第69話「12.7mmフルメタルジャケット」
───12.7mmが防げるかぁぁぁあ!
ズドォォォォォオオ!!
ロケット推進で突っ込んだクラムは、急制動を掛けつつ───『おらぁぁぁぁ!』と、先頭にいたゴーレムにドロップキックを極める。
『ぶっ飛べッッ!!』
ドッカァァァァン!
ブレーキを兼ねたドロップキックにゴーレムが爆散する。
そのあとに、盛大な爆発とも破裂とも付かない破壊の嵐が起こり、背後に隠れていた魔導士ともども二体、三体を吹っ飛ばして
そして、
ゴファァァァァ……!!
と、激しく放熱するエプソMK-2。
強制排熱により、白い陽炎に包まれる機体。
その姿は近衛兵団にどう映ったのか──。
突如、目の前に現れたクラムに近衛兵団は対応できない。
馬型ゴーレムに乗った
一方のゴーレムは何も言わず黙々と進むのみで無反応。
今は、近衛兵団の発する、ザワザワとした
ろくな反応もできんとは……。
はっはっは! カモだな───!
すぅぅぅぅぅ……、
『レッツ、パーティィィィ!!』
ジャキン!
両の手に持つ重機関銃とレーザーライフルと様々な固定武装が───、
「なんだ!?」
「敵か?」
「官姓名を名乗れ!」
『こいつに聞きなッッ!』
───火を噴く!!!
ガガガッガガガガッガガガガガッガガガ!
ビュィイイィィィィィィィィィ───!!
ヴァアアアアアアアアアアアアアアアン!
もの凄い轟音とともに、赤い光の奔流が迸る!!
そして、ドサリ……!
ドサリ、ドザリと、先頭のゴーレムと背後の魔導士が声もなく倒れていく…………?
あ、
ああああああ!?
ブシュウ! と焼ける肉の臭い。
弾けとんだ人体と、
間抜けにも、今更ながら悲鳴があがる。
「ぎゃあああああ」
「腕が腕がぁぁ!!」
「あつ──」
「敵しゅ─ブ?!」
「ゴーレ?」
に、
「「「───逃げろぉぉぉぉぉぉ!!」」」
───まるで、死のオーケストラだ。
銃声と悲鳴と断末魔の阿鼻叫喚。
この場は、一瞬にして悲鳴の渦に飲み込まれた。
そう、そこは、もはや魔女の釜───地獄の一丁目だ。
幸いにも魔導士の数は相当に少ないからいいようなものの、数の大半を占めるゴーレムは紙屑同然。
直撃を受けたゴーレムはといえば、もう、ボッロボロ!
12.7mmの大口径弾は貫通し、砕け散ってもまだ凶悪な破片となって周囲を襲う。
レーザーは凶悪の一言で、あらゆるものを両断し、後方にいた移動式バリスタさえバターのように切り裂いていく。
さらには、地面に着弾してもドロドロに溶けて溶岩の如き様相を生み出している。
『はっはっは! 来いよ
スピーカーを最大にして盛大に挑発する。
しかし、敵も大混乱に陥っているのかイマイチ反応に乏しい。
が───……!
「うろたえるな! 敵は一人! 包囲して撃破しろ───」
ほぅ? この声は……。
『───見つけたぞイッパぁぁぁぁああ!』
もう逃がさん! ここで仕留めてやるぜ。
「囚人風情が!!───
かかれぇぇぇ! とイッパの号令が響くと、ゴーレムに移動バリスタ、籠に乗った魔導士が動き始める。
なるほど……、指揮能力は大したものだ。
これほどの集団になれば、細かい指示は必要ない。
長となるものは方針を示し、指示するだけでよい。
それで集団は動くかどうかは別だが……。
しかし、イッパは見事にやって見せた。
一気に擾乱させられるかと思ったが、すぐに組織的行動を始める特殊部隊。
クラムが勢い込んで敵の集団に突っ込んだだけあって、ゴーレムが全方位から襲い来る。
『おーおーおー……無茶しとるのぉ、支援は──』
『いらん!』
相も変わらず
どうしても撃ちたいらしいが───。
コイツらは───。
コイツは俺の獲物だ!!
見てろよ、魔王!
『───火力が全てだ!!!』
おらぁぁぁぁぁあああ!!
