第3話 勇者拘束される。

「とりあえず、今日はここの森の先まで行こうぜ。」


「ひゃ、ひゃい。」


なんとか理解者を手に入れ、ほかの勇者たちと同じスタートに並べたマモル。今は初心者向けの低級モンスターがいる森を通っている最中だ。


「ってかここスライムしかいないのな。正直飛び越えるだけでいいって言うか、潰しちゃうのも可哀想なくらいだし。」


「確かに、そうですね…。マモルさんがステータス元からカンストしてるのもあると思いますけど。」


スライムは物理で倒すと武器までネチョネチョする。魔法でも一応倒せるがステータスがカンストしているマモルが使えば、この森くらいなら余裕で消失してしまうだろう。無駄な犠牲は避けたい。結局有効な手立てはスライムを飛び越えることだった。一応あの後、追いかけてきた使者から首席卒業の印のなんかすごそうな剣も貰ったのでそれを使ってみたい所ではあるが、ネチョネチョになってしまうのはごめんだ。


「あっ!マモルさん!根っこ!」


「ん?ああっ!!」


調子に乗ってスライムを二連続で飛び越えたらその先が木の根っこだった。そのまま足を取られ転ぶ。


「うう、ダサすぎ。っと…へ?」


木の根っこはそのままマモルの足を捉え離さない。グルグルと根っこは伸びていきマモルを拘束していく。剣はほっぽり投げられ、力も使えないマモルをどんどん動けなくしていく。


「マモルさん!それ、毒樹じゃないですか?なんで中級モンスターがここに。」


「うわ!まじかよっあっ、やめろって!ああっ、あっ。」


宙に浮かせられマモルへの攻撃がだんだん際どくなってくる。マモルの表情も同じくだ。アルマはなんだかいたたまれなくなり顔を背ける。


「…ステータス、間違ってないのかもしれませんね。」


「は?何か言ったか?助けろよ!」


「はっはいー!」


根っこの先がマモルの背中を引っ掻く。ステータス画面が赤くピコンピコンと光る。毒樹は末端から相手に毒を注入する。マモルは根から毒を受けたらしい。


「うっ…。アルマ、はやく…?」


アルマはマモルの様子を見てそのまま立ち尽くしている。焦点が合っておらず、毒を回復する様子もない。


「アルマ、おいっ!あうっ!」


HPカンストといえど受ける痛みは同じ。ずっとこの状況は避けたいが一向にアルマは動かない。よくよく見てみれば焦点が合っていないというより、恍惚とした表情でマモルを見つめている。


「…こう見ると、素敵ですね。マモルさん。」


「はぁ?んんっ何変なこと言ってんだよ!おま、ああっ僧侶だろ!」


木の根が口内にまで侵入してくる。


「ようやくわかりました。ノソフィリアのこと。私その…マモルさんが毒状態になってるの、すごくそそられます。やばい、です。ふふふ、マモルさん可愛い。」


手を組んで口をぱくぱくさせているアルマを見てマモルは内心ため息をつく。ノソフィリア、かなり厄介だ。というかヒーラーの意味が全くもってない。まあ彼女を選んだのは自分だ。しょうがないがここはアルマにバリアを張って魔法を使うしか…


「時に少年よ、君は拘束願望でもあるのかね?」


その声とともに毒樹の拘束は解け、マモルは地面に叩き落とされる。気づけばステータス画面の赤い表示も消え、毒状態は治っていた。


「…っ痛え。」


「すまない少年。ケガはないか?」


マモルの目の前には濃い紫のローブがあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る