セミ

勝利だギューちゃん

第1話

ツクツクホウシが鳴いている。


セミは種類によって、鳴く時期が違う。

おそらくは、気温により、判断しているのだろう。


ツクツクホウシが鳴くのは、たいてい立秋を過ぎた後。

猛暑が厳しい昨今だが、秋も近いのかもしれない・・・


「ねえ、あのセミつかまえて」

「いいよ。はい」

「ありがとう。鳴かないね、このセミ」

「メスだからね」

「わかるの?」

「ああ」


あらゆる生物は、オスのほうからプロポーズをする。

そして、メスはよりより子孫を残す為に、強いオスを選ぶ。


でも、そのオスもメスには、敵わない。


女性からもアプローチするのは、人間だけかもしれない。


まあ、楽でいいのだが・・・


僕には、不思議な力がある。

あらゆる生物の言葉がわかる。

当然、虫も例外ではない・・・


「うるさくて、ごめんな」

ミンミンン鳴いている、セミが言う。

「いや、いいさ。今だけだし・・・」

「ありがとよ」

完全に打ち解けている。


「土の中はどうだった?」

「ああ、楽しかったよ」

「外の世界はどうだ?」

「つまらん」

「贅沢だな・・・」

「お前らが言うか・・・」


喧嘩も御愛嬌。


「かわいいメスは、見つかったか?」

「いや、まだいない」

「みんな同じに見えるが?」

「俺たちセミには、区別がつくよ」

「そうなのか・・・」


セミは交尾の時に、ハート型になる。


「なあ・・・」

「どうした?」

「お前ら、セミはどのくらい生きるんだ?」

「さあな。人間と同じで、運命なんてわからん」

「その方がいいかもな・・・」


悟っている。


「じゃあ、俺、行くわ」

「ああ、いいメス見つけろよ」

「お前も、彼女見つけろ」

「余計なお世話だ」


飛び立っていった・・・


「じゃあな・・・俺が生きていたら、最後に会いに来るわ」

「嫁さん、連れてくるのか?」

「ああ。でも横取りするなよ」

「するか!」


あらゆる生物と、こういう会話をしているので、退屈はしない。


さてと・・・

アキアカネが下りてくる頃だな・・・


歓迎しないと・・・

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セミ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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