第2話 エチュード


「世界に存在するのが私とあなただけになったら、もう少し私に興味を持ってくれる?」と彼女は言った。


 俺たちはセミダブルのベッドの上の柔らかなタオルケットの中でうとうとしていた。心地良い世界の終わりのようだった。



 数年後に久しぶりに会った彼女は、事実世界を滅ぼしていた。


「あなたがいない世界は私にとって意味がなかったから。」と、とんでもなく自己中心的な理屈を語る。


「あなたは誰にも関心がなかった。みんなに、すべてのことに少しずつ興味があるふりをしながら、何にも関心がなかった。あなたが何かに執着する様が見たかった。」と彼女は語った。



 しばらくの間、俺たちはふたりで会話した。セックスもした。ふたりぽっちで、それまでしたことのなかった色々なことを試した。


 そのうち彼女もいなくなり、そうして俺は、世界にひとりぽっち、最後の人類になった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る