第7話 迷狼

「はぁ……はぁ……」

ヤンに促された後、エメラは息が切れるまで走り続けた。

周りはまだ中流層が住む街。右も左も小綺麗で、エメラとは無縁の景色だった。

「この道を抜ければ……」

そう、貧民街が見えてくる。

そして貧民街にたどり着いた

明らかに様子が変わる景色。汚らしい舗装されていない道。トタン板の建物。

やっとここまで逃げおおせることが出来た。


ヤンに言われた店――酒場は、この貧民街の坂道通りにあるらしい。場違いな標識を見つけ、坂道通りへと進む。

それにして、貧民街とはよく言ったもので、まさに最下層にある街と言った感じを受けた。

「ここも政府がしっかりしてれば貧しくないはずなのに……」

エメラはため息をつく。

目的地はここから五件目の右の酒場、『許しを救う亭』だ。

「ここ……か?」

ただの小屋にしか見えない。一応表札に、許しを請う亭、と書かれてはいるが……。

仕方無い、当たって砕けろだ。エメラは扉を開け、中に入る。


中は酒場らしい感じになっていた。酒瓶が棚に積まれてラジオが流れている。そしてバーテンダーがこちらをチラリと一瞥し、カウンター席へどうぞ、とエメラを促した。

ここは本当にアジトなのか……?

イマイチ信に置けないが、覚悟してバーテンダーに言った。

「狼よ、群れろ。正義の星となれ」

バーテンダーはにやりと笑いこう返した。

「星は未来の灯火なり。さぁ、どうぞこちらへ、同士よ」

バーテンダーはエメラに背を向けて、地下への階段を降りていった。

エメラは勿論同行した。

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