とある音屋の業界サバイバル

とある音屋

第1話 特殊な現場 パチスロ編

某、サウンドクリエイターとして身を立てて約20年

いろんなものの音楽を作ってきました。

アイドル、、声優、、バンド、、アニメ、、CM、、などなど

そんな中でも


特殊だな! と思った業界が


パチンコ・パチスロの音楽制作!


わたくしがパチスロ業界の音楽を作っていたのは

今から5年ほど前まで。


この辺を説明する為にちょっとわたくしの業界遍歴を。


20歳そこそこの頃にとある作家事務所(作曲家が所属する事務所)

に入り、その後移籍を何度かしつつ現在はフリーランスに、という感じ。


超ざっくりだけどこの辺はまたどこかで。


パチスロの音楽の特殊性は何と言っても


「実績を口外してはならない」


というところ。


最初聞いた時は

「え?」

って感じでしたけど

確かにツイッターなどの作家さんのプロフィールに

パチスロの音楽やってますと書いてあるのは見たことあるけど

「北斗の拳」やってました!とか

そういう具体的なタイトルって見たことない。


そしてこれは個人でなく制作会社ですら同じで

試しに

「パチンコ 音楽制作」で検索して

一番上に出てきた会社の実績のページを見てみると。。。


http://rock-field.com/yuugiki/


こんな感じで具体的なタイトルどころかメーカーすら書いてない!


同じ会社のJ-POP実績を見ればその差は一目瞭然。


http://rock-field.com/j-pop/


他のとこを見てみても


メーカーA社の遊戯台の音楽を担当しました。


とかで全然具体的に実績を書いていない。


これ

「パチンコ音楽制作業界の不問律」

らしいです。


なんでこうなってるんですか?

と先輩に聞いたんですが

はっきりとした理由はわからないらしくって

莫大な制作費をかけた遊戯台を他会社(音楽制作)が実績として

宣伝するのは如何なものか説や

売れた遊戯台のクリエイターや会社を隠したい(独占したい、引き抜きを防止したい)などじゃない?と先輩は言ってました。


もひとつ特殊なとことして

これは音楽に直接関係するわけじゃないけど


最終的に

「警察のチェックが入る」

という部分。


 パチンコは法令で度々規制が入るので

完成した遊戯台は射幸性やギャンブル性がその規制に引っかからないかどうか

最後、警察のチェックが入るらしいんですね。


これも他の音楽制作の現場では聞くことがないフレーズなので

びっくりでした。


最終的な締め切りを絶対伸ばせない理由が

「警察の審査期間があるから」

ですからね!!


それは締め切り伸ばせないなーと納得。


さてさて

そんなパチンコの音楽ですが

私が制作をするようになったのは単純に

「食べていくため」でした。


 もともとはJ−POPやアニメ、映画などの音楽を作りたい!

と思い所属した事務所だったんですが

最初はなかなか仕事はなくってそっちじゃ食べていけない。


そんな時に事務所から手伝わないかと言われたのか

パチンコの音楽制作だったんです。


 実はパチンコの音楽って

「パチンコの音楽制作やってます!」

と書いてない事務所にも普通に仕事がやってくるみたいで

(というか作家マネジメントさんがとってきてた?)

実績にはならないけど、まとまったお金になるので

若手たちにパチンコの仕事が回ってくる、という構造になってました。


どれくらいもらえるかっていうと

年間で5台くらいのタイトルに関わってれば

食べていけるくらいお金もらえました。


BGMで100曲いかないくらい

SEは数えれないくらいたくさんw


BGMは長くても60-90秒

短ければ10秒以下もありますが

演出によっては5分以上かつ、絵にぴったり合わせる必要があったりで

重さは様々ですがグロスでいくら、でお金をもらっていたため

1曲がいくらなのかははっきりは知らないです。


 マネジメントさんに聞いた所、曲の長さで額は違うらしく(当然だけど

そこは分量を計算して作家にギャラを支払ってたそうなので

他事務所などではちゃんと明細もらってグロスじゃなくもらってる場合もあるかも。


SEは作るのはそんなに難しくない割に単価が高いらしかったので

SEのが儲けは良いです。(激しくつまらなかったけどw


ちなみに私

パチンコは一切やったことなく

お店に入ったこともないズブの素人でした。


 パチンコには普通のゲームと違って

特殊な演出がたくさんあって(確変とかね

当たりの期待値にもいろんなパターンがあり

それによって曲も変えていくわけなんですが

この辺の心理が素人にはわかりません。


この辺の作法みたいなのを先輩やマネジメントさんに教えてもらいながら

やってましたが、この制作上での特殊性が


パチンコ音楽制作は初心者お断り!


というハードルを作っております。


制作会社ではまず経験者しかとってくれないと思います。


 とまあなんだかんだで10年くらい制作には関わっていましたが

途中から本来やりたかった仕事もできるようになってきて

ヘルプだったり空いてる時間でお手伝い、という関わり方が多くなって

5年ほど前くらいからは一切やらなくなりました。


 今はパチンコ業界のことはニュースで見聞きするくらいですが

今後、行政次第ではなくなってしまう?かもしれない業界ですが

音楽制作会社的にはスマホゲー、ソシャゲーの台頭にとって

そちら側も受けることで仕事としては成り立っていきそうな感じはあります。


BGMを作りたい人はアニメやドラマ、映画の劇伴はハードルがめちゃ高いので

パチスロ、ソシャゲ系の制作会社を狙うのもありかも?


次回は実務的なとこ。パチンコの音楽作りの特殊性について書こうかな!



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