺の蓋を開けお湯を注いだ。


 ゴミ屋敷の犯人は香坂だ。


 大体、共有スペースに洋服を脱ぎ散らかすからいけないんだよ。


 なにも出来ないのは、私だけじゃない。香坂も同じだ。

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