蘇る記憶

勝利だギューちゃん

第1話

小さい頃、隣に仲のいい女の子が住んでいた。

確か、フランス人とのハーフだった。


まだ5歳くらいの年頃・・・

男女の意識なく遊んでいた。


まあ、兄弟姉妹のいない僕には、妹みたいなものだった。

「私の方が、誕生日が早いんだから、お姉さんよ」

いつも、言っていた。


しかし、フランス語は全く話せなかった。

まあ、日本生まれで日本育ちなので、その必要はないためだろう。


「わたしと、きみがけっこんしたら、うまれてくるこは、クォーターだね」

「そうなると、いいね」


もちろん、その気はない。

小さいながらの、社交辞令だろう・・・


しかし、この時が永遠に続くはずもなく、彼女は7歳の頃に帰国した。

いや、フランスへ引っ越しをしたというのが、正しいだろう。


そして、我が家も、引っ越しをした・・・

国内だが、かなり離れている・・・


そして、数十年・・・


フィクションの世界なら、劇的な再会なんてこともあるのだが、

現実には、そんなドラマチックな事は、起こらない。


もう、彼女の容姿はもちろん、名前すら覚えていない。

アルバムもない・・・

情けない限りだ。


ただ、述べたように。

「わたしのほうが、おねえさん」

これだけは、強く残っている。


「ねえ、かあさん」

「どうしたの?」

「小さい頃、隣にフランス人の女の子がいたよね?」

「ああ、フランちゃんのこと?」

「フランちゃんていうんだ・・・」

母さんは、驚いてた・・・


「あんた、覚えてないの?」

「ガキのころだぜ・・・」

「確かにね・・・フフフ」

なんだ?この何かを企んでいるような笑いは?


まっ、いいや・・・

そして、部屋にこもった・・・


「フランちゃんか・・・名前だけでも、思い出せてよかった・・・」

目を閉じる。

やはり、顔は思い浮かばない・・・


「フランちゃんか・・・会いたいな・・・

なーんてね・・・」


「呼んだ?」

目を開ける。


「ハーイ、久しぶりだね。秀くん」

「ふ・・・フランちゃん?」


懐かしい?顔がそこにいた・・・


「ようやく、思い出してくれたね。待ってたよ」

「どうしてここに?まさか、幽霊?」

「失礼ね。ちゃんと生きてるわよ」

足を見せる。


いえ、そういう問題では・・・


「秀、いい?あっ、フランちゃん、もう来てたんだ」

「はい。お久しぶりです。お母さん。相変わらずお奇麗で・・・」

「すっかり、おばさんよ」

「いえ、お奇麗です」


そういや、実の母娘のように、仲が良かったな・・・

だんだんと、思い出して来た・・・


「秀、改めて紹介するね」

「何?母さん・・・」

嫌な予感しかしないが・・・


≪あんたの、フィアンセの、フラン藤田さんだよ≫

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蘇る記憶 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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