レーザーライフルを撃ちっぱなしにして、その場で一回転。
ビュワン! と赤い光線が戦場を舐めると、ズズズズズ……ドスン! と周囲のゴーレムの上半身が下半身と別れて───落ちる。
その範囲が───実に広大! まるで大鎌で麦を収穫するかのように、一気にズドドドドドドドドとゴーレムが倒れ落ち半壊した。
「な、なんだあれは!」
馬に乗ったイッパが
奴の声だけは、特に聞き取れる様に機械処理により固定。
狙って集音してくれる外部センサーがよく拾ってくれた。
『「なんだ?」だぁ?!───くはは、これはお前にとっての悪夢だッッ!』
イッパによく聞こえるように最大音量でいえば、イッパをしてようやく自分の声がクラムに届いていることを知ったようだ。
「生意気な! 木偶人形は攻撃続行! 次ぃ、奴を休ませるな───バリスタぁぁ!」
イッパの指示のもと、ゴトゴトゴトと押し出されてきた移動式のバリスタ。
車輪付き故、照準は少々甘いところがありそうだが、───数が多い!!
ズンズンと生き残りのゴーレムが死を恐れずに突進してくる。
その隙にバリスタが発射準備を整えるのだろう。
『しゃらくせぇ!』
バイザー内の武器選択項目から対人ミサイルを選ぶと、画面上に浮かび上がったターゲットポイントに敵のバリスタ集団を攻撃半径に収める。
『ぶっとべや!』
バシュシュシュン!!
と、連射したミサイルが飛翔して行きぃぃぃぃぃ───ッ……炸裂したッッ!
ボォォォォン!
バリスタの集団の頭上で爆発したミサイルは内部の散弾を雨のごとく降らせる!
ズシャァァァアアアン!!
と、散弾が落着し激しい土埃のあとには、グチャグチャに潰れた敵の姿があるのみ。
近くにいた魔導士連中も、巻き添えを食らって吹っ飛んでいる。
この攻撃だけで、既にレーダーの中で主張していた敵の光点が相当数減っていた。
そりゃあ。そうだ。
爆撃やら砲撃やらを防ぐには、本来なら地に伏せるか地面に潜らねばならない。
それもできずに、ただ突っ立っていたのでは
ちょっとした破片でさえ、生身の人間には脅威となるというのにッ!
「ば、バケモノめぇぇえ!」
イッパ自身は無傷で、未だ馬に
しかしこれは運でも、イッパ自身の腕のお陰でもない───。
クラムが
ただそれだけだ。
まとめて、グシャ! と潰すのでは味気ないと───そう言っているのだ。
けれども、もう仕舞だよ……。
クラムといえば、まだまだ武器弾薬はたっぷり……!
何回でも。
そう、何回ででも殲滅できるほどの量がある。
「怯むな! 奴も消耗している、撃て、放て、潰せぇぇぇ!!!」
生き残ったゴーレムが近づいてくるが、その数は少ない。
見れば、いくつかのゴーレムは無傷にも拘らず行動停止……術者である魔術師が逃亡しているのだ。
『それで特殊部隊だぁ? テメェらの玩具と、こっちとではぁぁっぁぁぁああ───』
クゥィィィン……!!
滑らかに駆動するのは、右肩部に据えられた20mm短銃身対空機関砲。
その銃身がギラリと光る。
まるで昆虫が捕食するかのように、ヌラァァーっと……居残るゴーレムに狙いを付けると───。
ピピピピピ、ピ──────!!
対空射撃もできるこの機関砲は、バイザー内のセンサーを通じて同時リンクしたターゲットを複数捉えることができるのだ。
脳内処理速度を活用してクラムは、残る30のゴーレム全てをロックオンした。
『───性能が段違いなんだよ!!』
ファイア!!!
気合一閃───……!
対空機関砲が火を吹いた!!!
ッ
───ッッ!
──────ボンボンボンボンボンボボボボボボボボボボボボボボッッッ!!!
腹に響く重々しい射撃音が轟き、箱型弾倉に収まっていた30発の20mm機関砲弾を惜しげもなく全弾発射。
空を飛ぶ航空機さえ射止めるその射撃は、地上をノロノロと動くゴーレムなど物の数ではない!
有り余る威力は、腹に大穴を開けつつもなお直進。背後に隠れていた魔術師たちを掠っただけで
クィクィクィィィィンと、軽快な駆動音を立ててロックオン順に従い──ターゲットを順繰りに撃ち抜いていく。
そして、僅か数秒の間に動くゴーレムは……全て塵と化した。
が……!!
「今だ! 打てェェ!!」
クラムの攻撃が止む、一瞬の隙をついた指揮の冴え!!!
バッと腕を振り下ろし、バリスタの一斉射を指示するイッパ。
「発射ッ」
「発射!!」
「「「発射ぁぁあッ!!!」」」
──ガキュン、ガキュン、ガキュ、キュ、キュキュキュン!!
と、ばかりに、ブッとい
それらは、全てクラムに指向しぃぃい!!
命ちゅ──────!
