幕間その三

▲博愛の色▲


 着実に夢に近付きつつある。

 ここまでは順調と言って良い。


 ただ、五人一組のチーム制は厄介だ。

 いっそのこと個人戦だったら良いのにとどんなに思ったことか。


 どんなに大城さんが優秀であっても、他のチームメイトの実力によって明暗が分かれてしまうわけだから。


 二回戦もヒヤヒヤする展開だった。

 河原さんが、北朝鮮と解答する大失態のおかげで、私が不自然なアシストをする羽目になった。日本政府(外務省)は北朝鮮を国家承認していない。


 辛くも滄女は勝ち残ってくれたが、三回戦以降はどうだろう。この調子なら、三回戦が準決勝になるだろう。


 しかし、ある程度は内部からもビシッと統率してもらわないと。大城さんはリーダーだが、頭脳は著しく秀でているものの、リーダーシップとしてはやや弱いような気がする。カリスマ性も備わってしかりの成績でありながら、良くも悪くも仲が良すぎるのである。結束力はあるが、それはチームメイト全員が同じ方向を向いているときだ。違う方向を向き始めたときに大城さんに取りまとめられるだろうか、不安に思う。


 理由は明確だ。

 河原さんと風岡くん、大城さんと影浦くんは、それぞれ交際しているらしいのだ。それは、和気わき藹々あいあいと賑やかにやることは結構だが、勝負の世界でリーダーシップが求められる場面ではどうかと思う。


 それに、それに付き合わされている五郎くんはどう思うことだろう。彼にとってはこれほど惨めな仕打ちはないことだろう。私が五郎くんの立場なら間違いなく協力を断っているが、五郎くんもお人好しが過ぎる。


 チームワークという言葉が嫌いな私だけど、そのチームワークを逆手に取らせてもらって、滄女の内部統制を日比野くんに託したいと思った。

 決勝で大城さんと対峙する。そして彼女を打ち負かす。いま一度私は私に活を入れた。



●平等の色●


 我ながらなかなか良い企画だったと思う。

 それは、決して順調に滄洋女子高校複合チームが勝ち進んだという結果論ではない。

 それがいかに出来レースっぽくなく演出できたか、というところにかかっている。


 私の腕にかかれば、これくらい赤子の手を捻るが如くやすいことなのだが、それでも自分の予想以上の出来だと、惚れ惚れするほどだ。


 また、桃原千里も、打倒大城優梨に闘志を燃やしており、なかなか良い働きを見せてくれている。

 二回戦では、そのために河原陽花にこっそりアシストするという動きが見られた。また、どうやら日比野五郎と互いに内通しており、滄女を決勝まで勝ち進めようとしているようだ。まあいい。彼女は使えるところまで使わせてもらおう。

 彼女はどうやら、決勝で彼女に勝利し、全国制覇をするという夢があるようだ。残念ながらその夢は、私によって断たれる予定だが。


 決勝戦は、従来どおり三チーム対抗の三つ巴になる予定だが、その舞台は海外のあの地である。

 私にとって貴重な一人の命が断たれた。さん、いや慰霊祭代わりの最高の舞台を、私の勝利で飾らなければいけないのだ。



◆自由の色◆


 辛勝を繰り返している。

 順調と言えば順調だが、なかなか瑛くんを大学に進学させる道は平坦ではない。


 明らかに千里は助け舟を出した。それがどことなく気持ち悪い。

 それに一回戦のRNA塩基配列の謎。


 ここ二年、私は、普通の人が体験し得ない大きな事件に巻き込まれた。

 高校一年生の夏と高校二年生の夏だ。


 そこで何かと、遺伝子やら血液型やらが、事件の根底に潜んでいた。そして今回も塩基配列。これは因縁かと思うくらいに。


 換言すれば、遺伝子やら血液型が絡むと、大事件に巻き込まれるというフラグのような気がしてならない。どこか不吉だ。


 しかし、親の力を借りずに影浦を大学に進学させると、本人に大見得を切った以上、引き下がるわけにはいかなかった。

 もちろん、巻き込んでいる陽花、風岡くん、日比野くんに対しても申し訳が立たない。


 これは邪念だ。邪念は振り払わねばならない。

 どんなに不吉なものに感じても、それを払拭するくらいの勢いを持って、勝利に向かって突進するのみだ。

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