言葉を失う

HaやCa

第1話

毎日が走るようにすぎて、いつしかわたしは大人になっていた。


それが悲しいわけではないけど、すこし遠い気がした。


町に落ちる日の光、ありきたりな自分が欠片のように感じる。


 こどものころ、苦手だった野菜も、好きだった彼氏の名前も、もう覚えてない。


 救いたい気持ちは変わらないのに、何を、何のためにか、思い出せない。


 私を遠ざける茜色の直線は、目下、水平線の彼方まで続いている。


 何を隠そう、いや、本当は隠していたい。


 浅く焦げた鈍色のハートを、追いかけた。

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言葉を失う HaやCa @aiueoaiueo0098

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