『───それが、ど・う・し・たぁぁぁ!』
直撃軌道は3本!
エプソの演算機能が正確に命中軌道を読み、そのOSが敵弾の接近警報を告げる。
と、同時に───自動迎撃装置を作動させる。
搭載兵器が
クラムの指示を待たずに、頭部9mmバルカン砲を立て続けに撃ちまくる。
タラララララララッラララッラッ!!
タラララララララララララララッ!!
弾丸に比べればはるかに遅いボルト弾は、あっという間に捕捉され───パァン! と破裂音を残して9mmパラベラム弾と空中衝突し、対消滅。
細かな木くずと、鉛と、鉄粉とを撒き散らして霧散消滅してしまった。
「な、なにぃ!?」
驚愕するイッパを尻目に、バリスタごときを、みすみす射撃させたことに苛立ったクラムが弾種変更を指示する。
『ざっけんなよ! 纏めて吹っ飛ばしてやらぁ!!』
バイザー内には、弓なり弾道が電子的に表示される。
この弾道はいったい…………?
それは、弾着先の危害半径を表示。
そこにバリスタ部隊をすっぽりと取り込むと───……。
装填!
ガシャキ!!!
コンテナ下部から取り出された60mm迫撃砲弾を手に取り、まるでお手玉でも扱うかの様な気軽さで、背部コンテナ外装に固定された迫撃砲に落とし込んだ。
『くたばれッ!』
コトン、スーーー……と筒内に落ちた迫撃砲弾。
それは、すべらかに砲身を降っていくと、筒内下部の撃針によって、雷管を叩かれる。
───発射ぁぁあ!!
ゴッキィィィィン!
展張された支持脚を震わせながら背負い式の迫撃砲を発射!
それは、それは、綺麗な弾道を描くと……
ヒィィィィン!───…………ボォン!!
「「「───ぎゃぁぁああああ!!!」」」
大量の土塊と爆炎と……肉片が飛び散る。
炸薬だけでなく、その破片すら人体には危険に過ぎる迫撃砲弾。
まさに歩兵の天敵と言えるそれは、無防備なバリスタ操作員など、ハムでも切り裂くが如し勢いでズッタズタにしてしまう。
しかし、クラムはそれで満足することなく、バイザー内に表示される弾道を確認し、次の危害半径にバリスタ集団を照準し立て続けに装填発射、装填発射!!
装填発射装填発射装填発射装填発射!
発射、発射、発射発射発射発射ぁぁぁ!!
ゴキィィィン!
ゴキィィィン!
ゴキィィィン!
と、つるべ撃ちされた60mm迫撃砲弾は余すところなく、正確にバリスタ毎、部隊をグッチャグチャにしていく。
そう、グッチャグチャ。
何台かのバリスタは勇敢に反撃に転じようとするが、連続する爆炎に覆われて──狙いどころか再装填すらおぼつかず、ただ、ただ、無為に破壊されるのみ。
こうなればもう士気の維持など出来ようはずもない。
最後のバリスタ操作員は我先にと逃げ出すが───、
『逃がすか!』
トドメぇ! とばかりに、撃ち込まれた迫撃砲弾は一塊になって逃げる操作員たちを危害半径にすっぽりと捉えて───直撃ッ!!
まともに食らった連中は、手肢を四散させて息絶える。
そして、至近弾を喰らった者は絶叫の声もそよ風に聞こえるほどの断末魔を上げて転がり回っていた。
軽くて重傷。
悪くて死亡の───迫撃砲が生み出した地獄だ。
チン……キィン、と──迫撃砲の筒が熱されて空冷する独特の音を立てるのを聞きながらクラムは悠々と歩く。
もはや、敵の残存兵力は幾ばくか?
「や、奴の攻撃が止んだぞ! ち、ちち、チャンスだ、畳みかけろぉぉお!」
まったく事態を理解していないのか、イッパは部下を
ゴーレム部隊も、バリスタ隊も壊滅し、
残ったのは及び腰の魔法兵隊のみ───
彼らとて特殊部隊に名を連ねる要員だが、先頭を守るべきゴーレムと、遠距離射撃戦の主役を務めるバリスタがいて初めて機能するのだ。
機動性に乏しく、継戦能力に乏しい魔法兵は前衛と遠距離という補完戦力がいて初めて威力を発揮しうる。
しかし、そのどちらも欠いた今、彼らに
「ひ、怯むな! 逃げる奴は私が斬る!」
大剣を振りかざし、魔法兵を威圧するイッパ。
その圧力に気圧されて魔法兵がオズオズと前に出るが───。
はっはー………!!
すぅぅぅ…………──。
『───やんのがゴラァァァッァァ!!』
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