第4話

「はぁーあ」


 私は綾人がいないので一番後ろの席に座っている。朝は綾人に色々仕返ししたつもりだけど、また構って欲しいな。


「真奈美ちゃん、聞きたいことがあるんだけど」


 綾人の席に座る私のもとに同じクラスの女子が寄ってきた。一人はポニーテールの似合う可愛い子、もう一人はショートボブの子。


「何?」


「橘君と仲良いよね。橘君って付き合っている人いるの?」


「え!」


 幼馴染の私でもあまり話さない話題。お互い話さないからいないと思うけど、正直わからない。本人に聞きたいが今はどこかに行っている。いつもなら売店でパンを買って帰ってくるのに・・・。


「真奈美ちゃんは噂のこと知っている?」


「噂?」


 二人は顔を合わせてから私の方を向き直した。


「最近橘君と一年生の女の子が仲良く話しているんだって。もしかしたら出来ているのではって噂なんだけど・・・」


「いつから!」


 椅子から立ち上がって体を乗り出した。クラスメイトは二人とも驚いた顔をしていた。そんななか、ポニーテールの子が答えた。


「えっと・・・ここ二週間ぐらい前かな?」


「だと思うよ」


 ショートボブの子も頷いた。私は無意識のうちにポケットからスマホを出して綾人にラインを送ってもいた。


(綾人、話がある早く帰って来て!)


「今綾人君に送ったの?」


 私が送信し終えたタイミングでショートボブの子が確認のためか聞いてきた。


「そうだよ。その一年生の子ってなんて言うの?」


「確か・・・結城さんだったと思うよ」


 結城?聞いたことないな・・・って私一年生と接点ないじゃん!それは知らないよね、当たり前だよね。どんな子なんだろう?気になる。




「綾人遅いな」


 二人が去ってから十分が経過した。未だにラインのメールは未読のまま。送ったのはそれよりも前。


 綾人のことは小さい頃から知っている。そんな綾人がメール無視をしたことは一度もなかった。


 綾人の席から一番近いドアをずっと眺めていると、綾人は学校のチャイムがなり終えてから教室に顔を出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る