一話 「幽霊」

放課後、今日も学校で何気なく過ごす。


隣に居座る「片霧 葵」は、周りからは見えない存在。


つまるところ、幽霊である。


ちょっとしたことがあって、彼女と知り合ってしまった。





 「一徹君、どうしたの? そんな難しい顔して」





微動だにせず考えこむ「大石 一徹」、つまり俺は葛藤する。


幽霊といえば、悪霊のような人に危害を加える存在を想像するが意外にも葵は人畜無害、唯の喋り相手と化している。


そんな葵が、自身が幽霊であることについてどう思っているか聞いてみようかと迷いを起こす。





「ちょっと、きいてる?」





少しムッとした表情でこちらを覗く。





「ああ、ごめん、ちょっと考え事してた」





コミュ障で陰キャだった俺も葵と接している内に少しずつ慣れ、人と接することがそれほど苦にならなくなっていた。


正確には、葵とのコミュニケーションのみであるが。


初めは葵に敬語で喋っていたが、いつのまにかそれを辞めていた。


それを双方が気にすることなく、円滑にコミュニケーションを行う。


それは、今日も例外ではない。





迷いの答を導き、それを実行する。





「葵、幽霊についてどう思う?」





皮肉交じりに聞いてみた。





「ちょっと、もしかして馬鹿にしてる?」





少し不機嫌な表情が、更に斜めになる。





「葵みたいな幽霊がいるなら、悪い事する幽霊もいるんじゃないかと思って」





葵が良い幽霊と、もしくは悪い幽霊とも取れるニュアンスで葵をからかってみた。


しかし恐らく、葵のポジティブ思考のせいで前者の意味合いであると理解するだろう。





「うーん、どうなんだろう


私も他の子を見たことないから、わかんないかな」





かくいう俺も、葵以外の幽霊は見たことがない。





「俺もわからん」





互いに笑いながら、そんくだらないやり取りを交わしながら、やがて日は沈む。





 ちょうど夕日が見えなくなる頃、支度を始め葵と途中まで一緒に帰る。


それが俺の日課になっているわけだが、今日は違った。





教室の戸を開き、階段へ向かおうとする。


一度、階段へ続く廊下を見渡した。


無論、誰一人いないはずだ、俺と葵以外は。





――刹那、寒気が顔を出した。





背中に届くほどの長さの髪。


切りそろえられた前髪。


それが、一歩ずつこちらに向かってくる。


距離はそう遠くない。


俺は、葵が俺の後ろにいるのを確認した。


距離が縮まる。


それの顔は、暗くてよく見えない。





「君、見えるね?」





それは確かに人間であったが、暗がりから湧いた彼女はまるで




























――まるで幽霊のようであった

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