オーバーロード セバスの短編集
きりんじ
夏の番外編 夏の日のセバス
夏の終わりは、暑い日差しと共に昔の記憶を連れてくる_____
セバスは人間が書いたとある小説を読んでいた。
本の内容は「鬼と人間の恋物語」である
男の鬼と人間の女性が恋に落ちて、人間が先に亡くなってしまって鬼は悲しむというお話である。
「ふむ、やはり人間の方が先に亡くなると残された鬼は辛そうですね・・人間の想像力には驚かされますね・・・」
何ページか読むうちにセバスはマジックアイテムを使って読んでいるので、魔力の減少と共に眠くなってきた。
_______いつだったかもう忘れたけれど、あの笑顔の君に会いたいな・・・
今ではすっかり知っている人間もいなくなって、世代交代が何度も行われた。
人間はどうして80年ほどしか生きないんだろう。
自分は見た目だけなら若いけれど、鬼だからかなり長く生きる種族である。
雨が降っても、「相合傘です!」
晴れたら、「一緒にピクニックしましょ!」と
どんな時でも自分に明るく声を掛けてくれた君はもういない。
小さな体で嬉しさを表現する君に対して、最初は戸惑いも感じていたけれど今ではとても愛おしいという言葉が適当であるだろう。
心は揺れる。
もともと鬼には無いはずの感情が揺れる。
君がいつか死ぬことなんて、あの時受け入れたつもりなのに。
毎年夏の終わりになると、どうしても思い出してしまう。
いつも触ってしまうと壊れてしまうような気がして、頭を撫でたりするぐらいしか出来なかったけれど、今思えば勇気を出して触ったらよかったのかな?
ある人間は、いつか時が解決してくれると言っていた。
私にはあんまり時の概念が無いせいか、10年経っても50年経っても100年経っても忘れる事が出来なくて、忘れてしまったらもう動けなくなるんじゃないかとおびえている自分がいる。
そして、思い出というものは人間や鬼と関係なく思い出は美化されてしまうようで、いつも思い出せば幸せな気持ちにしてくれる。
もう過ぎた話なのだから、忘れてしまって楽になればいいのに、楽になりたくない。
その人が存在した証や記憶は自分だけでも残しておきたい。
ああ、君に会いたいな・・・
魔法さえ使えれば復活できるけれど、魔法で復活させた君は本当に___
____本当にあの時の君なんだろうか・・・。
漂ってくる潮の匂いが夏はそろそろ終わると告げている。
_____________「・・・バス、セバスさ・・セバス様?」
ふと聞こえる声で目を覚ますと、周りには砂浜が広がっていて、キラキラ光るきれいな海で泳いでいる者達ががいた。
この日はアインズ様が慰労会と称して、夏に出来るイベントがないか?とデミウルゴスに尋ねたら、「人間の夏は海で泳いで遊ぶようです」とのこと。
それを聞いた女性陣は「ぐへへ、海ならアインズ様の水着姿が見られる絶好のチャンス・・くふふふふ♪」
アルベドとシャルティアの強い要望で開催が決まったのだった。
セバスは周りに誘われたが、泳ぐことに対して気が進まず木陰で読書をしていたのだった(セバスもしっかり水着姿である)
「セバス様、お休みのところすみません」
いつもの仮メイドの声が聞こえた。
「いや、大丈夫ですよ、ツアレ。人間が書いた小説をを久しぶりに読んでいたら、いつの間にか眠ってしまったようです。」
素敵な筋肉をお持ちのセバスが微笑んだのを見て、ツアレは恥ずかしそうに続きを話し始める。
「セバス様、今ちょうどナザリックの皆様でバーベキューを始めるところなのですが、もしよろしければセバス様もいかがでしょうか?」
ひらひらとしたフリルのついたピンク色の水着を着用したツアレが申し訳なさそうに尋ねた。
「そうですね、バーベキューとやらは食べたことが無いので、参加させてもらいましょうか」
セバスは椅子から立ち上がり、ツアレの右手を握りしめて皆の元へ向かった。
「え、ちょっと!セバス様!手が・・手をつないで皆様の元へ向かうなんて恥ずかし過ぎますっっ!あの離してくださいっっ!」
ゆでダコのように恥ずかしくて顔を真っ赤にしたツアレは、左手で顔を隠すことで精いっぱいの様子だった。
「まあまあツアレ、たまには良いのではないでしょうか?今日は慰労会ですし、ツアレへのご褒美ですよ、さあ行きますよ~」
とてもかっこいい笑顔でツアレの手を引いていくセバス。
(あんな夢見た後ですからね・・・触れて生きている事を確認したかったなんて内緒ですが・・・)
「セバス様、嬉しいですけど、明日が怖いです~!ペストーニャさんに何を言われるかあああ・・・」
嬉しさのあまりもう対応が訳分からなくなっているツアレなのだった。
そんな二人の様子を、遠くからこっそり眺めているアインズは・・・
(うわあ~自分が昔、人間だった頃に苦手だったカップルのやつだ~。羨ましくて見てられなかったんだよなあ~今なら微笑ましく見られるな~うんうん)
と、親の気持ちで二人を優しい目で眺めていた。
え!アインズ様はああいう雰囲気が好きなのかしら!とアルベドとシャルティアは、次回また海に来た時の参考にとこっそりメモをしたのだった。
「さて、バーベキューパーティーを開催するぞーー!」
アインズの一声で楽しいバーベキューが始まったのだった。
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