第12話 12

スコーン、バキッ。


あれから1週間。モーリスさんはすっかり体力を回復し、今日は薪割りに勤しんでいる。いや、っていいね。回復が早い。私はその隣で洗濯物を干している。


モーリスさんが、腰を伸ばして、出来上がった薪の山をニンマリしながら見た。


「こう言う生活もいいもんだな。」


私は、ぎょっとした表情をモーリスさんに見せないように我慢した。まさか、辺境のんびりスローなんとかライフとか考えてるんじゃないでしょうね。悪いけど、モモがいるからそんなに薪いらないんだけど。


「この辺に畑とか作って野菜とか育てるのはどうかな?」


いや畑なんて作ったら、やたらめったらイノシシやら鹿がやってくるのよ?それらの動物追っかけて、クマとか魔物が集まってきたらどうすんの。


嬉しそうにあたりを見回すモーリスさんを見たら、頭が痛くなった。向いてないって。


なんて言おうか考えてたら、魔術の練習からモモが帰ってきた。両手に剣と盾を抱えながら。


「ただいま!」


モーリスさんが先に立ち直った。


「お前!一体それをどこで見つけたんだ?」


「モーリスが倒れてた近く。」


「コカトリスのそばまで行ったのか!危ないだろうが!」


「いや、もう移動してたよ。そんなに長く一箇所にいないからね。」


「だからって、勝手に行くな!教えてくれたら俺が行く!何かあったらどうするんだ!」


「大丈夫だよ。コカトリスの避け方ぐらいわかってる。あんまり火が好きじゃないから、火炎を放てば、近寄らないよ。」


「お前の炎でコカトリスが倒せるわけじゃないだろうが!向かってきたらどうする!」


「いや、だから向かってこないって。何そんなに慌ててるの。もう、西の方に移動してたよ。」


「なんでわかる!」


「糞を調べて追いかけた。遠くからだけど位置は確認したよ。」


「・・・・」


モモとモーリスさんの顔を代わり番こに見ていた私は、モーリスさんが怒りのあまり言葉を失った隙に、二人の口論に口を挟むことにした。


「モモ、そもそもなんでそんなもの持って帰ってきたの?」


モモはようやく手に持った盾と剣を地面に置いた。


「ああ、重かった。」


モーリスさんが慌てて剣を手に取り、矯めつ眇めつ刃を調べている。その様子を見ながら、モモが、


「なんでって、コカトリス退治に必要だもん。」


と、言った。


今度は私も 言葉を無くした。

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