若者はみな哀しい

ふうこ

1 紅い空

兄が暴れだすとき、グミ子は家族のものが誰も引き留めないのを好機に、靴を突っ掛けて夕暮れの住宅街を歩き出した。公民館、小学校、運動公園、市営住宅前の小さなドブ川まで行き着くと、すっかり自宅のある町内を抜けた心地がした。町は紅く、紅く燃えていた。高い建物が全然ない田舎だから、夕陽も月も星も雲も、大きくて手を伸ばせば掴めるほど近かった。夕飯時で、町は人気がなかった。クルマも走っていなかった。グミ子には自分の心しか聞こえない。それは手近な雲をむしりとって足蹴にし、空高く高く昇っていく。

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