トリッキーハロウィン・前編
「ハッピーハロウィーン!」
「は、ハッピーハロウィンです」
ここは、ハロウィンの日の
きょうは店を早じまいしたので、俺たちがパーティーのために使ってる。
ちなみに店を早じまいした理由は、去年のハロウィンでコスプレパリピどもが店に来襲し、散々暴れていったかららしい。外の公園にもパトカーが停まってたし、いろいろ大変そうだとは思う。
パーティーメンバーは、俺と琴音ちゃん、そしてナポリたんとおまけの佑美だ。
まあ、ハロウィンらしく、ノリよく始めよう。
俺は琴音ちゃんに悪戯っぽく微笑み、合い言葉を口にする。
「トリックオアトリート?」
「あ、じゃあトリックで」
「……お菓子もってないの?」
「いえ、祐介くんならトリックが、できれば恋人同士がするようなイタズラでお願いします」
琴音ちゃんが冷静だった。つまらん。
「じゃあさ、おっぱい揉むとかくらい許される?」
「その程度で済まされたら、祐介くんもわたしも寸止めで消化不良だと思うのですが」
冷静すぎんだろ琴音ちゃん。ネタにマジレスカコワルイと習わなかったのか。
「おいおいおまえら、そういうのは二人だけの時にやれ」
聞いちゃいられないとばかりに、ナポリたんが割り込んできたが。
「そうですね。どうせなら二人きりのハロウィンで、仮装しながら」
「祐介は
「黙れ、永遠の清純派が聞いてあきれるわ」
火に油というか、さらなる燃料投下というか。なんか最近こういう下ネタが多くなってきてないか? 作者がな。
「火星……? クレーターみたいに陥没しているんですか?」
「なに!? 白木は陥没しているのか!? まあ、これだけならば致し方ないよな……」
「???」
おいナポリたん。さらに下品な上書きすんな。
とは思ったけど、気になるので聞いてみる。
「琴音ちゃん、陥没してるの?」
「……なにがですか?」
「いや、それだけ胸が大きいとよくあることらし……」
ばこん。
なんの陥没かそこで察した琴音ちゃんに、ゴールデンハンマーで額を叩かれた。
「いてっ!」
「祐介くん、あなたは自分のコイビトを何だと思っているんですか。陥没もしてませんし、色はきれいなピンク色ですし、乳輪も大きくありません。確認してもいいですよ? 何なら今すぐ確認しますか? その節穴のような目にしっかり焼き付けて」
「ちょ、ストップストップ! ここで脱ぐな!」
琴音ちゃんが突然錯乱して服を脱ごうとしたので全力で止めた。しかもめっちゃ早口でまくしたててたけど、そんなムキにならんでも。
それにこんなところで脱いだら、外から丸見えじゃんか。見物料として金・銀・パールどころか一億ユーロくらいもらわんとあかんよ。
「……ところで、まだゴールデンハンマー持ってるの? びっくりだわ」
「あ、はい。便利ですよこれ。この前『べに花二番』も奪い取れましたし」
「……」
どこから『べに花二番』を奪ったのかは聞かないでおこう。まあ、窃盗とかの意味でないとは思いたい。会話の燃料が植物油だったのかもしれないし。
「じゃあ、わたしもナポちゃんにイタズラするー!」
「ティーカウコーン!」
ドムッ!
