若者はみな哀しい
ふうこ
1 紅い空
兄が暴れだすとき、グミ子は家族のものが誰も引き留めないのを好機に、靴を突っ掛けて夕暮れの住宅街を歩き出した。公民館、小学校、運動公園、市営住宅前の小さなドブ川まで行き着くと、すっかり自宅のある町内を抜けた心地がした。町は紅く、紅く燃えていた。高い建物が全然ない田舎だから、夕陽も月も星も雲も、大きくて手を伸ばせば掴めるほど近かった。夕飯時で、町は人気がなかった。クルマも走っていなかった。グミ子には自分の心しか聞こえない。それは手近な雲をむしりとって足蹴にし、空高く高く昇っていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます