三話 「邂逅」



「では早速、今日の活動内容を話そう」





空木未麗は、机と椅子をこちらに運び俺と葵の目の前に座った。





「その前に、君たちは怪異という存在を知っているか?」





「幽霊とか、そんな感じですか?」





俺はその問いに答える。





「その通りだ、幽霊を含む限定された人間にしか存在を認知することができない存在や現象全般を指す


例えば、そこにいる葵ちゃんとかな」





葵が赤面する。





「ちゃんって......」





「あぁすまない、この呼び方はやめた方がいいか」





葵は首を横に振り否定する。





「いや全然、寧ろ嬉しい!」





ふと思ったが、葵は空木未麗よりも先輩という立場になるのだろうか。





「私も未麗ちゃんって呼んでいい?」





「あぁ、構わない」





二人は顔を合わせ笑みを浮かべる。





「一徹、お前もそう呼んでいいか?」





空木未麗は俺に視線を送る。





「別に構わないですけど、俺は何と呼べばいいですか?」





「未麗ちゃん」





「却下」





「えーなんでー」





俺と葵の一連ののやり取りを見守った後、空木未麗は本題に戻る。





「それで、その怪異達は時に人を襲う


その怪異を我々が独断と偏見で見定め、解消するというわけだ」





「なんか胡散臭いし、本当に困っている人がいるならともかく、何より無暗にかかわらない方が良いんじゃ......


というか、そもそもどうやって解決するんですか?」





それを聞いた彼女は立ち上がり、左手の人差し指で眼鏡を押し上げる。





「細かいことは気にするな!


立ちはだかる怪異達に立ち向かう!それが我々オカルト研究会の神髄だ!!」





「わーすごーい!!」





入会の後悔を噛みしめている横で、葵は無邪気に手を叩く。


俺は確信した。


空木未麗、彼女は、幽霊のように見えた白い布や、暗闇から蝙蝠が湧き出て飛び去って行く様。


そんな、ちょっぴり不安になった思い出を怪異と呼んだ、ただのオカルトマニアであることを。





「俺、もう帰りますね......」





盛り上がっている二人を横目に、帰宅の準備を始める。


俺の呆れに気付いたのか、二人は俺を呼び止めた。





「あーちょっとまってよー


あともう少しだけー」





「悪かった悪かった、冗談はここまでだ


あとすまないがお菓子を買ってきてくれないか」





俺は貴女達の召使ではない、と告げ教室を出る。





 廊下が暗い。


日はまだ落ちていない。


なのに、なぜ暗くなるのか。


直ぐに考えられる理由としては、何かが学校の上に覆いかぶさるか、気象が狂うかのどちらかだ。


しかし、そんなのは神でなければ不可能だろう。


空木未麗の言葉を借りるなら、それこそ怪異だ。





慌てて二人はついてきた。


無論、本当に怒っているわけではない。


ただの冗談だ。


教室に戻ろうと振り返ろうとしたその時、廊下の窓の外のそれは、俺の目に映る。





俺は確信した。


空木未麗、彼女の戯言が本物であったことを。





俺は確信した。


その目に映るものが現実であることを。





それは神か、怪異か、それとも別の何かか。


その体から、鋭利な骨が幾つか突き出ている魚、のような何かが

























――それが、空を泳いでいた

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