第5話

武がトイレについたところで、彩子はこぶしを握りしめて、武に見せた。それでも不安な面持ちで、トイレへ入って行った。便器の前で用を足した。小便の温度がいつもより高く感じられ、湯気が顔にかかった。

「大丈夫。おれはちゃんとやれてるさ。いいぞ武、いいぞ武」

手を洗う洗面台の自分のうつった鏡の前で、励ますように言って、ほっぺたを両手でたたき、ひとり言を言った。トイレを出て三人のいる場所へ戻っていくと、そこには、おすしがずらりと並んでいた。どうやら武がトイレへ行っている間、届いたようだ。

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