第24話:穢れなき光のテイルウェイ
「れえざあ?」
「今の光線だよ! なんだあれ!」
「ああ、今のか! ちょっとした隠し芸っていうか権能っていうか。ハハハ」
「いやいやいや」
今まで雄太が見た中で一番攻撃的な権能だ。とてもではないが、隠し芸なんて枠に収まるものではない。
穢れなき光のテイルウェイ。確かそう名乗っていたが、そこから権能の内容が全く想像がつかない。
てっきり光合成とかそういう類のものだと思っていたのだが……この様子だと、もっと危ない邪神なのかもしれない。
「……一応聞くけど、何を司ってるんだ?」
「うーん。ざっくり言うなら光かな?」
「そりゃそうだろうけどさ」
光。今のレーザーはまさしく「光」だろう。
だが、テイルウェイの名乗りである「穢れなき光」という辺りが分からない。
穢れなき、という辺りは綺麗とかそういう意味にも聞こえるが、日光消毒とかそういう……いや、もっと単純に布団を干す時のような、そんな風な権能があるという意味だろうか?
そう考えると先程のレーザーについてはまさに隠し芸、「光神」としての側面と考える事も出来る。
「……詳しく教える気、ある?」
「ないかなあ。ユータが暴くのは構わないよ?」
全く変わらない様子でニコニコと笑うテイルウェイに、雄太はむうと唸る。
「じゃあ、聞くけど。この森一撃で消し飛ばしたり出来る?」
「んー」
その質問にテイルウェイは森をチラリと見て考えるような仕草を見せた後に、「そうだなあ」と呟く。
「その後の事を何も考えなくていいなら出来ると思うよ?」
「その後の事って」
「うん。ちょーっと何百年単位とかで環境が狂うかなあって程度の話なんだけど」
あんまりやりたくはないかなあ、と照れたように笑うテイルウェイに、雄太の中の嫌な予感が加速する。
「えーと……もしかして、電気っていうか電撃っていうか……そんな感じの事、出来る?」
「出来るよ」
「生物に影響及ぼしたりする呪いみたいな技とか」
「好きじゃないけど、やろうと思えば出来るかな」
ここまでの情報を整理しながら、雄太は一つの結論をまとめ始める。
ひょっとすると、というか。ほぼ確実にアレ、というか。
「……ヤバすぎるだろ、それは」
「よく言われるけど。何? もしかして今の問答だけで分かったの?」
「分かったっていうか何となく知ってるっていうか」
地球であれば恐れられながらも、ほとんど全ての人間がその恩恵に預かっているものだ。
「あ、でも僕、乾かしたりするのも得意だよ?」
「生き物を、じゃないよな……?」
「やれって言われれば出来ると思うけど」
たぶん。そう、恐らくだが。
テイルウェイはまず、光神で間違いない。
細かい分類としては、太陽神とかそういうのもあるかもしれない。
だが、先程の話を聞く限りでは……どうやら原子力を含む発電やエネルギー変換関連の能力も司っているとしか思えない。
穢れなき光というのは色々な解釈を含むが、そういった文明の光を示してもいると考えて問題なさそうだ。
「……たぶんだけど、テイルウェイって文明とか……なんていうのかな。そういう技術発展の神なんじゃないのか? 勿論、光の神でもあるんだろうけど」
雄太がそう言うと……テイルウェイは笑顔ではなく、真顔でその言葉を聞いていた。
「技術発展の神か、なるほど。そういう解釈もあるんだね」
何度か納得するようにテイルウェイは頷くが、やがて腕を組み「うーん」と唸り始める。
「間違ってはないと思うんだけど、違う気もするなあ……僕はどっちかというと生産的な方面はあんまり得意じゃないし」
「でも、出来るんだろ?」
「うーん……」
テイルウェイはしばらく唸ると、雄太をチラリと見る。
「君もさっきヤバすぎるって言ったけどさ」
「ん? まあ、ああ」
「実際、僕の権能はヤバいんだよ。君はさっき技術発展の神って言ったけど、その先に破壊的なモノを感じたんだろう?」
それは否定できない。レーザーだけではない。核爆弾、あるいは原子力の便利さの裏に潜む様々な危険性は雄太もよく知っている。
勿論この世界にウランの類が眠っているかなど分からないが……。
「分かりやすく言えば、僕は大量に人を殺す事に向いている。悪神なんて呼ばれている連中に並ぶ程にヤバい神なんだよ」
「……だろうな」
テイルウェイがその気になれば、世界を壊す事だって容易いのかもしれないと……雄太は、そう思う。
「それを踏まえた上で聞くけどユータ、君は僕をどう思う?」
「どうって……「凄いな」って感じか、な」
雄太がそう答えれば、テイルウェイは呆気にとられたような表情になる。
「え、いや。もっと感想があるだろ?」
「感想って。そんな事言ったらベルフラットはゾンビ作れるみたいだし。フェルフェトゥもなんか隠し持ってそうだし。神様ってそんなもんじゃないのか?」
そう、確かに核の力はヤバい。だが、同じくらいに魔法の力だってヤバいのだ。
死んでるものを蘇らせたりなんて出来る所を見ると、マジカルなアトミックパワーなんて単純に「ヤバい」の範疇ですむものだ。
「確かにヤバいよ。俺じゃ絶対敵わない事は分かる。でもまあ……そんなの、今に始まった事じゃないしな」
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