07
「神さま、神さま。」
「どうしたの阿久津君」
「暇なんですけど、どうしたらいいでしょう」
「暇なのですか?」
「そうです」
天国で数年暮らしている間、僕は暇だった。自分が殺されてから数年が経ち、頭の中を通り過ぎる疑問の数は徐々に減り続け、もう早くなんでもいいから答えあわせがしたかった。
また、それよりも、天国という場所はどこまでも暇だった。思い通りの事が出来る場所であると同時に、出来てしまうからこそ全ての物事がつまらなさ思えてしまった。
天国にいる間はそれまでに亡くなった多くの作り手達が沢山の新作を生み出している場所でもあったので、最初は興奮した映画ばかり見ていたけど、流石に毎日は飽きてしまう。
様々な高さの山も波の高い海も低い海もあるため、大抵のレジャーはすることができたが、元からそこまで身体を動かす事は好きではないのでこれもいつのまにかやめてしまった。
あらゆるスポーツをすることもできたけど、スポーツも元からそこまで好きではないので、熱中している時は楽しいが、覚めてしまったらどんなスポーツも面白くなかった。
「阿久津君は飽き性なのね」
神さまは僕にあまりいい思いを持っていないようだった。でもそう思っているのは確かだ。
「あとは、多分友達がいないのもあると思います。ここでできた友達は沢山いるけど、やっぱり昔の友達と遊んだ方が楽しい」
僕は20歳で死んだ。だから、まだみんな生きているのだ。それにみんなはきっと、沢山遊んでいるに違いない。今頃楽しいキャンパスライフを過ごして大人になり、仕事をして家庭を持ち、子供を産み育てる内に老後を迎え、ここにやってくるはずだ。
その人生とここで全て終わりを迎えた後の世界で、毎日を過ごす事を考えただけで、全てがつまらなくなるのは必然だ。
「じゃあ何? 生き返してくれってこと?」
「平たくいうとそうです。僕はあきた」
「阿久津君は殺されてここにきたわけ。その理由を神さまである私もよく知らない。...こんな事珍しいのよ。でも、偶にない訳でもないの」
神さまは考え込むようなそぶりを見せる。しかし、その目は僕を生き返させないような色をしていた。
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