「グフッ!」
一方、佑美は佑美で平常運転だった。ナポリたんのあしらい方もこなれてきた感がある。
「ここからナイフで刺してとどめを……」
「待て待て待てナポリたん、これ以上ジオン軍モビルスーツの重ね掛けはイクナイ」
ここに『ザクッ!』まで重ねたら佑美が絶命してしまうからな。
―・―・―・―・―・―・―
「……と、言うわけで。わたしを陥没女子扱いした祐介くんには、罰ゲームをしてもらいます」
琴音ちゃんが大層ご機嫌斜めだ。逆らわないでおこう。
「……罰ゲームって何を?」
「よくぞ聞いてくれました! じゃじゃーん!」
俺がおそるおそる罰ゲームの内容を尋ねると、琴音ちゃんは満面の笑みで皿に盛られたシベリアを出してきた。
ああ、シベリアとはもちろん例のお菓子だ。
「これは?」
「アサカヤの磐梯そば……ではなくて、わたしが今日のために作ってきた、自家製シベリアです!」
「へ?」
なるほど、琴音ちゃんがここに持参してきたのはこれだったのか。
シベリアというと羊羹をカステラで挟んだお菓子だけど、どうやら羊羹の代わりにあんこを使って作ったらしい。
「はい、どれか選んで食べてください」
ニコニコしながら俺の前に皿を出して、食べるようすすめてくる琴音ちゃんの様子を疑問に思いながらも。
「これ、罰ゲームじゃなくて俺の業界ではご褒美じゃ……まあいいや、じゃ遠慮なくいただきまーす。おいしいんだよね?」
そこで俺は適当に一切れをつまみ、一気に口の中へ。
…………
「ぐへっっっっ!!! かっら! このシベリアかっら! 水! 水くれ!」
カステラにあんこという組み合わせから。
激アマな味だろう、と安易に想像し油断していた俺の舌は、不意打ちに完敗した。
「あ、大当たりおめでとうございます! 一発であたりを引くなんて、祐介くんはさすがに幸運の持ち主ですね!」
「げほっ、げほっ、い、いったい何したの琴音ちゃん!」
「実はですね、このシベリアの中に、『ロシ
「……ドヤって言うほどのこと……?」
水を飲みながらため息。
ハロウィンらしいイタズラではあるが、なんだよロシ餡って。どっから見つけてきたんだそんなもん。
「ん、なんだ。白木もそんなイタズラかましていたのか。同じようなこと考えるやつがボク以外にもいたとはな」
そこでナポリたんが、便乗してニヤッと笑う。
あ、この笑いをするナポリたんに近づくと、むかしからロクなことが起きなかった。
──嫌な予感がする。
「ボクのいたずらは、これだ! じゃじゃーん!」
てってれてってっ、てーん、てーん、てーん!
いつものド○えもんの効果音とともに、ナポリたんが一枚のピザを奥から出してきた。
…………
くっさ! めっちゃくっさ! 一週間くらい発酵させたウ○コみたいなにおいがする!
「なんだこの悪臭を振りまくピザはぁ!?」
思わずツッコミ入れちまったわい。ナポリたんの思惑通りだとはわかっちゃいるけど。
「よくぞ聞いてくれた祐介よ! これは一見アンチョビのピザだが、八枚のうち二か所にシュールストレミングが入っている、ハロウィン専用特製ロシアンルーレットピザだ!」
「そんな無駄に高価で誰も喜ばない食いもん使ってまでいたずらしようとすんじゃねえ!」
自分の叔母ながら、本気で殴りたくなったわ。
ちなみにシュールストレミングというのは、北欧で作られた、世界一臭いニシン缶詰である。殺菌してないので正確には缶詰ではないのだが、そのせいで缶の中で発酵が進み、すごく臭い。航空ルートだと缶が爆発する恐れがあるので空輸できず、ものすごく高価な食品だ。
「だいいちどこで缶詰開けたんだよ! あの缶詰を室内で開けたら、当分の間ニオイがとれねえぞ!? Cozza-Ganeの営業に支障出んだろうが!」
「た、確かにすごいニオイですね……」
「うん、わたしの足裏くらい臭いよ」
「ああ、安心しろ。さすがにシュールストレミングを室内で開けるような愚かなことはしない。ちょっと外の公園で開封してきた」
「……ひょっとして、あの公園にパトカーが数台停まってたのって……」
ハロウィンの監視じゃなくて、悪臭騒ぎのせいじゃなかろうか。
いくらハロウィンだからって、警察にまでトリック仕掛けてどうすんだナポリたんは。
シュールなほどの魂を込めたイタズラのせいで、すでに頭が生理痛起こしそうなくらい痛い。
あと佑美、おまえの靴は今後、シューズストレミングとして扱うことに決めた。ばっちすぎるので俺は二度と触れない。隔離。
──もう、帰っていいですか?
絶対ろくなことにならないよ今日のハロウィンパーティー。
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