魔法.exe
『そもそも、なぜ翔ちゃんが魔法を使えるようになったと思います?』
「いや、それは⋯⋯」
俺はその理由を言おうとしたが、止めた。自分が思っていたのがちゃんとした理由ではなかったからだ。
いや、だってさ、全身を隈なく昭子に触られたら魔法が使えるようになったとか、狂人の妄言じゃん。ぜんぜん理由として相応しくないよ。
『では、ママから理由を説明しますね』
「ママは止めろ」
『⋯⋯翔ちゃんのナノマシンに《魔法.exe》をインストールしたからです』
⋯⋯?
?????
?? ?? ?? ?? ?? ??
??? ??? ??? ???
「いや、どういうことだよ。魔法ってナノマシンにソフトウェア入れれば使えるような物なの?」
『その通りですね』
「???」
『混乱してます?』
いや、混乱しない方がおかしいだろ。
何その《魔法.exe》って。そんなシステマチックな感じで魔法が実行できるもんなの? 魔法って科学で説明つかず、とてもスピリチュアルな感じで起こる現象ではないの?
「というか、どっから《魔法.exe》を引っ張ってきたんだよ? インターネット無いんだろ?」
『では、順番に説明していきましょうか』
まず、《魔法.exe》をどこから引っ張ってきたかは、あの蝙蝠熊です。
翔ちゃんがあの蝙蝠熊に襲われた時、体が動かなくなったですよね?
あれが魔法です。【パラライズ】という状態異常タグが翔ちゃんのナノマシンに付いていました。
そうなんですよ。想定ですが、あの熊に襲われた時に《魔法.exe》がインストールされていました。
私が翔ちゃんの首元を触り、ナノマシンにアクセスしてタグを外して動けるようにしたのです。
「⋯⋯いや、おかしいだろ。ファイアーウォール突破されてんじゃん」
『突破されてますねー。ナノマシン動作ログを確認してみましたが、
ナゼ? ちゃんとパスはデフォルトじゃなくて、ちゃんと変えているぞ。OSのカーネルやセキュリティーもちゃんと安定板をインストしているし⋯⋯。
⋯⋯なんか深く考えると頭が色々とおかしくなりそうなので考えないという結論に至った。
という事で続きを昭子に勧める。
『ただ、首元のナノマシンしか《魔法.exe》がインストールされていませんでした。詳しい事は分かりませんが《魔法.exe》は全身のナノマシンにインストールしなくては正常に動作しないと
「いや手動にする意味ある?」
俺の体内で動作しているナノマシン《とっても健康君Mark-2534》は一つのナノマシンに管理者権限で
ともかく、別に全身に埋め込まれているナノマシンに、一々アプリをインストールする必要はないはずだ。
『⋯⋯』
「何か言えよ」
『⋯⋯インターネットにアクセス出来ないため、その機能は気が付きませんでしたねー』
「いや、ナノマシンの
『ああー何も聞こえません私にはー』
「うわ、こいつ非合理な事を始めたぞ」
というか、これもしかしてヤバくない? アンドロイドに自我はあるかもしれないが、それにしたって自身に都合の悪い事を隠し始めるとか、廃棄処分されてもおかしくないぞ?
『⋯⋯ぜ、全身を確認するには必要でしたから! ほら、介護対象に何かあった時を考えると、体全身を元から知っておくべきだと――!』
「あ、うんそれで良いよ」
俺は深く考えないことにした。
◇◆◇◆◇
「それで結局、どうすればちゃんとした詠唱が出来そうなんだ? もうあんな詠唱は嫌だぞ」
《なんか火が出てくれお願いだ頼む、故郷に病気の妹がそこそこの威力で飛んでいる火を見たいって言っているんだ! 本当に頼む!!》
これ本当にダサいというか、詠唱ではないと思っているので何とかしたい。
『《魔法.exe》によって何故、魔法が発動するのかはさっぱり分かりません。翔ちゃんのナノマシン 《とっても健康君Mark-2534》には火炎を出せるようにする機能はないですし、そもそも状態異常タグなんて存在しません。
しかし、《魔法.exe》の動作は単純で、
ですが、その
「それで?」
『なら、そのコマンドを《魔法.exe》から探り当てれば良い。つまり《魔法.exe》をリバースエンジリアリングを行えばいいのです』
「出来んの?」
『翔ちゃんは出来る?』
「できるか。exeファイルって機械語で書かれているんだろ? 人間の俺に分かるはずないだろ」
『私はインターネットに繋げられたら、いけたかもしれませんねー』
え、じゃあリバースエンジリアリングが出来ないってことは、
「俺はあの詠唱しか出来ないってことか?」
『そうなりますねー』
俺はふて寝した。つらい。
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