才無き強者②

 そんなこんな、クルナという少女を仲間に加え、本腰いれて妹探しに乗り出そうと

  思ったのだが、俺が戦闘経験無し。その状態でいきなり広大な世界に挑む。

  なんて馬鹿な真似はしない。なるべく堅実に行きたい、そう思う。


 だもので、クルナと二人で簡単な討伐クエストを受けようと、

  街のギルドへと足を運ぶ。


 木製の扉を開けると、中は薄暗く、木製のテーブルが乱雑に設置されており、

  そこにある椅子には、いかにも恐持て、歴戦の強者といった男達や、

  いかにも怪しい姉さんなどが座り、

  酒を吞んでいたり情報を交わし、賑わっていた。


 …何か。入った瞬間、視線が気になるんだが。


  「なぁ、クルナ。俺の気のせいか? 何か視線が…」

  「それは当然シノブお兄様。

    その背にある業物の輝きに皆、目を奪われていますのですぞ」

  「そんなすげぇのこれ…」

  「このクルナには良く判るですぞ。多くの血を啜り、

    数多死線で暴れに暴れた伝説級の一振りであると」


 言い方が何か魔剣くさいんだが…。ま、まぁ、なるべく気にせずカウンターへ。

  クルナによれば、カウンターの店主、リーアという金髪美女の姉さんから

  依頼を頂戴出来ると。 だものでカウンターへ行き、椅子に座る。


  「あら、見ない顔ねボウヤ。…新参者にしては、凄いモノ背負ってるわね」

  「えー…。皆なんでそんなの判るの」

  「ま、長年の勘と、その剣のバランスかなぁ…。

    何より、余り見ない形状で、美しさすら感じるわ」


 ん? 美術品としての価値が高かったかな? 日本刀。

   んでも名刀ならば、現代のでも鉄兜を割ったような。


  「と、ボウヤの相棒に見蕩れていても仕方ないわね。

    お仕事をお探しかしら?」

  「あ、はい。 シノブと言いますが、こっちのクルナと二人でいけるような

    仕事を回して欲しいのですが…」


 そういうと、俺とクルナを見ると、暫く黙り込み、三枚の紙をカウンターに出す。


  「それなら、これはいかがかしら?

    紹介料として、報酬の5%を先に頂くけれど…」


  ・クロータス河に棲む魔獣、タイラントダイル討伐

  ・セキア高原の暴れ者、アイアンゴーレム討伐

  

  …。


  「あの、何か、凄そうな名前のが二つ並んでますが…、

    俺、初心者なんです。出来たらスライムとかそのあたりで…」

  「スライム? ボウヤ正気かしら? 国滅級魔獣よそれ…」

  「シノブお兄様。スライムは物理無効と魔法無効をどちらか一つ、

   転換というスキルで使い分け、自己増殖で増え続ける化物ですぞ」

  「まじか…踏み潰して終わりとかそんなのじゃないんかよ…」


 なんたるワールドギャップ。雑魚おぶ雑魚が、最強クラスの化物かよ。

  ど、どうしよ。これどっちもえぐそうなんだが。

  タイラントは暴君、それにダイル。クロコダイル…鰐の暴君。

  アイアンゴーレムに到っては硬すぎるだろう。


  「それならばアイアンゴーレムが宜しいですぞ。120%勝てるですぞ!」

  「まじ?」

  「あら、初心者殺しの名を冠する強敵なのよ? クルナちゃん?」

  「だからこそです。シノブお兄様にはピッタリです。

    何を隠そうこのお方こそ、

    名も無き英雄、魔王殺しの少女のお兄様なのでべぶぶぶ」

  「ストーップ!! それ言うなクルナぁぁっ!」


 慌ててクルナの口を塞ぐが…店主のリーアの耳には届いてしまったらしい。

  疑わしそうに俺をジロジロと…。


  「確かに、髪の色も同じだし、似たような服を着ているわね。

    もし、それが本当なら彼女の行方はしらないのかしら?」

  「あ、すみません。俺も、探している所なんです」

  「あら、兄妹喧嘩でもしたのかしら?」

  「いえその…置いて行かれちゃって…」


 …よしよしされてしまった。慰められる程に落ち込んでねぇから。

  むしろ探し出してケツ百叩きにしてやる気満々だから。


 ま、まぁ。何かリーアに気に入られたようで、二人してご飯をご馳走になり、

  翌朝、街から出てすぐに見えるセキア高原へと足を運ぶ事になる。

  


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